プロローグ
初めまして。ねぎまと言います。
更新はこまめにやっていきますので暇潰しに。
それでは作品の方、宜しくお願いします。
物語の始まりにはいろんな形がある。
単純にいつもの日常からいきなり非日常に!とか、目覚めたらなんとビックリ異世界!とか。
そんな感じの主人公は大抵本当に日常を
送っているんだ。趣味をしていたり勉強をしていたり買い物の帰りとか。
俺、戸坂悠の場合は、物語の始まりが
「待てやこらぁぁあああ!」
「逃げてんじゃねぇ!」
…ヤンキーから全力で逃げている
この場面からなのだろうか。
勘違いしないで欲しい。何も自分からケンカを売って不利になったから逃げるぜ!みたいなことじゃない。学校帰りに
コンビニに寄ったところご機嫌ナナメだったヤンキーの方々から目をつけられ、街中で鬼ごっこしているわけだ。
俺は何もしていない。
今年17になるがどうやら俺は
『巻き込まれやすい』らしい。
無論巻き込まれるのがメリットなら
俺も苦労したりしない。だが巻き込まれるのは大なり小なりデメリットしかない。小さいものなら他人にかけたイタズラに俺にかかったり、大きいものなら買い物を頼まれコンビニに行ったところ、
ピンポイントで強盗と遭遇したり。
この性質で得たものなんて何もない。
あるとするなら…
「やっぱり逃げきれないよなぁ……。」
この逃げる為に身に付いた
鳶職顔負けの軽業と、
この平和な世界にはおおよそ必要の無い
戦闘スキル位だ。
近場の公園に飛び込んで少し呼吸を整え
ヤンキーの訪問をゆっくり待つ。ああいうタイプで巻き込まれると大抵…
「ようやく諦めたかよぉ!」
ヤンキーの一人─面倒なのでヤンキーA─
が追い付くなり威嚇のつもりだろう。
ポケットから折り畳みナイフを取り出した。
「ヤンキーってあれ持ってないと
死ぬのかよ……。」
「おい逃げ回りやがって…こっちは
センコーから補習くらってイラついて んだよ!!」
…どうやら今回はヤンキーのイライラに
巻き込まれたらしい。
まともにやったらきっと勝てないだろう。こっちは一人。あっちは三人。
こっちはさらに素手だが向こうはヤンキー三種の神器ことナイフ、バット、
多分通販で買った鉄製っぽい鎖。
だが……よく見るとタバコでも吸っているんだろう、俺より息が上がっている。
今攻撃出来るのはナイフを持っている
ヤンキーA。ただ一人。
深く深呼吸をして息を整える。
「お前ボコして
憂さ晴らしさせろやぁぁっ!」
来た。右上からの降り下ろし。
空手の基本スタンスで待ち構える。
ナイフを持った右腕を左腕で軽く反らし
それと連動させるように右の拳を
正拳突きの様に─叩き込む!
バキッという音をたて顔にクリーンヒット。…多分鼻が折れたけど気にしない。
そのままがら空きの腹に右足の蹴りをぶつけてヤンキーBCの前まで吹き飛ばす。
呆気にとられたヤンキー達に向かって
一言。
「…まだやるか?」
「またやっちゃった…。」
今回のことを思い出して深く反省。
結局ヤンキーBCはAほどイライラしていたわけではなく、テンプレ通りの台詞を一通りかけて去っていった。
今は通学路途中の土手の斜面でジュース片手に夕陽を眺めている。
「本当に成人してもこのままだったらどうしよう…いや、下手すれば死ぬまで?」
不安になったのでイメージしてみる。
自分がヨボヨボの状態で多種多様な人間に追われるイメージ。そしてその全員が手に持つ─たくさんの凶器。
「いやいや。どんな世紀末だよ。
でもあり得そうだな…」
今回のヤンキーはきっともう一回来るだろう。もっと数が増えて。巻き込まれパターンで一番厄介なのがヤンキー。
だってなかなか終わりが来ない。
「いっそ異世界にでも飛ばされたら
この性質も消えるんじゃないか…」
ポツリと呟いた言葉自分で賛同。
「…そうだな。そこまで行ってしまえば性質云々なんてきっと関係無い!」
楽しい世界を今度は目を閉じてイメージ。
─色とりどりの動植物。
─まだ見ぬ広大な大地。
─街はきっと活気に溢れかえって。
─テンプレ通りに王様とかいたりして。
─そこで俺は今日も追われる。
「何で変わらねぇんだよ…」
空になった缶を投げようとして一回ストップ。回りをよく確認して何もないことを認めて投げる。─一回人にぶつけたことがあるから。─
「帰るか。」
腰を上げて立ち上がった。
また明日から巻き込まれる毎日だ。
とりあえず着替えと、風呂と。
そんな感じの事を考えてながら土手を
降りて横断歩道を渡り始めた。
─すぐ横にトラックが来ていたのに。
最後に真っ赤な視界に写った先程のヤンキー達。
「とりあえず…明日から追われることもないか。」
その時はまだヤンキー達なんか
可愛く見えることが起こるなんて
思ってなかった。
まだまだここからが大変だとも知らずに。