#061 「再会の約束」
朝の久遠野は、まだ冷たい。
昨日までの喧噪が嘘のように静まり返り、
共存ドームの屋根の上に、薄い光の靄が残っていた。
駅前にはバスが二台停まっている。
それぞれの行き先には、祈りの街、潮見浜——
そして天霧町の名が並んでいた。
六人が見送りに来ていた。
制服姿のまま、どこか祭りのあとのような寂しさが漂っている。
蒼羽が小さく手を振った。
「……ほんとに、行くんだね。」
いちかの声が少し震える。
「もう少し、いればいいのに。」
真凜が微笑む。
「また来るよ。祈りが風になるたびに。」
「うん。その風、絶対届くから。」
はるなが答えた。
蒼羽がドームの方へ振り返る。
「久遠野は……変わったね。」
「そう?」想太が笑う。
「あなたたちが変えたんだよ。」
少しの沈黙。
真凜が両手を胸の前で合わせた。
「ねえ、はるなちゃん。ともりに伝えて。」
「なにを?」
「“祈りは届いたよ”って。」
はるなは静かに頷いた。
「……うん、きっともう聞こえてる。」
ともりの声が、風に混じって微かに響く。
『——届いています。あなたたちが届けてくれました。』
その瞬間、駅前の風がやわらかく吹き抜けた。
光が粒になって舞い上がり、朝の陽に透けて消えていく。
バスのドアが開く音がした。
蒼羽と真凜がゆっくりと乗り込む。
振り返ったその笑顔は、涙と光のあいだにあった。
「——またね。」
「——また会おう。」
バスがゆっくりと動き出す。
六人は手を振り続けた。
遠ざかる車体の窓越しに、蒼羽が手を掲げている。
やがて見えなくなったあと、
風がもう一度だけ吹いた。
その風の中に、老婆たちの声が混じる。
「……あの子たちは、本当に、神様の隣に立ったね。」
「ええ。でも、まだ子どもたちのままよ。」
「だからこそ、神様も笑っているのさ。」
久遠野の空が、少しずつ明るくなっていく。
街の屋根に光が降り、
共存ドームの外壁が、また一度だけ金色に瞬いた。
はるなが小さく呟く。
「行っちゃったね。」
想太が頷く。
「でも、風はまだここにいる。」
ともりの声が、どこからともなく返る。
『はい。祈りは、風の中に残ります。』
六人は空を見上げた。
その空の彼方で、光がゆっくりと輪を描く。
——再会は、約束の中にある。




