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その1:クネスの取材

月に代わって朝日が昇り、マスカーレイドの一日が始まる。

住民たちの声にまじって、小鳥のさえずりがピチピチと聞こえていた。

そんないつもと同じ一日の始まりで、早くもいつもと違う一日を迎えようとしている人物がいた。

住宅街から少し外れた場所に位置するアクサ医院の診察室兼院長室。

高級そうな黒塗りの椅子に座り、年季の感じられる白衣できょとんと首をかしげるアクサ=ヤーナだ。

「わたしを取材?」

「今度書こうと思っている小説で医者を登場させようと思うんですよ」

 アクサの前に立っているのは、シャツとジーンズに身を包んだ、小説家の卵クネスである。

 今日はいつもの特等席へは向かわず、直接家からアクサ医院を訪ねてきていた。

「一番身近な医者といえばアクサ先生だし……」

「そりゃあそうだけど……」

 アクサは髪を軽くかきあげ、窓の外へと目を移した。雲ひとつない青空から降り注ぐ日光が、

容赦なくアクサを照らしつける。

「あまり参考にならないと思うわよ?」

「そんなことないですよ。邪魔にならないようきちんと心がけますから」

 両手を合わせて頭を下げるクネスの懇願に、アクサが折れたようだ。

 小さく頷き、ニッコリと微笑んでみせる。

「わかったわ。そのかわり一日だけよ」

「ありがとう。緊張しないでいいですから、いつもどおりにお願いします」

 クネスは持っていたバッグからメモ帳と筆記用具を取り出すと、アクサの脇にあった小さな

丸いすを持って邪魔にならない死角へと移動した。

 午前九時のチャイムがなると、アクサ医院は正式な開院を迎える。入院のための病室が三つ

と診察室兼院長室が一つ、あとは受付という簡易的な病院だ。

 看護婦が数人いるもののお手伝いといった意味合いが強く、診察や手術といった医術関係の

仕事はすべてアクサ一人で切り盛りしている。そう考えれば簡易的といえど充分な施設の整っ

た病院といえるだろう。

「それじゃあ、最初の患者さんを呼んで」

 アクサに指示されると、若い看護婦さんが患者さんを診察室へと入れた。

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