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問題を無くすには、やっぱり解決するしかない。

今さらだけどブックマークされてる…。

読んでくださってる皆さま、ありがとうございます。(´・ω・`)


「えーと。『国軍惨敗!酒場の決闘』」


後ろから楽しそうな声で今朝一番に出た情報紙を読んでくる。


「『(黒狼)、ランカー隊長を含む隊員3人をまたしても素手で瞬殺!』だってよ。」


「…したくてした訳じゃねぇよ。」


呟くように返して王国の大通りへの歩を進める。




あの闘いのあと、情報屋を名乗る集団に囲まれ、『どうやって倒したのか。』とか『名称をこちらでつけていいか』など、騒ぎが広がる前に食堂を脱出しそのままとっていた宿屋に入り直ぐに眠った。ノッチとの約束の集合時間は朝早くだったので、まだ噂は広がらないだろうと思っていたが、その予想は宿屋の玄関でニヤニヤ笑いながら情報紙を見ていたノッチを見た瞬間消し飛んだ。



「で、誰なんだよ。そのお嬢さんは。」


「俺もよく覚えてない。金髪金目でお嬢様って感じの何だっけ…ドレスワンピース?だったかを着てた。なのにメイスを何でか2本持ってた。」


思い出すだけであのドヤ顔も一緒に浮かんできた。今度会ったら絶対にあのドヤ顔にワンパン入れてやる。


「もしかして、アニエスか?」


「知ってるのか。」


意外な情報源が近くいた。そう言えばノッチは元国軍兵士だから顔が広いのか。


後ろ歩きに変更してノッチの言葉に耳を澄ませる。


「我らがギルドのエースだな。」


「は?」


「最近入団してきて、まだ若輩なのに早くもエースと呼ばれているな。」


「何でギルドのメンバーなのに国軍に追われてるんだ?」


気になったことを訪ねてみると、例のニヤニヤ笑いこちらに向けられ、


「そうだよな。立て続けに国軍を倒した訳でもないのに。しかも素手で。なぁ。(黒狼)さん?」


(黒狼)は情報紙が勝手に着けた俺の名称らしい。由来は俺の闘い方と、武装の色からだと今朝部屋の前に座り込みをしていた情報屋が喋っていた。当然無視しておいた。


因みに読み方は(こくろう)。凄い中二臭い。お


「あのなぁ…俺はまだ認めてないし、第一、(黒狼)ってのも気に入らないんだよ。」


「じゃあ、どうすれば認めるんだ?」


「そうだな…いきなり国民の誰かからその名前で呼ばれたら、認める。」


これ以上目立ってもいいことなんてなんにもない。『若いうちは苦労しなさい。』なんて実際苦労したらもう言えなくなる。


「あ、これどうぞ!昨日の戦い凄かったですよ。黒狼さん!」


店の娘さんからの果物のプレゼント。


「…なぁ、ノッチ。これなんだ?」

「ハンマークラッカーだな。」

「…偉く挑発的な名前だな。」

「ハンマーじゃないと割れないから、だと。」


試しに能力を使って握ってみるとブシャァという呆気ない音と共に砕けた。ポタポタと路上に垂れる黄緑色の果汁。


「…やったな。ユウ。」

「…何を?」

「…地方の方だとそれが出来たら、妻をえらび放題らしい。」


一気に疲れが吹き出してきたが、ギルドに行くことが先決だ。やるせない気分の中、砕いた果実をかじる。


「……うまっ。」








「着いたぞ。」


暫く歩いてノッチが指差す先にあったのは、よく西部劇などに出てきそうな酒屋。見たところ普通の一軒家よりも一回り大きい位のサイズ。…そして何より遠巻きに見ても伝わってくる存在感。決して重苦しい訳ではない、少年の頃の秘密基地を作ったときのあのワクワクに似た高揚感。


「良いとこだろう?」


茫然と立っている俺の反応が予想通りだったのかノッチも嬉しそうにしている。


「じゃあ、中に入って登録しないとな。」


ノッチに先導されてギルドの中に入る。






─入った瞬間、その時が多分俺のこの世界での感動の最高潮だったのだろう。





「…手間が省けたな。」


ギルドの歓迎の台詞としては嫌に荒っぽいな。と思った。


外見と同じように内装も古びた酒屋みたいな印象。奥には依頼書だろうか、漫画に出てきそうな手配書サイズの張り紙が多数張ってある。向かって左側にはギルドの奥まで続く長いカウンター。そしてギルドのメンバーらしき人たちとにらみ合いを中断しこちらに視線を写した─騎士。


俺に向かって歩いて来るあの騎士は昨日俺の開幕ドロップキックで吹き飛んでいった彼だ。その彼が俺を指差し、


「彼の身柄はこちらに渡して貰おうか。」



…俺が捕まるようなことを何かしたか!と叫びそうになり、しばし思考。昨日はそうだな…


新しく出来た武装で騎士とファイト。んで全員を倒した。


あとよく考えると騒ぎから逃げるときに起こした事実上の無銭飲食。



意外と捕まる条件を満たしていた。



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