act.004
話を聞き終え、彼は一つ溜息をついた。
少女も話がようやく終えて一息入れようと白い椅子に座り一つ息を漏らし、彼に問いかけた。
「考えは変わらないな?」
「ああ、行こうじゃないか!その異世界に」
不安が無いと言えば嘘になる。
だがそれを覆い隠して希望が満ちていた。
元々面白い事が好きなのだ。
ましてや空想上だった魔法が扱えるようになるというと尚更。
「そう言えば名前を考えないとな・・・」
「ん?なんのじゃ?」
「キミのだよ」
「我の?」
「だってそうだろう?これからオレのパートナーになるんだ。名前が無いといざと言う時呼びにくくて仕方ないだろ?」
「まぁそうだが・・・良いのか、我で?」
「ああ、キミが良い・・・」
そう微笑みながら言った彼を見て少女は全身を真っ赤にさせて顔を伏せた。
「これがタラシと言う奴か・・・」
「何か言ったか?」
「なんでもない!!で、何にするのじゃ?」
少女がそう言うと彼は「そうだなぁ~」と考え込み思案に耽ったのであった。
「・・・アネモネ」
「あねもね?」
「そうアネモネだ!まぁ母親が好きな花の名前からだけどな」
「ふむ、まぁ良いだろう」
「ありがとう、アネモネ」
そう言われてアネモネは再び全身を真っ赤にさせたが、彼は気にする様子も無く立ち上がった。
「では行こうか、アネモネ?案内の方頼むな」
「ああ、任せとけ!」
そう言ってアネモネも彼を先導すべく立ち上がり白い壁にそっと手を置き、扉を呼び出し、開け放ちこう言ったのだった。
「ここから先がお主にとっては新しい世界じゃ。鬼が出るか蛇が出るかお主次第」
どっちもダメじゃんか・・・という言葉を彼はぐっと飲み込んだ。
「我も協力しよう!お主の選択が間違いでなかったという事を。そしてお主の未来が輝けるように!」
意気揚揚と語るアネモネを見て彼はこう付け加えた。
「それじゃ駄目だ」
「なに?」
アネモネの表情が見て解るほど落胆に染まったのを見て、彼は慌てて言葉を続けた。
「勘違いするな」
そう言いつつアネモネの頭に手を置いてさらにこう言った。
「オレだけじゃ駄目だ。アネモネも含めた俺たち・・・だろ?」
「・・・・・・」
不意にアネモネの瞳から涙が流れ落ちるのを見て、彼は何か自分が間違った事を言ったと思ったが、どうやらそれは杞憂だったらしい。
「バカモノめ・・・」
そう言ったアネモネの顔は満面の笑みが浮かび上がっていた。
「ふふ・・・」
そして二人は手を繋ぎ、扉をくぐる。
―――そう言えばお主の名前を聞いてなかったな?
―――もう知っているんじゃないのか?
新しいスタートを切った二人は眩い光に包まれ。
―――バカモノ!こう言う時はちゃんと名乗るものだろう?
―――そうだったな、ごめん!んじゃ改めて、オレは・・・・・・。
希望を抱き、異世界へと旅立った。
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