表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/37

核心


「今夜8時に学校近くの公園で待っています」

中嶋は高野を呼び出した。

公園には散歩やジョギングをしている人がまばらにいる。

中央の外灯の下にあるベンチに中嶋は座っていた。

一つの人影が近付き

「…中嶋君?」

中嶋は立ち上がり高野に向かって言う。

「お呼び立てしてすみません」

「いえ…話しは…有崎君の事かな?」

高野は苦しそうな顔をして問いかけた。

「はい、そうです。有崎から相談を受けているので高野さんの

 事は一方的に知っています」

「………」

「有崎の携帯から番号を勝手に調べたので有崎は俺が高野さんに

 会っている事は知りません」

「…そうですか…」

中嶋は高野を鋭く見て言葉を吐く。

「有崎が貴方の事を好きなのはもうお気付きですよね?」

高野は驚き、しばらく沈黙の後に重い口を開いた。

「…はい…」

高野の身体は中嶋の言葉一つ一つに反応し固まって行く。

「そして貴方も有崎を好きですね」

「………」

高野は目を見開き中嶋を見た…が、声を出す事は出来なかった。

「昨日、貴方と有崎を見かけました…高野さん、貴方が有崎に

 好意を持っているのは見て取れた…有崎を好きですよね」

高野は唾を飲む。重い沈黙が続いたがやがて

「…はい…」

高野は目をつむり重々しく答える。

「…自分の気持ちに気付いていたんだ…じゃあ何故言わない!

 奴は貴方の心の傷を気にして我慢している!怯えている!

 そんな冬真を俺はもう見たく無いんだ!!」

中嶋の言葉の語尾が強くなる。

「…心の傷…知っていたのか…」

「貴方は、冬真の優しさに甘えきっていませんか!」

「………」

何も言わない高野に中嶋は厳しい目を向ける。

「どうなんだよ!」

中嶋の強い口調に固く目を閉じ苦しそうに考え声を絞り出す。

「…俺は!今の感情をぶつけて冬真を壊してしまうかもしれない、

 束縛してしまう、あの笑顔を消してしまいそうで怖いんだ!

 冬真を幸せに出きるのか…」

苦しそうに言葉を吐く高野に荒々しく中嶋は言う。

「はあ?なんだよそれ!」

中嶋の顔は怒りの表情になった。

「冬真の事を思って言っている様に聞こえるが、それは

 あんたが冬真から逃げているだけだ!冬真は懸命にあんたに

 向かって行っているのに!」

「………」

「なに?幸せに出来ない?出来る出来ないじゃないんだよ!

 全力で幸せにするんだよ!」

中嶋の顔が高野の顔に近付く!

「あんたにその覚悟が出来ないのなら…冬真は渡さない俺が貰う。

 俺が!全力で幸せにしてみせる!!」

中嶋は高野の胸に拳を押し付ける。

「冬真を失いたく無ければ!男を見せろよ!!」

中嶋は高野を睨み付けそして背を向け歩き出しそのまま

暗闇に紛れて行った。

「………はぁ……」

残された高野は公園のベンチに崩れる様に座り込み

しばらく動く事が出来無かった。


高野は家の鍵を開ける。体は鉛の様に重かった。

どうやって帰って来たのか分からないほど心が乱れている。

部屋に入りソファーにドカッと座った。疲れた…心も身体も…

中嶋の言葉が頭の中で渦を巻き思い出す。

「くそ!なんなんだよ!好き好きって!やっと分かった

 感情がこんなに重いなんて!そうだよ、冬真が好きだよ!

 抱きしめて好きって言えばそれでいいのかよ!そんな

 薄っぺらい言葉でいいのかよ!俺は嫌だ!!」

誰に言う訳でもなく思いの丈を大声で吐き出した。

目を閉じると観覧車の中での有崎の悲しそうな顔を思い出す。

「分かってる…冬真がその言葉を欲しがっている事も

 それでいいって事も…分かっている…」

高野は顔を歪め大きなため息を吐いた。

中嶋の核心を突いた言葉…

「…覚悟か…確かにな…」

自分の不甲斐なさに心底情けない。身体は重く心は深く沈み

震える身体を抱き今を耐える。



次の日の朝、鏡にはげっそりと覇気がない顔が映っていた。

「参ったな…」

切り替えるべく強めに洗顔をし、顔を叩く。が、ため息ばかりが

口から漏れる。

休んでしまおうか…いや、家に居て考え込むのも嫌だ。

気を取り直して支度を進めた。

午前中を何とか乗り越え昼になった。心なしか周りが引き気味

なのはこの顔つきだ仕方ない…今日は舘石の話は遠慮したい。

携帯と財布を持ち外に出ようと足早に歩いていると

「あら、高野君~、どちらに行くのかしら~?」

聞き慣れた声が背後から掛けられる。

「う!げっ!」

「げっ!って言ったな!失礼な!行くわよ!」

タイミング悪く舘石に見つかってしまった…

衿首を持たれ引きずられて行く高野。いつもの席に座ると

「さあ、高野君!話してごらんなさい」

「え?」

舘石は頬杖をつき高野の顔を覗き込んでくる。

何時ものようにマシンガントークが始まるのかと思ったので

拍子抜けした。

「俺ですか?」

「そう、そんな酷い顔をして”何かありました!”って言って

 いる様なものよ!」

「………」

「仕事?…いや違うわね……まだ…恋は難しい?」

高野は何故分かったのだろう…と不思議に思う…

そして昨夜の事が思い出される。

「…はい…相手の友人に…覚悟が足らないと言われました」

高野は中嶋の顔を思い出し身体があの時の様に固まる。

「覚悟ね~、で、高野君は何を言ったの?」

「…相手を幸せにで来るか分からないと…」

舘石はフッと笑い高野に優しく話しかける。

「そうね、その人と一緒に歩く、一緒に幸せになる、

 その覚悟は必要ね。でもね、幸せのかたちは人それぞれ…

 高野君だけが頑張るものでは無いの。高野君が幸せにする

 なんて一人で思っていたらおこがましい事この上ないわ!」

「…幸せのかたち…」

「そう、それを言った人の覚悟は一緒に歩いて欲しいの覚悟

 なんだと思うわ。幸せなんてふたりで紡ぐもの。同性の

 パートナーを持つなら尚更そう願ったのかもね」

中嶋の話の中で一方的に知っていると言っていた。それは

有崎の話しからなのだろう。そう思えば有崎に幸せになって

欲しいと願うのは当然。有崎が悩み苦しんでいるのを近くので

見ていたのは彼だ。

「…つくづく俺は情けないな…」

高野の口からぽつりと言葉が漏れる。

「いいんじゃない?それだけ相手に真剣だって事だし高野君

 らしいわよ」

「はあ~」

身体から力が抜けていくのが分かる。

「高野君はそのままでいいのよ!ありのままの高野君の事が

 好きなのよ。それをあなたが認める覚悟が必要なのかもね」

高野は舘石の言葉に救われた気がした。確かに中嶋の言う通り

有崎の事を言い訳にして自信の無さから自分の気持ちからも、

有崎からも逃げていたもかもしれない…

中嶋にあんな事を言わせてしまっった…

彼にも辛い思いをさせてしまっていたのだな…

「しかし、俺が貰う!…は厳しな…」

高野は少し考えて、

「まてよ…中嶋君…もしかして………」

高野は心の中で焦りが生まれた。


君の瞳に映る笑顔   ご覧いただきありがとうございます。

次回は土曜日「幸せのかたち」をお送りします。楽しんで頂けたら幸いです。

                    あらかると

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ