有崎のプランー想いー
あさひな遊園地で幾つかのアトラクションを楽しんだ頃には
日も暮れ始めていた。
「高志さん、最後に観覧車に乗りましょう」
有崎と高野は観覧車に乗り込んだ。
「小さい頃は怖いなんて思わなかったけど、今は少し怖いな」
高野は上がって行く観覧車の外を見て言う。
「怖がりになっちゃいましたね」
「うん、そうだね…大人になって怖さを知ってしまったから
なのかな、ははは、」
高野はお化け屋敷の時を思い出して笑ってしまった。
「そうかもしれませんね…」
「ん?どうした?怖くなった?」
有崎の表情が少し曇った事に高野は気になった。
「…この観覧車で結美と高志さんは出会ったのですよね…」
「そうだね、偶然って凄いな、まさかまた会えるなんて」
有崎の顔から笑顔が消えてしまった。
「冬真?」
「…偶然…そうですね…あの時…俺も一緒に乗りたかった…
結美が嬉しそうに帰って来て高志さんの優しい笑顔…俺も
見たんです…」
「…冬真…」
「…俺にもこんなお兄さんが欲しいって思った…だから
研修の時高志さんの笑顔に一目で惹かれたのでしょうね…
ファミレスで高志さんを見つけて…相席にして貰って…
話がしたくて…俺を見付けて欲しくて…」
有崎は高野の顔を見つめ今にも泣きそうな目を向けている。
高野は驚く。そんな前から…初めて会ったと思っていたのに…
泣きそうな有崎を抱きしめたい衝動から手が動く
「…冬真…俺は…」
「高志さん!」
高野の言葉に有崎がかぶせて名前を呼ぶ。高野はビクッとし、
手を止めた。
有崎の顔は元の微笑みを浮かべた顔に戻っている。
「え?…な、何?」
「25日に会社の研修があるのですが、何をするのですか?」
高野は有崎の変わり様に付いていけず戸惑ってしまったが
「え…あ…ああ、…ビジネスの一般教養だよ…名刺の受け渡し
とかの…」
「そうですか。後で教えてもらえませんか?」
「う…うん、いいよ…」
「ありがとうございます」
「…冬真…」
有崎は夜景が綺麗ですねと外を見ている。
俺は今何を言おうとした?あのまま抱きしめていたら…
曖昧な気持ちを冬真に…
高野は目を閉じ重い気持ちが身体を固めて行くのを感じた。
その後は有崎のお勧めの店で食事をし
別れ際、有崎は高野に向き微笑んだ。
「高志さん今日は一日ありがとうございました」
嬉しそうに微笑む。
「こちらこそありがとう。楽しかったよ」
「では、お礼はちゃんと出来たでしょうか?」
「十分にしてもらったよ。嬉しかった」
有崎の笑顔に高野も笑顔で答える。
”うん”と頷き有崎は
「良かった。では、また連絡しますね」
「うん、俺も連絡するよ」
にこやかに”また”と言って帰って行く有崎の背中に高野は
小さな声で語りかけた。
「今日はありがとう…冬真の気持ちは受け取たよ…
だが、もう少し…待ってくれ…もう少し…ごめん…
冬真に釣り合う人間になりたいんだ…好きだよ、冬真」
有崎の想いに嬉しい気持ちが湧き上がるが、その一方で
気持ちを伝えあぐねている自分に嫌気がさす。
途中”タップ”に寄り篤に強い酒を頼んだ。篤は何か言いたそうに
していたが何も言わず酒を出し、そのまま困った顔をして高野を
見つめていた。
次の日、有崎は中嶋の引っ越しの手伝いをする為と言う名目で
家に来ていた。
「昨日、高野さんにアピール出来たと思う」
「そう」
「うん…」
「高野さんは何も言わなかったの?」
中嶋は片付けの手を止め有崎を見た。
有崎は中嶋の顔を見て言葉を飲んだ。
「…冬真?」
「言わなかった…と言うか…言わせなかった…」
「……冬真…」
「高野さん…何か言いかけたけど…でも…それで、もし…
もしその流れで何か言われても…嫌だし…待つと…
決めたし…高野さんのちゃんとした気持ちが欲しい…」
有崎は苦しい顔をした。
「冬真?」
「…でも、怖いんだ…高野さんに好きになって貰っているか
分からないから…待つのも辛いね」
泣きそうな顔で微笑む。
「冬真、大丈夫だよ。昨日は喜んで貰えたんでしょ?」
「うん」
力強い返事に中嶋は頷き微笑んだ。
片付けもはかどりご飯を食べに外に出る事になった。
食事も終わり有崎がトイレに行ってくると向かったが
携帯を置いていったのを見て中嶋は有崎の携帯を手に取った。
「今日はありがとう、助かったよ」
ファミレスを出て中嶋は言う。
「来月は卒業式なんだね…早いな~」
「旅行もあるしバタバタだな」
有崎は友人たちと卒業式の次の日から3泊の旅行を計画している。
「旅行から帰って次の日に引っ越しなんだよな…」
寂しそうに有崎は言う。
「うん」
「…離れても…聞いてくれる?」
「当たり前だろう。いつでも連絡して来いよ」
「ありがとう」
有崎は笑顔で答えた。
またな!ふたりは分かれて帰路につくが中嶋は途中で足を止めた。
そして電話を掛ける。
数回のコールの後に相手が出た。
「高野さんの電話でよろしいでしょうか?」
「…はい、そうですが…」
「突然すみません。俺は有崎の友人の中嶋と言います。
少しお時間頂けませんか?」
少し間が開き高野は答える。
「…分かりました…」
中嶋は有崎の携帯から高野の番号を調べていた。
ーーー高野さん、腹をくくって貰いますーーー
中嶋の顔には厳しい表情が浮かび上がっていた。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
次回は土曜日「核心」です。高野に頑張って貰いたいですね。
次回もお楽しみ頂けたら幸いです。 あらかると




