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第三尾 決断する狐様!

放たれたボウガンの矢は獅子目の二の腕を掠めた。その獅子目の腕の位置はさっきまで美夢が座っていた場所であった。


「ッ…。」


痛がってる暇ではない。獅子目もすぐさま美夢を突き飛ばした階段の裏へと身を隠す。


「なんなんだあいつは!」


隙間から顔を覗かせ、矢が飛んできた方向を確認する。すでに人影はなかったが油断できない。


「あ、あ…腕……。私のせいで……。」

「大丈夫。掠めただけだから。」


実際は肉が少し抉れており、痛みもそれなりにあった。しかし、獅子目は美夢を心配させまいとわざと見栄を張った。


「今治したあげる。」

「え!?」


獅子目の見栄をあっさりと払いのけて美夢は獅子目の血が出てる部位に手を触れる。

瞬間、彼女の手が妖しく光った。

その光が痛みを和らいでいくのを驚愕するが、今は驚いてる場合ではない。いつまた矢が飛んでくるかわからない。

獅子目は隙間から辺りを伺いながら美夢に問う。


「あいつは何者なんだ?知り合いってわけじゃないだろ?」

「……多分、ハンターだと思う。この世界では私たちは異質な存在。裏を返せば極めて希少な存在だから……。」

「……なるほどな。俺とは別の好奇心を持った連中か。」


美夢は獅子目の腕から手を放した。痛みは消えていたが傷が完全塞がっているわけではなかった。しかし、痛みが消えただけでも獅子目としてはありがたかった。

辺りを警戒しながらこれからどうするか獅子目は一生懸命思考を巡せる。




獅子目が警戒している間、美夢はどうにかして彼だけでも逃がせないか模索していた。

初めてできた人間の友達。美夢はなんとしてもそれを守りたかった。

しかし、正義感の強そうな彼は絶対に自分だけが逃げるようなことはしないだろう。正義感の強いは人はそういうところで頑固だ。

相手がただの人間ならば半妖である自分の敵ではない。しかし、美夢は自分とは別の種類の妖気を感じ取ってしまっていた。

相手は完全な妖怪。人間の彼では勝負にならないかもしれない。いや、恐らく勝負にならない。いまのところ、最初の一発以外攻撃はないが去ったわけではない。美夢は今でも自分とは違う妖気を感じていた。

美夢は半妖であるため、妖気を感じとることができても、位置までは把握できない。そのことに美夢は歯痒く感じていた。

位置が分からなければ逃げることもできない。美夢が彼を守るための選択肢は一つしかなかった。

美夢は近くの茂みに隠れていた狐を呼び出した。




獅子目もどうにか美夢だけでも逃がそうと模索していた。美夢と違いただの人間である獅子目には敵が妖怪であることを知らない。

敵の攻撃は来ない。待ち構えているのか、もしかしたら、逃げたのかもしれない。どちらにしてもずっとこの場所に留まるのは危険である。

そう判断した獅子目はこの場から離れるために移動する決意をした。

相手はボウガンを使っている。自動装填機能でもない限り連射は不可能だ。仮に自動装填機能が付いていたならばさっきの射撃で二発撃っていれば獅子目は致命傷を負っていた。しかし、敵は一発しか撃たなかった。したがって自動装填機能はなく、連射はできないと獅子目は推測した。

神社のそばの林の木を盾にしながら矢を打たせ、相手が装填している間に木から木へと移動し、人通りに出る。かなり無茶な作戦だが獅子目の頭にはこの案しか浮かばなかった。幸い怪我をしたのは腕で足は無事である。また、獅子目は反射神経にはそれなりの自信があった。

獅子目は美夢に作戦を伝えるようと辺りを警戒しながら傍らにいる彼女に話しかけた。


「美夢。とにかくここから離脱しよう。」


話しかけた先にいた美夢は狐に何か話していた。獅子目の声は届いておらず、彼女は狐に何か話続けている。獅子目は彼女が何を言っているのか声が小さくて聞き取ることができなかった。


「美夢!」

「え!?あっ何?」


少々声が荒くなってしまった。怒鳴られた形となった美夢は驚きと困惑の表情を浮かべている。


「あ……いきなり怒鳴ってごめん……。えっと、とにかくここから逃げようって話なんだけど……。」

「……あの、そのことなんだけど……。」

「なんかいい作戦があるのか?」

「う、うん。ちょっと耳貸してくれる?」


獅子目は美夢に言われた通り耳を近づける。

美夢も獅子目の耳に口を近づけて囁いた。


「おやすみ。」

「え!?」


美夢の指が獅子目の眉間に触れた。同時に獅子目は自分の意識が遠退いていくのを感じた。

獅子目には何が起きたのかさっぱり分からない。それを考える余裕もなく獅子目の意識は段々と消えていく。

消えていく意識の中で獅子目は美夢と視線が合った。その視線の先の彼女の口は何か言葉を紡ぎだしていた。


『ご・め・ん・ね。』


その言葉の意味を理解することなく獅子目の意識は完全に途切れた。


暇な時に書いている小説です。


【今回は二人の各視点で書いてみました。】

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