act.005
ようやく本編です。
が、説明が長くなったりと?
『商売』と言っても多方面に分類はある。
空想上でよく描かれるものでは武器屋、防具屋、魔法屋などなど多々ある。
だが、その裏側では絶対あるはずの『交易』と言うものを忘れがちになる。
例えば武器や防具は鍛冶屋に行けばいくらでも造ってもらえるだろう。
だが、その鍛冶屋は鉱石豊かな山間に必ずしもあるとは限らず、結局は誰かから買う場合がほとんどだ。
この世界では、鍛冶屋に関して言うと調べたところによると7:3の割合で交易によって買い付けるお店で占めていた。
残り3の部分は冒険者や小遣い稼ぎで持ってくる人から直接買い取るか、鉱山から直接採取して製造販売している。
食品店などは自家栽培している店は無く、予想通り農家と直接契約するか外部から持ってこられた野菜や肉を買い付け調理していた。
―――行商人。
―――旅商人。
意味の違いはささいだが、彼らを指揮し運営しているはずの『交易商』はこの世界に無い事が驚きだった。
―――なら作れば良い。
と思い行動しているが、この世界に来てまだ1年目。
世界の半分も周れて居ない自分にとっては、なかなか難しい話であった。
問題点は解っている。
まず一つ目は、完璧な資金不足。
この世界では銅貨、銀貨、金貨の3種類の貨幣が世界共通で存在している。
これはギルドと呼ばれる冒険者斡旋所で依頼完了代金が支払われる際に、イザコザを防ぐ為に共通貨幣が義務化された。
もし世界に点在する国が各々独自の貨幣を作り、どこかの国で国営が傾けば貨幣の質は落ち、その価値は意味が無くなるからだ。
その影響を一番受けるのが商売を営むお店や、世界にこれまた点在するギルドだった。
過去の反省を踏まえた上でギルドが先頭に立ちようやく統一化が図れたという話だった。
そして二つ目の問題点はシステム面。
『相場』という言葉がある。
例えばどこかの街で疫病が発生したとしよう。
疫病を治すには衛生管理はもちろんの事、薬が必要となる。
街での薬の消費量は一気に高まり、薬が不足するという問題が発生する。
その土地に住む人にとっては死にたくないので、どんなにお金を払っても薬を買い求める。
そうすれば最悪、今まで銅貨1枚で買えていた薬が金貨1枚で買い求めるまでに高騰する。
―――ボロ儲けだろ?
逆に鉱山が豊かな場所に鉱石を売った所で、利益はマイナスになるのが常だ。
それこそ世界的に見て希少価値が高い鉱石以外は・・・。
こうした一連の価格変動を『相場』と呼び、商売をやるにあたって必要不可欠なものとなる。
ある人はこう言う『相場は生き物』だと・・・。
うまい事を言ったもんだと今更ながら思う。
頭である程度解っていてもそれらを実際に把握、そして管理するのを1から築き上げるのは生半可な努力だけではどうしようも無い。
それでもある程度、管理しきれるようにこの異世界の各地を周り特産物などを調べているわけだが、下手すると調べたまま人生が終る気がしてきた所だった。
そして3つ目の問題は拠点であった。
行商人や旅商人をやりながら商売しつつ相場を把握する事もある程度可能だが、それにはやはり限界がある。
店を構え、人を雇った方が効率は良くお金稼ぎが出来る。
この異世界は便利な物で、魔法と言うのがある。
聞けば遠距離通信が出来る魔法も存在するらしく、それを使えばその街の状況などいち早く知る事が出来る。が、あまり普及されていないらしく普通に使われる魔法に比べて相当高価な物となっている。
それこそ国が緊急事態で使うケースが常らしい。
でも、もし使えるならいくら高価であってもその元手は十分取れるわけでそれを念頭に、動ける場所を今模索している。
一つだけ店を構えたい街の候補はある。
だが、その街は問題だらけで、とてもじゃないが無理なのだ。
『奴隷都市』
この異世界では奴隷制度はほとんどの国で認められている。
故に奴隷市場の売り上げは日々一定か右肩上がりであり「世界で一番儲けている商売人は誰か?」と聞けば「奴隷商人でしょうね」と皮肉めいた笑みで言葉が返ってくる。
世界に点在する国々のど真ん中に存在する都市であり、交易などを考えた場合ほぼ全ての街や村を網羅できる位置づけでありながら、日々奴隷が売り買いされる場所・・・それが奴隷都市であり、勿体無いとさえ思う。
もし商業都市に出来るなら・・・。
そんな夢想を抱いてしまうのであった。
作者はこれからの話の流れと商売の仕方を模索し、主人公もまた商売の仕方を模索中。
無い知恵を振り絞って頑張りますっ!
ご意見、ご感想お待ちしております。