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この醜女の身に美を帯びるなど、我が漢道には恥辱!醜女系女子ブス・グロリアの生き様

作者: よっちゃん
掲載日:2026/02/13

今北産業【婚約破棄の漢たち 壱】

TS公爵令嬢爆誕(エレクシア)

婚約破棄野郎撃沈

覇姫(はひ)と名乗り旅立つ

 婚約破棄の漢たち――其ノ弐


「――おいブス、貴様との婚約を破棄する。父上にも許可をいただいている。理由は言わずとも分かっているだろう?

 お前が……あまりにも醜いからだ!」


「え?そ、そんな……殿下……急になぜ……」


「急になぜだと?

 気色の悪い声で戯言(ざれごと)を抜かすな!

 その汚貌(おぼう)で被害者面をしやがって!

 俺はな、以前から貴様の醜相(しゅうそう)に吐き気を(もよお)していたのだ。

 侯爵家の財目当てで我慢していただけの話よ。

 だが、もはや不要となった。

 俺は真実の愛に目覚めたのだ!

 この外見も魂も清冽(せいれつ)なる、聖女の転生と(うた)われる彼女こそ、我が伴侶だ!」



「あんたみたいなゴブリン女……あ、それはゴブリンに失礼ね。

 とにかく、腐臭(ふしゅう)(まと)ったオークとナメクジを()り合わせ、泥水で煮詰めた残滓(ざんし)のような存在は、早く私のダーリンの前から消滅してね♡」



「…………」



「そういう事だ。もう一度改めて言うぞ。


 ブスよ、貴様との婚約を、今ここで破棄「うるせえええッ!!

 この瘴気口しょうきこうモルボル王子がァ!!

 そのヘドロじみた発酵臭で婚約破棄だと!?

 笑わせるなよ、この腐臭王(ふしゅうおう)!」



「な、なんだと……!?」



醜女(しこめ)だぁ?

 上等じゃねえか。モッビーのくせに!

 てめえの口臭は三日三晩放置された屍肉(しにく)より酷えんだよ!!

 近寄るたびに視界が(かす)んでたわ!」



「も、もっびー?き、きさま、その態度はなんだ!?ブスのくせに!ブスごときが、この俺にそんな口をきいていいと思っているのか!」



醜女(ぶす)醜女うるせえ!!破棄するなら勝手にしろよ!!

 だが、なぜわざわざ学園の卒業パーティーで晒し者にするんだ!?てめえには人の心ってもんがないのか?

 たかが顔面偏差値だけが取り柄の腐臭(ふしゅう)王太子(やろう)が調子に乗るんじゃねえ!!」



「き、きさま……」



「お前らさ、醜女(ぶす)には何をしてもいいって思ってるだろ!?

 醜女(しこめ)にも一応人権はあるんだよ!


 わかったよ、いいだろう。その婚約破棄、受けてやろうじゃねえか!

 顔だけの腐臭モルボル王子と、全身整形改造済みのサイボーグ聖女だなんて、お似合いのカップルじゃねえか!ガハハハハ」



「ブス!貴様、美しい聖女である彼女への侮辱は許さんぞ!取り消せ、さもなくば、今ここでたたっ斬ってやるぞ!」



「はっ!笑止!

 その女の“美”が作り物だと見抜けぬとは、この場の連中の眼は節穴か!

 いいだろう、モルボルよ、教えてやる。

 その女が貴様の瘴気(しょうき)に耐えられているのはな――

 嗅覚を捨て去り、魔術で己の鼻腔(びこう)を封じているからだ!

 その清冽(せいれつ)なる鼻梁(びりょう)はな、

 あれは自然の造形ではない。

 魔導彫塑(ちょうそ)によって削り出された(いつわ)りの(みね)よ!

 それでも足りぬからと、常に清浄魔法を(まと)っているのが分からぬのか!」



「な、何を根拠に――!

 こ、この、ナメクジ女が!私の美貌は生まれ持ったものよ!」



「ガハハハ!

 聖女サイボーグよ!

 貴様が聖なる力に目覚めて最初に願ったのは何だ!?

 “世界を救う力”か?違うな!

 乳房(にゅうぼう)の増幅と、鼻梁(びりょう)の再構築だろうが!!


 なあ、そうだろう!?出てこいよゴミクズ精霊王!」



「――我を呼んだか、(しゅう)(もの)よ」



「精霊王!てめえがこの女を美女に作り変えたんだろう!?

 オレは忘れてねえぞ……!

 昔、オレがまだ餓鬼だった頃、一度オレの前にも現れやがったな!?

 その時どうした!?

 オレの顔を見た瞬間――悲鳴をあげて、光の裂け目に逃げ帰ったよなァ!!」



「…………」



「なぜだ?

 オレを美少女に魔改造して、てめえの愛し子にすりゃあよかったじゃねえか!

 なぜそうしなかった!?

 答えろ――小娘嗜好(ロリコン)精霊王!!」



「――うむ、覚えておる

 久しいな、醜き者よ。

 そして……やはり我の目に狂いはなかった」



「くっ……きさま」



「まさか、ここまで醜く育つとはな。

 長命なる我でさえ、貴様ほどの醜相(しゅうそう)は見たことがない。

 全能とて万能ではない。

 我にも出来ることと、出来ぬことがある。

 貴様のその醜さだけは……世界の(ことわり)から外れておった」



「…………」



「許せ、醜きブスよ。

 我が貴様を救わなかったがゆえに、

 貴様は外見だけでなく――

 心まで醜獣(モンスター)へと育ってしまったか」



「……オレはな、なあ、王太子よ

 オレはお前との婚約が決まった日――

 嬉しすぎて、森中を裸足で駆け回ったんだ」


「…………」


「王家が侯爵家の金目当てだってことくらい、餓鬼のオレにも分かってたさ。

 それでもな。

 それでも――

 オレなんかを“選んでくれた”って思っちまったんだよ」


「…………」


「そこらに咲く花に話しかけたりしてよ、

 “オレ、王子様と婚約したんだぞ!”って。

 そしたらさ、花のやろう、見事に逝き(枯れ)やがった。


 川を泳ぐ魚にも言った。

 “こんな醜女のオレが、選ばれたんだぞ!”ってよ。

 そしたら……魚が動かなくなって浮かんで来やがった。

 あの死んだ魚の目、あの(まなこ)がいつまでも俺を睨みつけていやがる。

 くそっ、ちくしょう……」



「……ブスよ、貴様の醜さは、呪われているのだ」



「ふふふ、そうさ。オレは幼い頃からずっと醜女、化け物って言われ続けて来た。親兄弟はむろん、屋敷のメイド達にすらだ。

 侯爵家の令嬢が、着替えはもちろん、己の(ふん)の始末すら自分でやってきたんだ。笑えるだろ?」



「……ブスよ、俺達が9つの頃、王家主催の舞踏会で、俺の口が臭えと笑った餓鬼共がいたな。

 その後、そいつらは涙ながらに俺に謝罪してきたが、貴様が何かしたのか?」



「ふん、知れたことよ。腐臭がしようが、オレのモルボルの魅力に気付かぬ未熟者共に、わからせてやっただけだ」


「……」


「…………」


「……おい、その醜い(まなこ)を閉じろ、ブス」



「……はあ?いきなりなんだ?」



「早く醜眼(しゅうがん)を閉じやがれ!この醜女(しゅうじょ)が!」



「チッ、なんだってんだ、いきなりよ。ふん、オレを斬るつもりか?好きにしろ……」



「っ……ブスよ。目を閉じると、なおさら醜貌(しゅうぼう)が際立つ。恐るべき面構(つらがま)えだ」



「お前の激臭も大概だがな……鼻が焼け落ちそうだ。意識が飛びそうだぞ、モルボル」



「愛しい聖女よ。これに深い意味は無い。過ちを一度だけ許せ。これは長年婚約者だった醜女(とも)に贈る手向けの花」



「わかっているわ、モルボル殿下」



「その、醜眼を……開けるなよ」


「……」


「…………」


「……ちゅ……」

「……っ……ん……」

「……ぐちゅ……」

「……ん、……んん……」

「……ぬちゃ……」

「……っ、……」

「……くちゃ……」



「――ぶぇっ……げほっ!おえええっ!!」

「うっ……おぇぇ……!!おぼぉっ!」

「くせえ……!胃が……胃が苦しい……!」

「げええっ……!なんだその醜唇(しゅうしん)は……!ぬめっていやがる……おええっ!」

「こっちこそ口の中がヘドロ溜めだ!おえぇっ!」

「ぐっ……!聖女……サイボーグよ、浄化を……!うぷっ……!死ぬ……!」



「……む!?」

「――な、なんだ!?」

醜女(しこめ)から……白煙が……立ち昇っている!?」

「まさか……こ、これは……!」

「む……この光……呪いが解けるのか!?」

「ま、眩しい……っ!」

「……おい、見ろ!」

「髪の色が……変わっていく……!」

「……ブスの髪が……」

「銀……いや――白銀だ……!」

「まさか……真の姿が現れるのか……!?」



「……」



「…………」



「……って、顔、同じじゃねえか!!

 髪の色だけ変わって、顔も身体もそのままだぞ!」


「ギャハハハ!むしろ前より浮いてるんじゃない?その銀髪、致命的に似合ってないわよ!」


「はあ?オレの髪が……?」


「ブハハハハ!誰か鏡を寄越せ!」


「……ほんとだ。白銀だ。妙に神々しい色しやがって」


「おいブス!普通この流れは、呪いが解けて美少女降臨とかじゃねえのかよ!」


「うむ。我もそう思ったが……まさかキスで呪いが薄れ、さらに醜貌(しゅうぼう)が際立つとは」


「ガハハハ!うるせえ!!

 オレがキス一発で美少女になれるなら、とっくにやってるわ!!


 オレだってな……なりたいわ、そんなもん。

 美しく……なりてえよ!




 って、嘘でぇーす!!

 オレは美しくなんぞなりたくねえ!

 それだけは……それだけは死んでも言えぬ!


 オレは醜女(しゅうじょ)のブス――

 醜女(しこめ)の侯爵令嬢、ブス・グロリアだ!!


 この身に美を()びるなど、オレにとっては――恥辱(ちじょく)



「醜いブスよ、お前に何か呪いっぽいのがかけられていたのは事実だ。そしてそれは男のキスによって解けたのも事実。

 ただ、呪いは全然関係なく、顔面は元来それだったのだな。残念だが」



「違えよ、違うんだ、精霊王よ」



「……何?」



「オレは醜女(しこめ)だ。だが、それがオレなんだ」


「…………」


「なあ、王太子、いや、モルボル」


「…………」


「もしここで、オレが美人になってたらさ」


「…………」


「それまでのオレは、全部否定されることになっちまう」


「…………」


「醜女って言われ続けた日も、裸足で森を突っ走った日も、

 (ふん)の始末を一人でしてきた日も」


「…………」


「全部、それはオレなんだ」


「…………」


「呪いが解けて美しくなるだと?

 なんだその、安っぽいお涙頂戴のストーリーは!!

 そんなの、このブス・グロリアは、こっちから願い下げさ!」


「…………」


「オレから醜さを取っちまったら、ただの小娘になっちまう」




「オレは……醜女のブス・グロリア。

 それでいいんだ……そうだろう?」



「……ああ、そうだな」



「醜女のまま立って、醜女のまま吠えて、醜女のまま足掻いて、醜女のまま逝ってやる!」



「モルボル、オレが唯一愛した男。

 口や体が臭えのなんて、お前を語る上で些末(さまつ)

 オレにとっては、お前がこの世で最高の男だった。


 そして聖女サイボーグよ、お前は美しい。

 入れ乳(しりこん)とか、そんな些事(さじ)の全ては、お前の美の前に(かす)むだろう。

 お前は今、誰よりも美しいのだから」


「…………」


「ふっ……侯爵家令嬢、醜女(しこめ)のブス・グロリア。

 同じ男を愛した恋敵(とも)

 貴様の()(ざま)、この聖女サイボーグが見届けてやろう。

 無様を晒すなよ?」



「……ああ、俺は汚臭の王太子モルボル。

 口と体から汚物みてえな臭いのする、汚臭王となり、この国を、より繁栄させてみせるさ」



「ふふ、救いようのねえ、愛すべき馬鹿(あほう)どもだ!


 王太子モルボル、聖女サイボーグ!

 残る余生、ふたり幸せに暮らせい!


 じゃあな、あばよ!」



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「……ブスお嬢様」


「なんだメイドよ?」


「遠い、海の向こうの異国、覇道を往く女がおります」


「ほう……」


「名は……公爵令嬢、覇姫(はき)エレクシア」


「……オレにはわかる。

 只者では無い……なんと言う、名前の圧!」


「誰よりも美しく、誰よりも苛烈(かれつ)

 その歩みは血を裂き、視線は魂を穿(うが)つ――まさに覇姫」



「……今のオレでは、その女の、足元にも及ばぬだろうな」


「覇姫エレクシア、覇道を往く姫か……ふふ、面白い。

 ならば……」



「このオレは……醜姫(しゅうき)となろう!」



矮躯(わいく)肥躯(ひく)痘面(とうめん)乱歯(らんし)歪姿(わいし)

 醜声(しゅうせい)腐気(ふき)悪臭(あくしゅう)嘲笑(ちょうしょう)――」


「人が()み、

 人が目を()らし、

 人が石を投げるもの――」


「――ならば、オレはその全てを……

 この醜の身に、(まと)い尽くしてやる!」



「オレによこせ、この世の全ての(しゅう)を!

 そんなもの、オレが全て喰ろうてやるわ!」



「オレは――

 醜姫ブス・グロリア」



「覇姫エレクシアよ、

 互いに覇道を往くのなら、

 いつか必ず、相見(あいまみ)えることになるだろう」



「その時――


 ()(まと)覇姫(はき)か、それとも、(しゅう)(まと)醜姫(しゅうき)か」



「どちらがこの天地を喰らい、覇者となるか。

 決めてやろうじゃねえか」




「オレの墓標に名はいらねえ、


 死すならば――


 そうさ、この世の美を踏み砕き、


 世界中の劣等(れっとう)も、(しゅう)も、(あざけ)りも、


 すべてを喰らい尽くした、その果てに!」




 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 チャッ!チャッ!チャララッラ――!

  チャッ!チャッ! チャッ!


  チャッ チャッ チャララッラ……

  チャッ チャッ チャッ……




「ママ、見て!すっごい醜女(しこめ)が歩いてるよ!」

「しっ!見ちゃいけま――


 ……いや、違う

 (わらべ)よ、目を逸らすな


 あれが――

 哀しみを背負い、世の醜を纏い、天に挑まんとする(おんな)



「その()(ざま)、  しかとその(まなこ)に焼き付けなさい!」




 ――完




 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「美の覇者に、人は(ひざまず)き、

 醜の覇者に、人は(ふる)(おこ)つ」


 ――成楼(なろう)書房『覇道思想史概論』より



挿絵(By みてみん)

短編シリーズ【婚約破棄の漢たち】

其ノ壱 《 覇姫エレクシア 》 投稿済。

其ノ弐 《 醜姫ブス・グロリア 》 投稿済。

其ノ参 《 覇姫 vs 醜姫 》投稿済。

其ノ四 《 愛羅武勇をよこせ 》火曜日12:00頃。


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