揺れる想い
ふたりが風呂から戻って来た頃は食事が部屋に運びこまれている
所だった。浩章は嬉しそうに言う。
「ナイスタイミング!」
浩章と有崎は浴衣姿で部屋に入る。
「お先にすみません」
有崎は風呂で火照った顔で高志に言うと高志は艶やかな有崎に
魅入ってしまった。慌てて言葉を出す。
「い…いや、気持ち良かった?」
「はい!良いお風呂でしたよ」
高志は有崎の姿に照れてしまい心の中で平常心!と戒める。
「美味しそう!食べよう!」
ヒロの言葉で席につき海鮮が贅沢に使われている夕食を
堪能した。
高志が有崎を見つめる眼差しが優しく浩章は常に有崎を気に
掛けていたので落ち着かなかった。
「ふぅ~疲れた…」
高志が風呂に行く為に部屋を出ると浩章が呟く。
「ごめんね、ヒロ」
「いや、いいんだよ。ただ…兄貴が変わって来てる…
変わろうとしている。ただ…あの人、天然だから…
何をしでかすか分からないな…」
浩章は腕を組み考えて
「冬真、兄貴頑張ってると思うから…」
「うん、俺待つよ。待つて決めたんだ」
浩章の言葉に迷わず有崎は言う。浩章も頷き笑う。
「ヒロ、今日はありがとう。今俺、凄く幸せだよ」
有崎の笑顔に浩章は嬉しくなり
「冬真~~~~可愛い~~」
浩章が有崎に抱きつこうとすると有崎は手で浩章を押さえた。
「ヒロに可愛いって言われたくない…」
「何でよ~~」
ふたりは笑い合った。
高志が部屋に戻る頃には雨風は唸って台風のように荒れている。
「泊まって正解だったな」
外の様子を見ながら高志は言う。
「ご飯も美味しかったし~、兄貴ありがとう」
「高志さんありがとうございます」
お礼を言う2人に微笑む高志。嬉しそうな有崎を見て浩章は
少し寂しそうに笑う。
高志との距離が有崎によって離れてしまうかもしれない…
今のように甘える事も出来なくなるかも…そう思うと寂しさが
心に小さなトゲを刺す。嬉しいが寂しさも本音である。
眠くなったと浩章はベッドに横たわる。高志は有崎にベッドを
進めて隣りの部屋の布団に横たわった。
浩章は疲れていたのかすぐに寝息をたてた。それから少し
たつと有崎の寝息も聞こえてくる。
高志はひとり心の整理をしている。
平常心を保とうとしたが有崎の笑顔を見ると嬉しくて…
「ダメだ…だだ漏れしている…」
顔を手で覆いため息を一つ吐く。
恋しい気持ちは分かったが…これをどうすれば…
もし、冬真が俺を好きだとしても俺はどう接して良いのか…
そもそも本当に俺を好きなのか分からない…欲しいを叶える…
”独占欲”俺は自分の欲ばかり冬真に押し付けはしないだろうか…
俺は冬真の自由を奪ってしまわないか?冬真には笑っていて
欲しい…今の笑顔を壊してしまわないだろうか…
この感情をぶつけて歯止めが効かなくなってしまったら…
不安ばかりが頭をよぎる。
前は浩章を守る為に感情を捨てた…今回も冬真を守る為に
心を捨てるか…
「…無理…だな…ここまで来てしまったら…」
横たわっているが一向に眠れる気がしない。
「う~~~ん」
浩章の唸る声に思考を止めた。
浩章を見るため布団から出た高志はベッドの部屋に入る。
2つ並んでいるべっドの奥に寝ている浩章は見事に布団を
蹴飛ばして何も掛けずに寝ている。
「まったく…」
布団を掛けて隣を見ると相変わらず綺麗な寝顔の有崎が居る。
近くに寄りそっと髪に触れると指からサラサラと髪が逃げる。
「…今日は楽しんでもらえたかな?…冬真…」
有崎の頬に手を当て愛おしそうに見つめその手をそっと
滑らせた。その時指が有崎の唇に軽く触れる。
高志は優しく微笑み部屋から出て行く。
「…………」
有崎は驚いて目を開けた。ドクドクドクと鼓動は早く身体が
固まる。
「え?え!…今…のって…どうゆう…事?…」
有崎は途中で目を覚ましてしまっていたのだ。
「もしかして…少しは意識してもらえたのかな…」
浩章が”変わって来てる”と言ったのはこの事なのだろうか…
高志が触れた頬に手を当て温もりを思い出し体が震える。
一瞬唇にも…そっと唇に触れる…嬉しさが身体を駆け巡る。
有崎は”落ち着け”と呪文の様に唱えた。
朝、浩章に夜の事を話すと
「え?…俺が寝ている間に…何がどうしてそうなった!
と…冬真!落ち着け、落ち着け!…」
「う、うん、」
「いや、俺が落ち着け~~~!」
天然なのか進展なのか急な展開に浩章がパニクってしまった。
今日は昨日の天気が噓のように快晴だ。
「う~~~ん、いい天気!ご飯も美味しかったし、温泉も
入ったし、最高だった!」
伸びをしながら浩章が言った。
「ゆっくり休みながら帰るとするか」
高志は思いかけず泊りのお出掛けとなってしまったが有崎との
楽しい時間をくれた浩章に感謝した。
車は綺麗な空と海の見える海岸線を走り帰路についた。
穏やかな日。
「悪いな手伝ってもらって」
有崎は中嶋の引っ越の手伝いをしていた。
「引っ越しは何時だっけ?」
「3月の20日だよ」
「…寂しくなるな…」
中嶋は彼氏と一緒に住む為に引っ越しをする事になった。
「電車で20分で着く距離だよ。何時でも会えるよ…」
中嶋も少し寂しそうに笑い有崎の頭をポンポンとする。
「高野さんとはどうなの?」
見つめる中嶋と目が合う。
「うん…高野さん…少し変わって来てるみたい…
もしかしたら…少しは意識してくれているかも…」
有崎は泊まった夜を思い出し顔が赤くなる。
「ふ~ん、良かったね」
「うん、俺高野さんの言葉を待つ事にしたんだ。でも、
アピールはしようて思ってる。もっと意識して欲しいからね」
「冬真…強くなったね」
「中嶋のお陰かな~いつも聞いてくれてありがとう」
有崎は中嶋に微笑む。
「ははは、どういたしまして、冬真には幸せになって欲しい…
出来れば見届けたいけどね…」
「良い報告が出来る様に頑張るよ」
頑張って!と中嶋も微笑む。
有崎はうん。と頷いた。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
次回は土曜日「2月14日有崎のプラン」をお送りします。有崎の楽しい気持ちが伝われば、と思います。
次回もよろしくお願いします。 あらかると




