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忍法─それは少年の憧れ。

正直影分身くらいならできるんじゃないかって今でも思ってます。(´・ω・`)

こう…ホログラフィとかで。

場所はメディオール、宮殿内の植え込みからニュッと金、白、赤銅、茶の頭が宮殿内を窺う。


「まぁ予想はしてたけどね。やっぱりここなのね。」


「ご主人のセンサーが反応したところですね。」


「今度からユウが言ったところはなるべく無視していくか。」


「それでもきっとかわせないと思いますよ?」


一旦藪の中に頭を引っ込めて作戦を練り直す。


「ヘンリが知ってる隠し通路を使ってユウがいる牢屋…でいいのかしら。そこで奪還したあとそのままここの女王を締め上げる。この作戦で問題ないわね?」


「着てるせいかも知れないけど言ってることがほぼユウの思考回路そのままだぞ。」


「ノッチ煩い。」


勢いでここに来る前にユウのコートを取り返したのは良いけれど、改造してあるコートは思いの外重く小脇に抱えて持っていく訳にも行かず、仕方なく私が羽織っている状態。コートに比べて重いだけなので羽織っている分には問題ないし、黒いのが幸いして保護色になっているからプラマイゼロだろう。


…どことなく袖口から腕までが鉄臭いのを除けば。特に右。


きっと素材の蜘蛛の糸の臭いだと自分に言い聞かせて気にしないことにした。


…だから腕の部分だけ妙に黒ずんでるのもきっと気のせい。


「アニエスちゃんがいう作戦であってるんだけどねぇ。問題がいくつかあるんだ。」


今回の元凶は真剣な顔になって小声でも全員に聞こえるように身を前に乗り出して切り出してきた。私達女性勢がスッと後ろに身を引いたのは仕方ない。


「先ずそこにはあまり大人数で行けないんだ。それにコート。それを僕が持っていったら怪しいだろう?」


「ご主人のものですしね…」


「─ダサいし。」


「はいティリアストップ。」


咄嗟に抜刀して立ち上がろうとしたティリアを伸ばした腕で遮る。


「ゴメンゴメン冗談だから。」


ヘラヘラ笑うヘンリを睨んでからいつの間にか抜刀していた刀を鞘に収めて元の位置に戻るティリア。


…もう一瞬伸ばすのが早かったら私の腕はどうなっていたのか。


「じゃあ気を取り直して。最大の難関がね、そこは僕じゃないと通れないんだ。」


「「「は?」」」


ヘンリはそういうと右手を藪から出して宮殿内の庭園の警護中だろう、長警棒を持っている軽装の兵士に向けた。その指の形は─人差し指だけを伸ばしたまるで何かを押すような形。


「えい。」


気の抜けた声と共にヘンリの伸ばした指先が震えたかと思うと兵士がうっ。と呻き倒れこんだ。


何事だ!と兵士達がバタバタとあつまってきた。藪からの距離はあるとはいえその人数は10人ほど。囲まれて取り押さえられるのは…ヤバイ。特に私の正体が向こうにバレればなおヤバイ。


「それで、ここから」


どうするのよ。と後ろにいるヘンリに向きかえったがそこにヘンリの姿はなく、変わりに置いてあったのは一個の小さな筒状の物体。地面にポツンと置かれたその頂点には火のついた導火線がもうすぐ本体に到達するところだった。どこかで見たことがあったからよく思い出してみるとそういえば王国軍が今度から採用する武器によく似ていた。名前は炸裂玉。たしか破壊力はないけど大きな音で…



パパパパパパパン!!


「いたぞ!賊はあそこだ!」






「全く…賊なんて何で来るんだよ……」


メディオールの1兵士である男は牢屋兼被験者収容所の長い廊下を歩きながら一人ごちていた。


「大体被験者なんて狙いに来ないだろ…適当に見て戻るか。」


最近、というか今回捕まえた一番の目玉を確認しようとドアの覗き窓から内部を軽く覗くとそこに件の被験者はいなかった。


「嘘だろ!」


慌ててドアの鍵を開けて内部に入ると縛っていたロープがなんのつもりかキチンと束ねて置かれていた。


「どうやって…いやその前にどこいった?」


「意外と後ろにいたりするぜ?」


「そうだな。先ず報告し─うごっ!」


何者かに後頭部を殴られ倒れこみ意識を失う寸前、元々ここに一人で乗り込んでいたことをどこか遠くで思い出していた。



「よし。」


兵士がしっかり気絶したことを確認して思わず関心してしまった。


「しかし…本当に抜けれるとはな。」


兵士を俺が縛られていた縄で縛り、呪縛から解き放ったアイテムを腰のバックから取り出す。これを縄に塗りたくってもぞもぞしたら抜けることが出来た。白い瓶詰めのクリーム状の外用薬。気づけば最初の頃から持っているアニエスから貰ってそのままの軟膏(打ち身用)。


「これ自体が伏線になったりしないよな…?」


実はこれがアキュリス王国秘伝の何かの手がかりでこれをある場所で決められた物に使用すると古に封印された何かが目覚め…


「いや、無いな。」


そういえば無くなりかけていたから補充してくれ。と言ったら平然と足されて翌日返された。


「流石ユウ君。もう抜けてたんだねいやぁ関心関心。」


「お前よくここに来れたな。」


「うん?少し苦労はしたけどね。簡単だったよ?」


「そういう意味じゃねぇよ。」


人がまだ見ぬ伏線について考えているとヘンリが牢屋の入り口に凭れるようにして立っていた。どこから来たのか知らないがよくもヘラヘラ笑いながら自分の策で縛られた者の前に出てこれたものだ。


「まあまあ。そんなユウ君にプレゼントがあるんだよね。」


そう言ってヘンリが取り出したのは俺の装備品一式。折り畳まれたコートの上に手甲、投げナイフと水晶まで取り返したらしい。


「…どうやって取り返したんだよ。」


ジトッと睨みながら急いで身に着けていく。


「ホラ。兵士って女の娘もいるじゃない?」


俺の質問にまたしても笑いながら返すヘンリ。


「特に水晶なんて絶対に厳重に保管されるはずだぞ?」


「それがね。被験所にあるかな?って思って探しに行ったらピタリで合ったんだよ。」


「…そうかよ。」


コイツ、関係者だな。と警戒心を強めて水晶を首から下げた瞬間から五感を少しずつ引き上げておく。ゆっくり上がってくれれば良いものをいきなり数段階上がる感覚に軽く酔っていると遥か遠くで聞きなれた声が複数聞こえた。


「どうしたんだい?」


「静かにしてくれ。出来たらこのまま消えてくれると凄い助かる。」


酷いなぁ。と批難の声をスルーして耳を澄ませて声の方向を確認する。


「…お前が連れてきたんか。」


状況を聞こえてきた声から分析して確認をとる。


「おや。何でだい?」


「主にアニエスが『あのチャラ男はどこよぉ!』って叫んでる。」


「うーん。見解の相違だな。」


程々にヘンリとの話を切り上げて声の方向に歩いていく。


「あ、そうだユウ君!武器ってそれで全部かな?剣とかあったら取ってくるけど?」


俺の装備品を心配してくれているのか先を歩く俺に追いすがるように後を追ってくるヘンリ。


「ねぇよ。今んとこ─」


ぶっきらぼうに答えながら曲がり角に差し掛かったところで身を引いて顎を狙ってきた棒をかわす。そのまま棒を掴んで角から引きずり出し─


「バレてんだって。」


驚いている兵士に思いっきり裏拳。崩れ落ちる兵士を端にどかしてその奥から来る兵士達に狙いを定める。


「さぁて…あっちか?」


「うん。『正面口でまた会おう!』てメモを残しておいたから。」


「そうかよ。」


声がするのもちょうどあっちからだしな。

─合流したらメイスからの一撃に注意か。

水晶が戻ったからか身体に力が良く入る。


「そっちにも色々あるんだろうが…通してもらうぜ?」



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