act.002
部屋のあちこちを調べ続ける事1時間と34分・・・。
腕につけてある時計をチラリと目を向け、一つ溜息を漏らした。
「なんなんだ・・・ここは・・・」
今はもう慣れたが、最初は白色との相乗効果で部屋自体が眩しく目がチカチカして仕方が無かった。が、部屋には蛍光灯などの電気装飾などは一切なく、何故こんなに明るいのかさえ理解が出来なかった。
「一体どこなんだよ!全く・・・」
そう呟くもの自体は一変せず、頭を抱えてベッドの端に座り込んだ。
「ただの嫌がらせなら早く終らせて欲しいな」
と純粋に思ったのであった。
それから数十分後、彼は白いベッドの上で寝転んでいた。
自分で入った記憶が無いから誰かがここに閉じ込めたのだろう。
そしてわざわざ自分をこんな部屋に閉じ込めるのだから、何か目的があって寝ている間に誘拐みたいな事をしたのだろう。
それらから導き出される答えは単純だ。
―――寝て待つしかない。
単純すぎるかもしれないが、それ以外に何が出来るだろう?
この部屋で異色とも言える緋い薔薇を一片ずつむしって「出れる、出れない、出れる・・・」なんて花占い紛いな事でもやるべきか?
それこそ無駄な行為以外なにものでも無い。
だから彼は待つことにした。
自分に降りかかった唐突な変化をもたらした者を。
「まっ・・・きっと専務達だと思うけどね・・・」
あの憎い自分の上司の顔を浮かべながら、また一つ溜息を漏らした。
そして彼はまた深い眠りについた・・・それは単純に日々の疲れが促したものだった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「そろそろ起きてくれないかな?」
「・・・」
「なぁ?起きてくれないか?」
肩を揺すられる感覚に目を覚まし、その主を見上げた。
「・・・ん?」
「ようやく目覚めたか・・・」
軽く目を開けて視線を向けると、まだ幼さが残る白い服に身を包む少女がこちらを覗き込んでいた。
「誰だ、キミは?」
一つあくびをしつつ時計に目をやると最後に時計をみてから約五時間も過ぎていた。
「・・・すまない、私に名は無い。与えられる身分でもないしな・・・」
少女の顔に影が射したが、それを気にしていたらキリが無いので彼は早速本題を切り出した。
「ふぅ~ん、まぁ良いや。色々と聞きたい事があるんだけど良いかな?」
「・・・ああ、だいたい質問の予想はつくが良いぞ?」
「とりあえず、ここはどこだ?」
そこから彼と少女は約一時間もの時間をかけて話し合った。
彼が抱える疑問などは全て少女が親切かつわかり易く答えてくれた為、好感が持てたのだった。
要約すると次の通りになる。
自分は既に死んだ身であり死亡原因は教えて貰えなかったが、死んだ者は例外無く皆この白の部屋に強制召還されるらしい。
そしてこの部屋で次の『生』への確認を取るらしい。
輪廻転生と言った方が良いだろうか?こういった形で前世があるという事が証明されるとは思わなかったが・・・。
もし次の生を希望しなかった場合、このまま存在が消滅し無へと還るらしい。
生を希望する場合、何種類かのプランが提出されそれに沿って新しい世界へと飛び立つ事となる。
だいたいこんな感じの話だった。
他にも色々と質問したが、主な話はこれにまとめられていた。
「さて、どうするかな・・・」
彼は悩んだ・・・生前が生前だけに頑張った分だけ報われる環境で育ちたいが、それは完全ランダム性という事なので、とても難しいという話だった。
運が良ければお金持ちの家に生まれ一生働かなくても良い楽な生活が出来るが、逆に最悪の場合は産まれる前に死に、直ぐにこの部屋に戻ってくるケースも最近増えているらしい。
「まぁあの世界じゃそれが日常茶飯事か・・・」とある意味納得してしまった部分もあった。
「「・・・」」
何分かの沈黙の後、最初に口を開いたのは少女の方だった。
「・・・もし答えが出なかった場合、最近我々の間で認められたプランがあるのだが・・・」
「それはなんだい?」
「『異世界』と言う物の存在はご存知か?」
異世界。
それは、彼にとって新しい人生の予感をハッキリと形付けたのだった。
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