徘徊
青く澄んだ空。
見上げるほど大きな入道雲。
木漏れ日の降る森の中を駆け周る。
わたしは夏がすき。
出会いひとつで、素敵な一日になるの。
今日も、またひとり。
同い歳くらいの女の子。
男の子はよく来たけど、女の子は珍しいかも。ここは虫がよく採れるから。
わたしは虫取りもすき。
でも、この子はそういう事はしなさそう。
「迷子?」
「ううん。引っ越してきたから、散策」
「へえ、どこから来たの?」
「東京。ここ、きれいだね」
「でしょ?もっといい場所教えたげる」
ついてきて。
手を取って走り出す。
あなたの手はあたたかいのね。
セミの鳴き声と、足音ひとつ。
わたし都会は嫌い、人が多いから。
疲れちゃうんだ、あなたもそうでしょ?
お気に入りの場所、果樹園の跡地を過ぎた先に開けた景色。ここから町を見下ろすの。
「あ。みて、あそこ」
女の子の指の先。小学校。
わたし学校はきらい。
だって楽しくないから。
「あそこに来月から通うんだって」
「そうなんだ」
「つぎいこ」
つまんないでしょ、学校の話なんて。
あなたもきっと、そう思ってるでしょ?
果樹園を出て、道なりにまっすぐ。
坂道を登った先、小さなお池。
澄んだ水。
泳いでるお魚、名前は知らない。
「つぎ、いこ」
「はやいよ」
あははは。
笑い声ふたつ。
みて、おっきな切り株。ふたりで座れるの。
みて、電波塔。もう使われてないんだって。
みて、おっきな木。ふたりで木陰、まだ余るね。
みて、みて、みて、みて。
「喉…かわいたかも」
「お水、あるよ」
「いこ、いこ」
「まっ───────」
ぐじぃょっ。
風の音。濁音ひとつ。
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【この人を探しています】
令和18年8月3日午後2時30分頃、自宅付近で、私の娘が行方不明になりました。
○名前:宮沢 彩月ちゃん (8)
○身長:127cmくらい やせ型
○黒髪 肩にかかるくらいの長さ
○白のワンピース
○赤色のスニーカー
携帯電話も鞄も持っておりません。
2029年10月25日現在まで、発見に至っておりません。些細な情報でも構いませんので、御協力お願いいたします。
どなたか存じませんが、私のたった一人の娘を返してください。どうか、お願いします。
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わたしは夏がすき。
今年も、またひとり。




