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鶏のとさかは大抵ヘタッてる。

だってとさかだもの。(´・ω・`)

「ああ、もう!何なのよこれ!」


憧れの魔法使いの国、ティエルフールに来たはずなのに、今は目の前に立ちはだかる巨大な鶏─バシリスクと戦っている。それもこれもきっとユウのせいだ。戻ったら一発今度は当てるとして、


「ノッチ!先ずこの鶏この通りから出さないと!」


今戦っている場所はウエストエリアの大通りの前。多くの商店街が軒を連ねる。そんなところまで侵入を許したら町が破壊されてしまう。


「分かってる!だけど、コイツいっこうにこっち向かねぇんだ!!」


それは言われなくても分かっている。こちらに注意を向けさせて開けたところで戦おうとしたのだが、鳥頭だからなのかダメージを与えても、こちらに注意を向けずに矢鱈目鱈に暴れるだけなので迂闊に手が出せない。いっそ強靭な足を折ってしまおうかと考えた時、一筋の閃光が迸りバシリスクの翼の片方の付け根に刺さり、大きくたたらを踏む。


「システィ?」


何事かと視線を向けるとシスティが左手を真っ直ぐにバシリスクに向けていた。


「私も怪物相手なら戦えます!先ずはこの鶏を広いところに!」


キシャァァァァ!と怒りの声を上げて突進してくるバシリスクをかわし、怒りをかうようにメイスで足を一撃。グルリと首を回して私を見た時、ノッチが大剣の腹でもう一方の足を一撃。どちらを向くか迷った鳥にシスティの電撃が先程と同じ箇所に刺さる。。三者三様の攻撃を受け、逆鱗に触れたのか翼を激しく羽ばたかせ、飛ぶのかと思いきや再びの突進。建物に当たりそうだったのでノッチが能力をつかって完全ガード。システィと私で一撃を入れてダッシュすると漸くバシリスクはこちらを追ってきた。


「そうよ!こっちに来なさい!」


できる限り迅速にバシリスクを移動させるため、私達は走り出した。





「落ち着きましたか?」


「え、ええ。ありがとうございました。」


浮遊箱の中、セントラルエリアの塔から脱出した俺とクライス女王はノッチ達と合流すべくウエストエリアに移動中。


「まさか、イレウスが…」


「心当たりはあったんじゃないですか?それも恐らく、ずっと前から。」


考えるような素振りを見せたクライス女王にそう声をかけて腰のバックに入れていた水筒を煽る。


「そうじゃないといきなり射かけられて、俺が防いだとは言え直ぐに玉座の後ろに走れないでしょ。」


「…聡明な方ですね。」


「聡明でもありませんよ。」


からかわれているような気がしてややぶっきらぼうに返すと癖なのかクスリと笑ってから、ドレスにつけたポケットから一つの水晶を取り出して


「この国について詳しい彼女さんがいらっしゃったのでご存じかと思いますが私は得意な魔法が三つ。その中に精神系…といっても読心位なんですけど…」


「それで見たくないもの見ちゃった。ってことか。」


あまり信じたくはなかったのだろう。けれども実際にこうなってしまったことにショックを受けただろう。


「何度かそのようなことは打診して来たのですが、正式に女王を名乗った方がいいと言っていたときは確かにこの国ではなく、自分のことしか考えていない様でした。」


「ん?正式に?だってあんた女王なんだろ?」


それはアニエスも言っていたから知っている。クライス女王は考えるポーズをしたあと、


「国同士での外交となると、正式に決まった王が必要なのですが、ティエルフールはあくまで魔法使いの集落。国ではないんです。」


「…集落にしてはデカ過ぎないか?」


「ハハハ…そうかもしれませんね。その申し出を断った数日後にまた前回と同じように外交が覚束なくなりまして。その時はどうにか出来たのですが…私一人でどうにかなる範囲だったので。」


ですが、今回は…と続けているが俺は今もうひとつ出てきた疑問が引っ掛かっていて、早い話聞いてなかった。


「ユウ様?聞いてらっしゃいますか?」


「え…ああ、」


すいません、と言おうとしたところで下からキシャァァァァと奇声が聞こえた。二人で身を少し乗り出して確認すると


「な、なんだあれ?デカイ…鶏?」


「…バシリスク。イレウスが魔法使い達を使って作らせた生物です。」


確かにバシリスクと言われたらそんな感じの姿をしている。


「何処かに誘導されている様ですね」


「多分あそこの広場に誘導してるんだろ。」


浮遊箱の進行方向の先にある開けた場所を指差しアニエスだったら多分そうするだろうと仮定。バシリスクが先を歩きその後ろから浮遊箱が追うような形になったところでバシリスクが広場に到着。その直後電気の球が当たり、怒りを露にして激しく羽ばたいている。


「…好都合だな。ちょっと失礼します。」


先に断りを入れてからさっきと同じように抱き上げて、浮遊箱の外枠に足をかける。


「え?ちょ、ちょっとユウ様?」


慌てた様子で見上げてくるのでニコッと笑いかけると、顔を赤くして身を強ばらせてくれた。


「……舌。噛まないでくださいね。」


「え!まさか本当にってきゃあぁぁ…」





「こっちよこの鶏!」


広場にバシリスクより早く着いた私達は通じているかは別として、バシリスクに挑発。地面を削りながら暫く滑りながら広場に現れた。


「伏せてください!」


後ろからの声にノッチと二人でしゃがむと少し上の頭上を電気の球が歩くようなスピードでバシリスクに向かっていき、顔をあげたばかりのバシリスクの鼻に当たり、激しく燃え上がった。


「目眩ましになればと思いまして。」


「…いや、目眩まし……か?」


ノッチが呟くのも無理がない位の威力だ。直撃した顔の右半分は黒く焼け焦げ芳ばしい香りがしている。左半分は目は見えるようだが辛うじて開いているといった具合になっている。目眩ましといえば目眩ましだが目潰しといった方が正しい。


残った左目を見開きこちらにまたしても突進しようとしたとき、


「キャァァァァァ……」


という叫び声が聞こえた。まさか巻き込んでしまったかとバシリスクの周囲を見渡すけどなにも見つからない。


「うおおぉおらっぁぁ!!」


バシリスクの上から黒い影が落ちてきたかと思うとその影はバシリスクの右翼を蹴り、クッションがわりにでもしたつもりなのか、苦悶の表情で激しく羽ばたいているバシリスクの上を踏み越えて降り立った。


「おおぉ…こうして見るとデカイな…」


「ユウ。あんたどっから…」


来たのよ。というより前に


「ク…クライス女王……?」


システィがおののきながらユウが抱えている女性を指差したので注視すると確かにその人だった。


「あんた!誘拐!?」


「待て待て!違うから!塔に居たらクーデタ…あ、ええと反逆。そう反逆に巻き込まれてそれで緊急脱出したらこうなったんだ!」


ユウは気絶してしまったクライス女王をゆ下ろそうとしながら弁明してくるが説得力がいまいちない。どうしてやろうか。そんなことを考えていると、ノッチから声がかかった。


「あー、ユウ。下ろすのストップ。で、とりあえず避けようぜ。」


二人で同時に後ろに飛ぶと、先程まで立っていたところをバシリスクの鋭い嘴がえぐりとっていった。


「なんだあれ。」


「バシリスクっていうらしいわ。ユウ。あんたは私が隙を作るから、それを一撃で決めなさい。」


「…はいはい。」


返事を聞くより早く駆け出すとバシリスクは左目しかないというのにしっかり私を見据え、首を引き力を溜め始めた。一瞬の後、猛然とうち下ろされるそれを今度は全力のダッシュで懐に転がりながら飛び込みかわし、転がった勢いと自身の回転の二重の力がかかったメイスをバシリスクの左足を一撃。ズガァァアン!という轟音。確かな手応えだったけどバシリスクの足は折れなかった。だけど私は隙を作ればいい。来るべく現象に供え、距離を取りバシリスクを見るとその顔の前、地面を踏み切り大ジャンプをしたユウが右腕を弓のように引き絞り猛然と一撃。返す刀で同じように左。また右、左もう一回右。打ち出した腕を引き絞る為に通った線をバシリスクの血肉が追い、右腕を引き抜くと嘴を足場にし頭上に移動。今アイツは両腕を引き絞っている。念のためもう一歩下がったあと、バシャァァァと大型の噴水のようにユウの一撃でかち割られた頭から激しく血を吹き出しながら私達があれだけ誘導したときに感じた固さを気のせいの一言で片付けるようにあっさりとバシリスクは力尽きた。



「さてと…これはもう確定だな。」


連続での狼撃を放ち、皆のところに顔に付いた帰り血を拭いながら戻ると皆の冷ややかな視線が出迎えてくれた。


「あ、あのユウ様。血が……」


「ああ、大丈夫です。全部帰り血なので。」


クライス女王が手巾を差し出してくれたけどとても拭いきれる量ではない。一歩下がって軽く身震いして帰り血を払うけれどもう完全に狼みたいな自分の行動に多少げんなりする。


「ユウ。何が確定なんだ?」


「ん、ああ…とある人物の反逆。」


手甲の装甲の隙間に入り込んだ血を払いながらノッチに答える。


「ユウ様。恥を忍んで頼みがあります。」


クライス女王が俺の前まで来ると深々と頭を下げ、


「この国を…救ってください。」


あまりに真剣なそのしぐさに分かりましたと答えるよりも早く


「当たり前でしょうが!!」


と金髪のアホが返答。そのままくるりと俺とノッチの方を向き、


「ホラ!ボーッとしてないでいくわよ!」


ビビシィ!と両手で指差してくる。


「まぁ…拒否権なんてないもんな。」


「俺、イレウスに喧嘩売ってきたから今更だし。」


ノッチと二人で嘆息しながらセントラルエリアにすでに向かっているアニエスを追おうとすると、


「わ、私も連れていってください!」


システィから待ったがかかった。


「私も怪獣相手なら魔法で攻撃出来ます。それに回復魔法も使えるので!邪魔にはならないかと!」


必死に訴えてくるが実際の戦闘ではそうはいかないだろう。やはりここは残ってもら


「よし。じゃあシスティ、私、ノッチでチームを組むから2チームで攻めるわよ!」


「待ておかしい。」


どう考えても片方がチームではない。


「何よ。あんたは回復魔法効かないし、そもそもいきなり後衛と連携とれるようなスタイルじゃないでしょ。」


ムスッとしながら返してきたがムカつくが正論だ。殆ど飛び回る俺の動きに合わせて援護射撃なんてよっぽど熟練しないと無理だろう。溜め息を付きつつ先を歩いていったアニエスチームを追うと、クライス女王が呼び止めて


「ユウ様!私が「ああ、良いです大丈夫ですから俺らが取ってた宿のベットにでも隠れててください。」


ゼロ距離と向こうのほしい人材のチーム。連携云々の話では既に無くなってしまっている。そこを理解してくれたのかそれとも声を少し荒げてしまったのが恥ずかしかったのか、ボッと顔を一気に赤くし俯いたあとコクッと頷いてくれた。


『何やってんのよ!早く行くわよ!』


アニエスが呼びかけてきているのでそちらを向くともう広場の入り口にいる。


「じゃあ、ちゃんと隠れててくださいね!」


そう言って駆け出しアニエスチームと合流。


「で、どうするの?」


まさかの丸投げ。この豪快さが売りなのだろうか。絶対に売れないポイントをスルーし、頭を掻いて先程の残骸を髪から飛ばし


「まぁ…色々あるけどここはやっぱり」


頭から手を離し、戦闘で崩れたコートを羽織直しながら


「…正面突破だろ。」


「今楽しくて堪らない。って顔してたぞ。」


「……気のせいだろ。」



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