8話 魔法発動
俺が止血魔法を試していたときだった。
初めての魔法を使えた喜びに浸っていたが、
人間たちが近づいて来る感覚が分かった。
「何か来る」
「はいでちゅ。
人間が狩りをちてるでちゅね」
「ダンジョンの中に隠れるぞ」
様子を見ていると……。
スライムがこっちへ跳ねながら逃げて来ている。
「ちょっと止まれ!
こっちへ来るな!」
手をかざして待てのジェスチャーをするが、止まる気配がない。
「しかたない。
コノハ。
人間に見つからないように、隠れていろ」
「はいでちゅ」
スライムがダンジョンの中まで逃げ込んできた。
それを追うように、冒険者たちもダンジョンへ入ってくる。
「ぎゃあ!」(やあ!)
俺は人間だ。
人間の冒険者と話して、ここは見逃してもらおう。
俺はここで静かに暮らしたいんだ。
「ぎゃーーー!!!」
冒険者たちの悲鳴が聞こえる。
「ぎゃべ、ぎょげぎゃぎんげんぎゃ!」
(待て、俺は人間だ!)
手をかざし、スライムにしたようにジェスチャーで引き止めた。
「ありがとう。
聞き入れてくれたみたいで良かった」
冒険者たちは、驚いた姿のまま静止していた。
「俺はサンク。
よろしくな。
俺はここに住んでいる人間だ」
冒険者たちの顔が、みるみる青ざめていた。
<早くしないと、あいつら死ぬぞ>
「はあ? 何言ってるんだ。
まあいい……。
ここは、人間の俺に任せて、今日の所は多めに見てやってくれよ」
そう言って、俺は止まれと手をかざし、
そのまま「しっし」と追い払うジェスチャーをした。
<良かったな。
奴ら……口から泡を吹き、今にも死にそうじゃったぞ>
人間たちは我に返ったように、腰を抜かして後ずさりしている。
「ぎゃーーー!!!」
恐怖の叫びとともに、冒険者たちは逃げて行った。
「話が通じたみたいで良かった」
スライムはどうしたかな?
<やめろ!
スライムには近づくな!>
「何を怖がっているんだ?
スライムは最弱のモンスターだろ?
可愛いもんじゃないか」
すると、スライムが俺の顔をめがけて飛んで来た。
<スライムは、我の天敵じゃ!
死ぬぞ!>
「なに言ってんだよ。
俺が能力を持っていないから、気にしてくれているの……」
スライムが俺の顔に吸い付いた。
剝がそうにも水のような塊で掴めない。
苦しい。
息ができない。
死、死ぬ……。
意識を失い、俺はその場に倒れ込んだ。
「おうちゃま!
おうしゃま、しっかりしてくだちゃい!」
コノハの声が聞こえ、意識を取り戻した。
「死ぬかと思った」
<いや、実際に死んでいたがな……。
我の血を操る魔法で心臓を動か……>
「マジでヤバかった。
スライムはどうした?」
<またこの展開か……>
スライムが話しかけてくる。
「君の魔力を吸って、魔力の塊から生命体に進化できた。
ありがとう」
「ん?
スライムって、魔物じゃないの?」
おっとりとした話し方で、スライムが話しかけてきた。
「うん。
ただの魔力の塊。
思考も知能もない、ただの魔力の塊だね」
<そういうことか。
このスライム、サンクの魔力を吸って、
意識を持つ魔物に進化しおったわ>
「安心して。僕、たぶん悪いスライムじゃない。
……と思う。だから、よろしくね!」




