6話 引き継いだもの
すべての魔物たちが一斉にひれ伏し、
ダンジョンそのものが、
カンカイを王として迎え入れた。
――これが
魔王カンカイ誕生の物語である。
……
その話を聞いていたのは、サンク。
能力を持たないまま、
廃墟のダンジョンへ挑んだ男。
崖から落ち、体はボロボロだった。
そして……
この話を聞きながら、サンクは気を失った。
***
――サンクの視点――
数時間後。
俺は目を覚ました。
「……ごごばあお」(……ここは)
俺の体は糸のようなもので巻かれている。
「ばぶべぞぶびびべげばば……」
(まるでゾンビみてえだな……)
芋虫みたいに這いながら、水辺へ向かう。
水面に自分の顔が映っていた。
「……ばんばお、ぐげぎゃばがっだもごぎょ」
(……なんだよ、夢じゃなかったのかよ)
俺の顔も……
半分骸骨になっていた。
「ごげご……がんがぎどごがぎが」
(俺も……カンカイと同じか)
口も満足に開かず、
もごもごと言葉になっていなかった。
ふと気づくと、
小さな影が、ニョロっと現れた。
「おうちゃま」
小さな声。
「目を覚まされたのでちゅね」
そこにいたのは、
小さな木の妖精のような魔物。
頭から一本の毛が生えたように
一枚の葉っぱが揺れている。
木人だった。
「わたちの力では……
回復も……
ちょびっとだけ」
なんだこの魔物は!
小っちゃくて、妙に可愛らしい。
「あ、でも……
生きててよかったでちゅ」
廃墟のダンジョンだと思ったのに、
魔物が生息していたのか?
そのとき――
頭の中に声が響いた。
<我が魔力を与えた。
ダンジョンで産み落とされた魔物だ>
この声。
聞き覚えがある。
「……カンカイ!?
なんでお前の声が聞こえる!?」
<お前の中から話しかけておる>
「どういうことだ?
なんでお前の声が俺に聞こえる。
どこにいやがる?」
周りを見渡しても、どこにもいない。
「出てきやがれ!」
<サンクよ。落ち着け。
我はお前の……>
「あー!
もうどうでもいい!
何が何だか分からなくなった」
<話を聞け……>
「そうだ!
この姿のまま、街へは帰れない。
どうせなら、ここに住み着こう」
<もういい。
勝手にわしが話を続ける>
そこに、俺の体に糸を巻き付けてくる魔物がいた。
「この芋虫の魔物。
俺みたいだな。
よし、カブトと名付けよう」
<サンクよ。
お前に我の能力を与えた>
「マジか!?
俺も魔法が使えるようになったってことか?」
<そうじゃ。
ちゃんと聞いておったのか……>
「カブト。
良い名前だな」
<最弱にして最恐の……
回復魔法にして即死ま……>
「最弱だろうが何だろうが、
回復魔法だろ?
早く使いてー!」
俺は今、芋虫のように転がっている。
これを回復魔法で……。
「あ、そうか。
止血するだけの魔法だったか」
<違う!
最恐の……>
「まあいい。
このちっこい木人が回復してくれてるんだろ?
動けるようになったら試すさ」
<……サンク。
お前は人の話を……>
「お前が人?
笑えるな」
そうだ、ちっこい木人じゃ呼びにくいな。
「お前にも名前を付けてやる。
頭に生えているその葉っぱ、可愛いな。
コノハにしよう!」
<こいつはダメじゃ……
もう我は知らん……>
「コノハ。
よろしくな」
小さな木人は嬉しそうに頷いた。
「はいでちゅ!
おうちゃま!」




