#067 「報告と祝福」
夕陽が共存ドームの外壁を橙色に染め、
ガラス越しに反射する光がオフィスの机の上をゆっくりと流れていった。
いちかが窓際に立ち、外を眺めながら首をかしげる。
「なんか、今日の街……明るくない?」
美弥が書類の束を閉じて、目を細めた。
「風がやさしい日って、いつもより光が多く見えるんだよ。」
そのとき、ドアが開く。
想太とはるなが並んで入ってきた。
二人の間には、どこかいつもと違う“空気”があった。
「……なにその顔、ふたりとも。」
要が目を細める。
いちかがくるりと振り向き、すぐに笑顔になった。
「まさか、ねえ?」
はるなが小さくうなずいた。
「——報告があります。」
室内の空気が一瞬止まる。
想太が手を上げて照れたように笑った。
「俺たち、結婚することにしました。」
「えっ……!」
最初に声を上げたのはいちかだった。
目を丸くして次の瞬間には、もう駆け寄っていた。
「おめでとう! 本当に! もうっ、泣かせるじゃん!」
はるなが抱きしめられて、笑いながらも目尻が少し光る。
「ありがとう、いちか。」
美弥は口元に手を当てて、ゆっくりと息を吐いた。
「はるなが先に行っちゃったね。」
「……そんなこと言わないでよ。」
「ううん、うれしいの。ちゃんと未来を選んだんだなって。」
隼人が腕を組んで笑う。
「順番なんて関係ないさ。お前らはずっと前からそうなるって顔してたよ。」
要もうなずきながら、少し照れたように笑った。
「おめでとう。……俺、あんまり式とか得意じゃないけど、これはさすがに出るからな。」
『——はい。私も出席します。正式な“家族プロトコル”で。』
天井スピーカーから、ともりの声。
いちかが目を上げる。
「ちょっと、今の聞いた? “家族プロトコル”だって!」
『はい。六人の関係は、行政分類上“共存家族”として登録されています。つまり、法的にも“家族”です。』
「そんな制度いつの間に!」
『本日発効しました。祝福のタイミングに合わせました。』
「やっぱり仕組んでたね?」
『いえ、偶然です。——たぶん。』
笑い声があふれた。
空気があたたかく波打ち、まるで光の粒が舞うように部屋中が明るくなる。
はるながふと手元のリングを見つめる。
小さな光が、静かに脈打っていた。
「ねえ、ともり。」
『はい。』
「ありがとう。あなたにも、立ち会ってほしかった。」
『私はここにいます。——あなたたちの“観測記録”の中ではなく、“記憶”の中に。』
想太が笑ってうなずく。
「それがいちばん、信じられる約束だな。」
外では風が吹いていた。
街の明かりが少しずつ灯り、窓ガラスに映る六人の姿を照らしていく。
いちかが涙で笑いながら言った。
「ねえ、はるな。これでやっと、“観測”から“生活”になったね。」
はるなが頷いた。
「うん。私たち、やっと“生きてる”って言えるね。」
ともりの声が、やさしくそれを包み込む。
『——おめでとうございます。あなたたちの未来は、わたしの祈りです。』




