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#039 「封じるべき真実」

夜の灯ヶ峰学園は、音を吸い込んでいた。

校舎の明かりはすべて落とされ、第二講義室だけに小さなランプが灯る。

机を円形に並べ、六人が座っていた。


はるなと想太。

美弥といちか。

要と隼人。

窓の外では風が木々を揺らし、時計の針が遠くで回る。


机の中央には、想太が持ち込んだ共鳴記録端末。

レゾネーターの光の記録が静かに眠っている。


「——これが、あの白の中で見たもの。」

想太が低く告げる。

ランプの明かりが彼の頬を照らす。

はるなは隣で黙って見守っていた。


要が身を乗り出す。

「なら、これを発表すればいい。AI部のフォーラムでも、学園の委員会でも。

 “世界の構造”を知ったんだ。隠す意味なんてない。」


美弥が冷ややかに返す。

「信じてもらえない。それどころか、あなたたちの精神の異常だと判断されるだけよ。」


「でも俺たちは見たんだ!」

想太の声が強くなる。

「神様ともりがいた。世界は観測でできてる。それを隠すのは、嘘だろ!」


「嘘じゃない。」

はるなの声は静かだった。

「“言葉にしない”ことも、真実の一つ。——観測を壊さないための選択だよ。」


要が拳を握る。

「黙ってたら、何も変わらない。」

隼人がその手に視線を落とす。

「変えることが“正しい”とは限らない。」


いちかが小さく震えながら口を開く。

「……でも、怖いよ。何も言わないまま、世界がまたおかしくなったらどうするの?」


美弥が妹の肩に手を置く。

「いちか。言葉ってね、形を与える行為なの。私たちが“説明”した瞬間、世界はもう別の形になる。——観測の暴力、って言えば分かる?」


想太が苦く唇を噛む。

「そんな……俺たちはただ、誰かに伝えたかっただけで……」


「想太。」

はるながそっと彼の手に触れた。

「伝えることと、押しつけることは違う。——“光はある”って、それだけでいい。」


部屋に沈黙が落ちる。

ランプの明かりがゆらぎ、空気の粒が漂う。

誰も口を開かない。


その沈黙の中、隼人がぽつりと呟いた。

「……沈黙も、観測なんだな。」


はるなが微笑む。

「うん。呼吸を合わせる観測。」


要が深く息を吐く。

「……わかったよ。公表はやめよう。でも、忘れない。」


美弥が頷く。

「それでいい。私たちの中で見続けよう。」


いちかが手を合わせる。

「光が、ここにあるって。」


はるなが端末のスイッチを切る。

光が消え、部屋が闇に沈む。

誰も言葉を発さず、ただ同じリズムで呼吸する。


——六人の観測が、ひとつに溶けていく。


はるなは心の中でそっと呟いた。

言葉を封じても、光はそこにある。

窓の外。夜風が止み、月が雲間から顔を出す。

その光が、机の上の沈黙を照らしていた。

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