お持ち帰り?
「ふぅ~」
高野は寝てしまった有崎をベットに寝かせて
ソファーに座り一息ついた。
抱えてベットに寝かせる時に寝ぼけたのか
有崎は高野に抱きつき中々離してくれなかった。
綺麗な寝顔に見とれてしまう。
こんな風に抱きしめられるのはいつぶりだろうか…
有崎の体温が伝わってくる。
このまま一緒に寝てしまおうか…
それはなんかまずい気がするので眠さを堪えた。
高野はそっと頭を撫でる。
「君の”想い人”は素敵な人なんだろうな…」
再会した時の会話が思い出される。
有崎の髪をさわりながら呟く。程なくして有崎の腕から
解放された高野は布団を掛けお休みと部屋を出たが
有崎に抱きしめられた感触がまだ身体に残っている。
ふわっとした感覚が高野を包みこみ幸せな気持ちになった。
ふっと微笑みちょっと飲みすぎたかなと
自分のその感覚に若干戸惑ってしまっていたが、我に返り
「これが女子だったら問題だな、お持ち帰りって
こうなるのか~、ん?男でもお持ち帰りになるのか?
いや、何も無いし違うよな…」
一人で焦っている高野だったが流石に疲れが出て
ソファーに横になって寝てしまった。
有崎のお陰で今日の疲れは心地よい疲れに変わっていた。
有崎は夢を見た。昔の夢を。
有崎には3つ下の妹がいる。
小さい頃はお”兄ちゃん”といつも後ろを付いて来ていた
可愛い自慢の妹だ。
「優しくてカッコイイ自慢のお兄ちゃん」
と冬真を慕ってくれ周りからも羨ましがられる
ほど兄妹の仲は良かった。
冬真も自慢のお兄ちゃんになれる為に努力していた。
しかし、妹が中学生になり少しずつ態度が変わって
冬真に冷たい態度を取ることが増えたのだ。
ある日、妹が酷く落ち込んでいる日に
「優しくてカッコイイ…完璧すぎてありえない…
私は…あんたとは違うのに…ほっといて」
と冷たい目で言われた言葉が心にトゲを刺した。
妹を悩ませている原因は自分なのか?…
どうしたらよいのか自信を失い妹から逃げた。
ただただ悲しかった。
自分の大切な人からの”拒絶”は辛い思い出となり心に
深く残ってしまった。
後から分かった事だが完璧な兄と比較され妹は
相当辛い思いをしていたらしかった。
涙が頬を伝わる感覚で目を覚ました。
楽しい事があった後によく見る夢。
自分は楽しい事は味わうなとの戒めなのか…
胸が締め付けられる。
ゆっくりと覚醒した有崎は目を開けるといつもと
違う天井に驚いき昨夜の記憶をたどる。
ショットバーで高野さんと楽しく飲んで…飲んで…
「ここは…もしや…」
高野さんの家!!!の…ベット!!!!!!!!!
有崎は飛び起きた…が昨日は少々飲みすぎたらしい
頭が痛い。頭を抱えてそっとベットに横になり布団に
潜り込むとほのかに高野の香りが鼻をくすぐる。
「やっぱり俺、高野さんが好きなんだな…」
気になるだけではなく、憧れでもなく“好き”だ。
この状況が嬉しくて顔がにやついてしまう。
少し高野との距離が近くなって嬉しいが…
この思いが高野に迷惑を掛けてしまうのではないか
そして大切に想う人から拒否されるのが怖い。
だが、今だけはこの気持ちに素直になりたい。
有崎は布団を抱きしめうずくまる。
そして高野の香りに包まれてまた眠りに落ちた。
次に目を覚ました時には昼を回っていてまずいと思った時、
隣の部屋から物音が聞こえている。
慌てて起き上がる有崎の頭痛は治まっていた。
「お、おはようございます…」
扉を開けると高野がキッチンに立っている。
シャワーを浴びたのだろう髪は濡れていて
無造作に湿っている髪がいつもと違い可愛い気がして
有崎はちょっとときめいてしまった。
「ああ、おはよう。大丈夫?」
「すみません、ご迷惑をお掛けして」
「いや、それはこっちだよ。ごめんね早く気付いて
あげられたら良かったのに…今日の予定とか平気だった?」
心配そうに高野が見つめる。
「大丈夫です。」
高野は良かったとホッとして持っている水を手渡し
ソファーに座るよう促した。
「何か食べられる?と言っても簡単な物だけどね」
と卵と食パンを有崎に見せ笑う。
はい、とにこやかに返事をすると高野は承知しました
と笑顔で返し、先にシャワーでも…と言いかけた時
ピンポーン!と来客の知らせが鳴る。
「誰だ?」
高野はインターホンに出ると
「おう、どした?ああ、ありがとう、開けるよ」
インターホンを切り弟が来た!と玄関に向かった。
ガチャリと鍵の開く音がしてから声が聞こえる。
「まいっちゃうよ~兄貴は忙しいからって俺の所に荷物
まとめて送らなくても良くない?」
何やら文句を言いながら荷物を抱えて弟君が登場した。
「あ!来客中だった?ごめん兄貴何も言わないから」
荷物を置いて立ち去ろうとした弟君に
「あ!違うんです。昨日お兄さんにお世話になってしまって
有崎冬真と言います。来年からお兄さんの会社に
お世話になる後輩です。」
にこやかにそう告げた。
「え!そうなの~~~~!」
「そうなんだ~」
兄弟で反応が違う。有崎は笑ってしまった。
「黙っていてすみません、内定貰ったのが最近で」
高志はえ?え?と驚いている。
「あ、俺、高志の弟で、浩章です。24歳です」
「あ、年同じですね」
「タメか~よろしく!」
高志を置いて二人は自己紹介を始めていた。
ん?24?と首をかしげる高志だったが
有崎は院出なんです。と答え高志は納得した。
「俺も飯食べる~、で昨日はどうしたの?」
有崎は昨日の事を説明する。
「ふ~~ん、兄貴、お持ち帰りしたんだ」
浩章に言われて、高志はフライ返しを思わず落とし、
やっぱりそうなるのかな~とブツブツ言っている。
その反応が面白くて有崎は笑ってしまった。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
また高野と有崎に会いに来ていただけたら嬉しく思います。今回より弟の浩章が登場となりますのでこちらもよろしくお願いいたします。
次回「出会いは」火曜日アップ予定です。 あらかると




