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椅子一つ作るにも色んな技術がいる。

「あれ?ユウ?」


「ん?ああ、アニエスか。」


ある日の昼下がり、王国の店を巡り必要なものを買い集めたところでアニエスと遭遇。


「何?今度は建築家にでもなるの?」


そう言われるのも無理はない。俺は今木材を右肩に担ぎ、空いている左手で釘やら金槌などが入った袋を下げている。


「そこまでのものを作る気はないがな。ほら、俺、前回家入手しただろ?」


「そうね。」


歩きながら雑談を始める。


「んで、ベッド位作ろうかな。と。」


「何で?ベッド位あったでしょう?だって元は人が住んで…ああ、そうゆうこと。」


途中で気づいたことがあるようで口をつぐんでくれた。



ゴブリン討伐の後、ギルドに戻り今回の活動の報告、報酬の受け取りを済ませ、ついでにカギも入手した。何はともあれせっかく手に入れたマイホームだったのだが、カギを開けた俺を迎えたのは絶対に家が出さない重苦しい空気だった。しかも部屋自体はキレイなのがまず不思議だし、何故か部屋の四隅に白い塊。扉を閉めたら不思議な紙がこんにちは。ベットで寝る気になんてとてもなれなかった。床で一夜を過ごした後、部屋を掃除して寝床を作ろうとしているところだった。



「さて…やるか。」


近場の商店を巡って必要な材料を集めた。


「寝てるうちに大破したりしないようにね。」


貰った家は玄関を開けるとすぐに一人で暮らすには充分な広さのリビング。キッチンが併設されたその右奥にシャワー室。その隣に寝室がある。


「そんなミスしねぇよ。」



設計図も無しでベットを組み立てていく。元々こうゆうのは得意だったし、木材自体が凄くしっかりしているのでこれなら大丈夫だろう。楽しくなってきた俺とは逆に暇になったらしいアニエスがこの家で唯一そのまま使おうと決めたソファに寝そべって話かけてきた。


「ユウって異世界から来たんだっけ?」


「俺もよく分かってないけどな。」


釘を打ち付けながら返事をする。


「あっちってどんな感じなの?」


身を乗り出して聞いてくるので


「うーん。俺らくらいの年齢だとどうしても学校に行かないといけないんだよ。」


「ガッコウ?」


「そこに皆集まって勉強するんだよ。」


ずっと首を下に向けていたので上を向いて首の凝りをとりにかかる。


「へー。学院みたいなところで全員が勉強して国全体の能力をあげるのね。」


「う、うーん。そうなんのかな…」


ポジティブな捉え方をすればそうなるのだろうがどうしても納得は出来ない。


「何よ。そういう目的じゃないの?」


「こっちではなりたい職業になれるだろ?」


休憩がてら体ごとアニエスの方にむけて話をする。


「まぁ…兵士になりたかったら入団試験みたいなのはあるけど、大抵は自由ね。」


「向こうではそれが全部学力で決まるんだよ。」


アニエスは驚いているが、間違ったことは言ってない。


「しかも一回決めたら殆ど変更不可。」


そこまで聞いて両手足を放り出し、


「何それ。」と一言。


「じゃあその学力が足りなかったらなりたいものにもなれないの?それ変じゃない?」


「あー、もういい。誰だってそう思うもんだ。」


海外通販の外人みたいに首をすくめてそう返し、最後の仕上げに入る。


「でもまぁいいわ。それより」


ソファから降りてこちらに来て自分の腹を指さし、


「大丈夫?怪我。」


「あー、意外と。」


昨日寝る前に治れ。と念じて寝たら本当に治った。言霊ってあるんだな。


「ちょっと見せなさい。」


「いいよ。お前のくれた打ち身用の塗り薬も使ったし。」


「?」


自分のポーチを漁り始めたアニエス。


「…それを見越して渡したのよ。」


「お前完全に切り傷用だと思ってたろ。」


コホンと咳払いを1つして


「まぁそんなわけで脱ぎなさい。」


「…意味わからん。」


「あんたに借り作りたくないだけよ。仕方ないからあたしが塗って上げるから。」


「いや。要らんから。」


そうしているうちに距離が近づいてくる。ギャルゲみたいなシュチュエーションだがアニエスの目は完全に興味に染まっている。


「何よ。いいから早く。」


「イヤ。待て。落ち着け。」


知らず知らずに作りたてのベッドまで後退してしまい、俺は完全に腰かけてしまった。


「さぁ…観念しなさい。」


もう俺のシャツに手をかけている。


…仕方ない。諦めよう。コイツも終わったら満足するだろう。


俺はもう目を瞑り完全に身を任せる。シャツが腹が完全に見えるまで上げられている。


「本当に治ってるわね…どういうこと?」


「知らん。肉体強化だったらこんなもんじゃないのか?」


「何言ってんのよ。肉体強化だったら強化出来るのは筋力位。回復ってなるとそれは肉体変化。でもそれだと筋力は上がらないわ。」


「そうか…シャツから手を離せ。」


「考えられるのは身体強化。でもそれはすっごい貴重だし、王国でもノッチ位だわ。」


「…冷静に考えたらウルフ、サンダルで狩ってたな。」


初めて会ったときのシーンを思い出してみる。


「さ、続けるわよ。」


「いや、よくね?」



「よぉ!ユウ!明日の依頼…だ……」




扉を開けたノッチ登場。


─シャツを捲られている無抵抗の俺。


─シャツを捲っているアニエス。


─そして二人がいるのは、完成したベッドの上。





「悪い。邪魔したな。」


バタン。





王国中を能力全解で飛び回り、ギルドの前でノッチを捕まえ、後から追い付いたアニエスと必死に誤解を解いたのは言うまでもない。



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