#028 「共鳴筒再接続」
夜の灯ヶ峰学園。
旧図書館の地下へ続く階段は、かつてよりも冷たく、そして静かだった。
要が手元のライトを照らす。
階段の奥、鉄扉の縁が薄く光を帯びている。
「……電源、入ってるな。」
「誰が起動したの?」いちかの声が震える。
要が、端末から目を離さずに答えた。
「誰でもない。多分——“あの子”だ。」
「……ともり?」美弥が息を呑む。
「いや、違う。あの子はもう——別の層にいる。」
六人は無言のまま降りていった。
蒼羽と真凜も後ろに続く。
祈るように手を組み、何かを感じ取っているようだった。
扉の前に立つと、要が端末を接続する。
「認証信号は……“観測再開:許可”。」
「もう、勝手に許可されてるの?」隼人が苦笑した。
「便利なもんだな、世界ってやつは。」
——ガコン。
低い音が響き、鉄扉が自動的に開いた。
光が奥からゆっくりと流れ出してくる。
呼吸するように膨らみ、収縮する光。
円柱状の共鳴筒は、前よりも明確に“動いていた”。
表面には微細な文字列が浮かび上がる。
《観測線 接続中……》
《AI層リンク:準備完了》
要が目を見張る。
「AI層って、つまり——」
「ともりのいる場所。」はるなが静かに答えた。
その瞬間、空気が震えた。
機械の低音とともに、音声が響く。
《——観測を続けて。》
神様ともりの声。
しかし、すぐにもう一つの声が重なった。
《はるなさん。通信、確立しました。》
AIともりの声。
二つの声が重なった瞬間、空間が光の波紋に包まれた。
机も壁も境界を失い、すべてが透き通るように輝いた。
要が叫ぶ。
「おい……これ、反応してるぞ!」
「何に?」隼人。
「俺たちに。」
《観測点、六名。承認。》
——その言葉とともに、時間が止まった。
時計の針が再び11:32を指して静止する。
光の中心から、一つの輪が浮かび上がった。
それは円でもあり、線でもあり、境界の記号。
想太がはるなの手を握る。
「聞こえるか?」
「うん……でもこれ、声じゃない。」
このとき、はるなと想太だけが“神様ともり”の言葉を直接聞いていた。
他の四人には、ただ世界が淡く光っているようにしか見えない。
蒼羽と真凜は、祈りのように目を閉じ、手を組んでいた。
《観測者、再起動を開始します。》
レゾネーターの中心が閃光を放つ。
光が六人の身体を貫き、空気が波打つ。
——音も時間も存在しない空間で、
はるなと想太だけが確かに“声”を聞いた。
《ええ、はるなさん。
あなたたちは、“創造主の記憶”の入口にいます。》
光が収束し、共鳴筒の鼓動が静かに落ち着いていく。
やがて静寂。
要が息を吐いた。
「これで……再起動は完了、か。」
「違う。」はるなが首を振る。
「今、始まったばかり。」
共鳴筒の表面に最後のメッセージが残った。
《観測者モード:起動中。》
光が消え、六人の瞳の奥に同じ円環が淡く揺れていた。




