逢えない
アウトドアショップから近くのコーヒーショップに行き一息ついた。
「高志さん、本当に大丈夫ですか?」
心配そうな顔をした有崎が聞くので高野は優しく微笑む。
「大丈夫だよ、ただ打ち身にはなっているだろうから家に
着いたら湿布貼ってくれるかな?」
高野は一人じゃあ貼れないからと笑う。
「任せてください。湿布買って帰りましょう」
「そうだね」
高野はキャンプ以外に何かやりたい事は有ったかな?と
話を切り替えた。最初は硬い表情の有崎だったが高野の柔らかい
表情に力が抜けて普通に話す事が出来てきた頃には
笑顔が戻って高野も安心した。
その後は湿布を買い高野の家に戻った。
家に着くなり有崎は高野に背中を見せる様に言う。
「高志さん…内出血が…」
高野の左の背中には内出血の跡が広範囲にあった。
「先に冷やしましょう」
有崎は氷のうを作り高野の背中に当てた。
「いっ…冷た~い~」
「我慢して下さい」
「う~~~~っ」
高野が冷たくてもがいているのを見て有崎は思わず笑って
しまった。
「冷たいんだよ~」
「冷やしてますからね!もう良いでしょう」
有崎は氷のうを外し湿布を貼った。
高野は助かったとホッとしている。
「本当は医者に行って欲しいのですが…」
「冬真は心配性だな~」
「心配しますよ!だって俺は…高志さんの事が……っ」
思わず大きな声を出してしまった。
有崎は抱きしめられた時の感覚がよみがえり高野の思いが
溢れてしまいダメだと思いながらも口から漏れてしまう。
「高志さん……す……すぐ枯れるし、体調悪くするし今回は
怪我するし、心配で…」
「す、すみません。ご迷惑をお掛けしています~」
有崎は”あ~心配!”と言って薬箱を片付けに立った。
言えなかった…誤魔化した…有崎は泣きたい気持ちに蓋をした。
気持ちを切り替える為に話題を変える。
「高志さん、夕飯はどうしますか?作りましょうか?」
「昼作ってもらってるから悪いよ」
「俺は大丈夫ですけど」
「食べに行くか?」
「心配なので出掛けたくありません!」
「え~、大丈夫だよ」
と言う高野を有崎は睨みつけた。
「ううっ、すみません…じゃあ、あいつに頼むか」
「あいつ?」
しばらくするとピンポーンと呼び鈴がなり有崎が玄関まで
出迎えに行く。
手に買い物袋をぶら下げた浩章が入ってきた。
「兄貴、大丈夫?」
買い物袋を食卓に置きながら聞く。
「だ、大丈夫です」
高志は有崎を見ながら言う。
「大丈夫じゃないです!背中に大きな内出血が有るんですから!」
浩章は見せて~と湿布をめくって見た。
「兄貴…凄いことになってる…」
「え!…まじ?」
「こりゃ~、冬真が心配するのも分かるわ」
高志はマジか~とちょっとがっくりした。
「食べよう!色々買って来たよ~」
浩章は買って来た物を出し、有崎はお皿を用意し夕食は
3人でワイワイと食べた。
有崎のたまに見せる寂しそうな表情を浩章は見逃さなかった。
「お邪魔しました」
有崎と浩章は一緒に帰る為玄関に向かう。
「兄貴、お大事に!何かあったら連絡頂戴!」
「出来れば医者に行って下さいね」
分かった!と高志は言って気を付けてな~と送り出した。
歩き出した有崎に浩章が声を掛ける。
「何かあった?」
「え?」
「冬真、寂しい表情をたまにしてたから…」
「……」
「俺でよければ聞くよ」
ふたりは喫茶店に入った。
「今日、高志さんにかばってもらった時…抱きしめられて…
好きの気持ちが抑えられなくなっちゃった…
思わず言いかけたけど…言えなかった…言ったら自分で
今の関係を壊してしまう…高志さん、優し過ぎる…勘違い
してしまう…気持ちが漏れてしまう…もう逢えないよ…」
「……冬真…」
「ヒロはどうして高志さんを諦めたの?諦められたの?」
泣きそうな有崎に浩章は優しく笑い
「俺は……俺には兄貴を変えられないと分かったからだよ…」
有崎はハッとして浩章を見た。
「俺は、弟…兄貴にとって弟以外の何物でもないんだよ…」
「ごめん!ヒロ!ごめん!酷い事言った!」
「はは、気にしないで。冬真、俺ね冬真なら兄貴を変えられる
と思ってる。俺は冬真が良いの!覚えておいて、俺は冬真の
味方だよ」
「ヒロ…」
「でもさ、俺は一生兄貴の弟!これは変えられない事実!
誰にも真似できない俺の自慢だよ!」
「そうだね…ヒロ…ありがとう…」
「冬真、兄貴と逢う時は俺も一緒に居るよ」
「うん、ありがとう…ごめんね、取り乱した…」
こんな冬真見られて役得~と浩章はおどけて見せた。
冬真はやめて~と笑った。
有崎も落ち着き浩章と普通に話が出来るようになった。
ーーー兄貴、このままじゃ冬真が限界だよ…どうするよーーー
浩章は何も出来ない事へのやるせなさだけが残った。
高野はその夜、有崎を胸に抱いた感触が残っていた。
あの時はとにかく守りたいと強く思った。だから守った。
心配する顔を笑顔に戻したかった。だがたまに見せる寂しそうな
顔が気になった。俺は何かしてしまったのだろうか…
今は有崎の事が気になって仕方ない…
「俺は…冬真が好きなのかもしれない…」
この感情はいけない…彼に迷惑を掛けてしまう。
これ以上この感情を大きくしてはいけない…
「少し距離を置くか…寂しいが仕方ない…こんな気持ちは
初めてだ…辛いな」
高野はいつものコーヒーが苦く感じた。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
次回は火曜日「逢いたい…逢いたい…でも…」をお送りします。
次回もお楽しみ頂けたら幸いです。 あらかると




