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異世界に行けば巻き込まれなくなるって本当ですか?  作者: ねぎま
アニエス・アキュリス
100/198

ああ、家庭環境。

(祝)100話!

いやぁ……グダグダしつつもここまで来ましてね…

よくもまぁ続いたものです。

ですけれど!まだまだグダグダと続きますので!


今後ともどうぞよろしくお願いします!

大きな…大きすぎる窓から差し込んでくる朝日の光に眠りに戻ろうとする頭を無理矢理覚醒へと導いてくる。

頭までふかふかの布団を被ってそれを遮って寝に戻りたい……


だけどコンコン。と控えめにドアを叩いた人物が私の部屋の外にいるということは…もう狸寝入りも効かない。

はぁ…と溜め息をついてから「今から行くから平気。」と部屋の前で待つ者を追い返して這って、私一人で使うには大きすぎるベットから這い出る為に気だるい体を懸命に動かしてベットの縁を目指す。

天涯付きのそれから這い出てから、まず顔を洗い、仕事用の服を掴み、袖を通す。

「……そうだった。今日は違ったんだった。」

やむ無くもう一度脱いでベットに放り捨て、ウォーキングクローゼットの中に入って簡易的なドレスを来て部屋の入り口に立て掛けたメイスに数回手を触れてからドアを開け、廊下に出る。

だだっ広い廊下を歩いて朝食が置いてあるはずの会食の間をなるべく見つからないようにこそこそと歩いて進む。

しかし、見つかりたくない時に限ってちょうど角を曲がったところで掃除係のお手伝いさんに見つかってしまう。

まさかここで私を見るとは思っていなかったらしい同い年位のメイドは驚いている。

これなら!と物陰に隠れようとするけれど、さらに最悪なことに新人の教育中だったマイヤーズの姿をその後ろに見つけて、抵抗を諦める。


はぁ…と本日2回目の溜め息をついてから

「おはようございます。」

怒られないために精一杯の笑顔でご挨拶。






1、2分位歩いていくと幼いころから見慣れているこれまた大きな扉。何でも有事の際にはここに飛び込んで籠城できるように、扉に何百もの矢を射かけられても耐えられるように作られているらしい。まぁ、私の部屋の扉もそうだけど。


けれどそんな分厚い扉も中から立ち上ってくる美味しそうな朝食の香りは遮断できないようで私のお腹を鳴らそうとしてくる。


扉を開けて中に進むと長い、長いテーブルには四人分の食器一式と椅子がそれを囲うように置かれ、さらにそれを囲うように使用人の方達が立っている。

そのうち1個の椅子に座り、食べようとすると

「おはよう。アニエス。」

……しまった。挨拶がまだだった。

フォークを置かずに「おはようございます。」と挨拶をしてから食事を始める。


「もぉ…むすっとして。」

「御父様はどこ?珍しくいないけど…」


トマトを差したフォークでテーブルの上座、ここの国王様がいらっしゃる場所を指して御母様に聞く。


「こら。アニエス。あんまり行儀が悪いと私も怒りますよ。」


ワイングラスをとん。とテーブルに置いて私を怒っているつもりなのだろう…握った拳を軽くあげて怒ってくる御母様。

正直全く恐くないし、産まれてからの今まで教育担当のマイヤーズ以外に怒られた記憶もない。ここは無視しよう。

このイライラは…ギルドに行ってあのバカの頭でも思い切りメイスで殴ればスッとするし。


「もぉ…そんななら私にも考えがあるんですからね。」

「……え?」


それでも私がグレずに育ったのは、この『考え』によるところが大きい。

御母様が『考え』っていうときは宣告された側に甚大な被害を与え、そしてそれは必ず遂行される。そしてそれは大抵ろくでもないものが多い。


「今この国にいてくれているアニエスちゃんのボーイフレンドのベットにでも、熟睡中のアニエスちゃんを放り込んじゃおうかしら。」

「私にそんな存在はありませんがそれだけは止めてくださいませ御母様。」


ピシッと姿勢を直し行儀よく。

……ボーイフレンドとやらがあのバカとは思わないけれど確かに一番近くにいると言えばあのバカになる。アイツのベットに放り込まれたらエライことになる。


「あら……なら、クライブ達に帰ってきてもらわないと。彼らもお仕事があるんだし。」

「お待ちください何故もうすでに放り込まれる体勢が整っているんですか……」


私の頭がキリキリと痛むけれどそんなことはお構いなしで、手を叩いて使用人を呼び何かを伝える御母様。本当に近くにクライブ達を配置していたんだろう……


これ以上ここにいても頭が痛くなるだけなので、私でもスゴく久しぶりに食べられる鶏肉…しかもニワトリの肉のメインディッシュを我慢して朝食を終えようと、スプーンを持つ手を急がせる。

ノッチとバカが討伐したらしいからアイツの家にもあるだろう。それを分けてもらおう。


「あ、そうだ。アニエスちゃん。

 今週末の舞踏会。必ず出るようにね。」

「え……?」

「え?って…あるのは知ってるでしょう?」

「いや…あれは毎回御母様が……」

「あら。アニエスちゃんもいい加減出席しないと。そうでしょう?」

「そ…そうですけれど……」


舞踏会。

近隣どころか主要な各国からそれこそ主要な方々が訪れ、この宮殿の舞踏会場で踊り、語らう。それだけの会なのだけれど…

響きだけなら立派だ。

名前だけだ。立派なのは。


……私位の歳なら必ず出席しないといけないのも、つまりはそういうことで……


「……分かりました。」

「ええ。ありがとうね。そろそろアニエスちゃんも考えていかないと行けないから。」


……たまに、無性にどうしようもないことを考えてしまうのも、この時期が近くなってくるとその頻度は増える。


いつもなら好物なはずのスープもそのときは味が良く思い出せなかった。





「……はぁー…」


溜め息を吐き出して宮殿を出て、宮殿の目の前まで伸びるこの国自慢の大通りを一人で歩く。

舞踏会が近いこともあり、この国全体はお祭りムード満点で大通りに店を構える主だった店はいつも以上に忙しそうだ。

その喧騒から逃れるようにいつも通りに脇道に、仕事着を翻して入っていく。

腰のメイスの位置を整えてギルドに続く道の前で少し止まる。


「……」


いつもならくぐるドアを通りすぎ、さらに大通りから奥の道へ。

子供たちでいつも賑わう公園を抜け、


木造の一軒家の前で立ち止まる。


「なんでここに来てるかな……私は。」


何故か窓から途切れることなくもくもくと煙を吐き出す家の扉を開け、溜まった鬱憤を晴らしに取りかかる。






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