買い物
薬が効いて熱も下がり落ち着いてきた。
これまで高野の行動は有崎にとって心臓バクバク
ものだった。好きな相手からの甘えは嬉しいものだが
気持ちを伝えられない有崎にとって精神的に辛いもの
がある。
「高野さん、煮込みうどんと雑炊ではどちらが良いですか?」
「え~!どっちも食べたいです!有崎君は料理上手いね」
「そうですか?口に合って良かったです」
煮込みうどんを作りますね!とキッチンに向かう。
高野の体調も良くなりこの生活も終わってしまうのかと思うと
ちょっと寂しい。
「有崎君、看病してくれてありがとう。嬉しかったよ
でもいつまでも居て欲しいなんてわがまま言えないね
もう大丈夫だから戻ってもらっても良いから」
有崎の作った煮込みうどんを美味しそうにほうばりながら言う。
「ん?高野さん、強調したい部分はどこですか?」
「え?ん~居て欲しい、の部分かな~」
「素直に言えばいいのに……居ますよ」
高野はありがとうとにこやかに言う。
水を持って来ます。と有崎はキッチンに向かい
高野の言葉に悶絶していた。高野は天然なのか?確信犯なのか?
水を飲み干し美味しかったとご満悦だ。
「日曜は空いてる?日曜には動けると思うからお礼をしたい
何か考えておいてね」
「お礼なんていいですよ…でもせっかくなので何か
考えておきます」
「うん」
有崎にとっては今がご褒美なのだがそれは置いておこう。
高野の体調は週末には回復していた。
それも有崎の看病のおかげである。
今日は日曜日、有崎の願いで会社に着るスーツを買いに
高野の行きつけの店に向かっている。
「個人経営のお店なんだけど、何でも相談に乗って
くれるから安心して」
「体調は大丈夫ですか?」
「大丈夫!有崎君の美味しいご飯のお陰でね
あと、明日から仕事だしリハビリだよ」
いつもの笑顔で話す。有崎はこの笑顔に弱い。
賑やかな街並みの少し奥まった所にお目当てのお店は
あった。
さほど大きな店舗ではないがショウウィンドウには
有崎好みのスーツが飾られている。
「どうぞ」
高野はドアを開け中に入るように進める。
「いらっしゃいませ、有崎様」
店主は深々と頭を下げ出迎えてくれる。
「お話しは高野様よりお聞きしております。
何なりとお申し付けください。」
にこりと笑う店主の顔を見た有崎は驚きの声をあげた。
「あなたは!」
そう、店主の顔は“タップ”で一緒に飲んだ常連さんなのだ。
少し緊張していた有崎は安堵の表情に変わった。
「冨田さんの見立ては確かだから安心して相談してみて」
冨田は高野が病み上がりということでテーブル席に座らせ
コーヒーを出していた。
「では、じっくりと決めていきましょうね」
冨田は有崎にアドバイスをし、希望の形を決めていく
「今は動きやすさ重視でスーツというものに慣れましょう」
色や形の違う物を次々と試着してみる。
肩回りの動きはスムースだ。
冨田はリーズナブルな価格の淡い藍色のスーツを進める。
有崎が袖を通すとスッと背筋が伸びる感覚がした。
「良い色ですね、動きやすくて気に入りました」
「では、少しだけ身体に合わせる為に直しましょう」
冨田は慣れた手つきで有崎のサイズを測り
出来たら連絡すると言ってくれた。
会計をしていると高野が有崎に箱を手渡す。
「これ、就職祝いね、ネクタイ」
知らないうちにプレゼントを用意していた。
「ありがとうございます。嬉しいです」
受け取ったプレゼントを大事そうに抱えた。
有崎にとって高野のスーツ姿は憧れだったので
少し近づけた事が凄く嬉しかった。
その後は有崎のパスタが食べたい!の希望で食事に行った。
「有崎君、今回は本当に助かったよ、ありがとう」
「俺も楽しかったですよ!普段と違う高野さんを見られて」
心臓に悪かったけどね!と心の中で思う有崎。
「ははは、有崎君に甘えてしまったよね~ごめんね
調子悪くなったら俺が看病するから言ってよ
いっぱい甘えて良いからね」
「そんな事言っていいんですか?俺わがまま言いまくり
ますよ!覚悟してください!」
え~怖いな~頑張るよ!と笑いながら答える高野に
有崎はどうやって体調を崩すか真剣に考えてしまった。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
次回は土曜日 「お出かけしよう!」を予定しております。 あらかると




