妹
土曜日、高野と有崎は出掛けている。
昼ご飯はソースが美味しいとSNSで人気のお店に行った。
確かにどのソースも美味しそうな匂いがしていたが注文した
品のデミグラスソースがとても美味しかった。お腹も満足したので
キャンプ道具でも見に行こうとアウトドアショップに向う。
「高野さんから電話が来た時、何かあったのかと驚きましたよ」
「はは、有崎君には助けてもらってばかりだからね~」
「この間も高野さん面倒ごとに巻き込まれてたでしょ」
「え?何で知ってるの?」
「見てました」
「え!本当?やだな~、恥ずかしい…」
「え?カッコ良かったですよ」
有崎は笑う。有崎の顔を見てこの笑顔だと嬉しくなった。
「そう?そう見えていたなら良かった」
「はは、その後引きずられて行きましたね」
「う、カッコ悪い…」
ふたりは笑い合っていた。
「お兄ちゃん!」
不意に女性の声がした。
冬真は声のする方を見ると妹の結美が立っている。
「お兄ちゃん…」
「結美……」
冬真は驚き足早にその場から逃げる様に歩き出した。
結美は動けず悲しそうに立っている。
高野は彼女に待っていて!と言い冬真を追いかける。
「有崎君!待って!」
冬真は止まる様子は無い。高野が追いつき腕をつかむ。
「有崎君!待って…有崎君!」
だが冬真は振り向きもせずに歩き続ける。
「待って!止まって!…冬真!!」
冬真は高野が名前で呼んだ事に驚き立ち止まり高野の顔を見る。
有崎の顔はグランピングの夜、苦しそうに話している時の顔だ。
高野は冬真の肩に手を置き優しく微笑む。
「俺がいる!そばにいる。大丈夫だよ冬真」
冬真は高野の顔を見ていたが目を閉じて頷く。
泣きそうに立っていた結美を連れて近くの喫茶店に入った。
奥の席に3人で座り結美には高野が一緒に話を聞く事を
了承してもらった。
「お、お兄ちゃん、ごめんなさい…私…」
結美は言葉に詰まって上手く話す事が出来ずにいた。
冬真は下を向き顔を上げずに言葉を出す。
「結美は悪くない…俺が…お前を守れなかった…」
「違う!違うの!…私は…あの……」
言葉が詰まる結美に高野が優しく語る。
「思った事をゆっくり話して。大丈夫、伝わるよ」
結美は高野に頷く。
「あのね、私…お兄ちゃんを…好きになったの…1人の男性
として…でもお兄ちゃんに迷惑かけると思って…
私…私…を…嫌いに…なって…欲しくて、あんな事…
後悔してる…お兄ちゃんが…苦しんでいるって知って… 」
遂に結美の目から涙が溢れた。高野はハンカチを渡す。
冬真は驚いた顔をして結美を見つめた。
「俺は比較されて苦しんでいるって…泣いているって…」
「お母さんはそう思ったみたい…私はそんなの気にして
無かった。お兄ちゃんモテたから友達が紹介してって言って
それであの時お兄ちゃんの隣に知らない女の人が
一緒にいる事を想像したら…辛くて…嫌で…泣きたくなって…
それで…私…気づいたの…好きになったんだって…
ごめんね…お兄ちゃん…酷い事言って…苦しめて…」
冬真は目をつぶって涙を堪えているようだった。
「さっき…お兄ちゃんとても良い顔で笑ってた…だから
今だったら…許してくれるかも…て、思って…
ごめんなさい…」
結美は下を向いて悲しみを堪えている。
冬真は結美を見つめ寂しい顔をしている。
「結美、ごめん。お兄ちゃんこそお前の気持ちを考える
事もせず逃げてしまった…ちゃんと話をしておけば
良かった…ごめんな…」
結美は顔を上げ頭を横に振り泣き笑いをした。
「結美、これからまた何でも話せるお兄ちゃんにして
もらえるだろうか?」
「うん!うん、大好きお兄ちゃん!」
高野は話の間机の下で冬真の手を握っていたが、そっと
手を放した。そして良かったと笑った。
高野は話もあるだろうからと席を外そうと立つ。
「高志さん!」
高野は近くに居るよと言う。
「え?…こうし…こっち…こっち兄ちゃん…?」
冬真はえ?と結美の言葉に反応する。
「あ…あの…」
結美は高野に話しかけた。
「もしかして…こっち兄ちゃん?」
高野は”ん?”と結美を見る。
「あ、あの、小さい時…えっと私が5歳の時お兄ちゃんは8歳で、
あさひな遊園地で女の子と観覧車に乗りませんでしたか?」
「ん?ヒロが8歳で、俺が12歳か…ん?あったかな?ヒロが
女の子が観覧車に乗りたくて泣いてると言って…」
「それです!両親は高い所がダメでお兄ちゃんは体調悪く
しちゃって…でもどうしても乗りたくて泣いていたら
一緒に乗ろうと声を掛けてくれて」
「ああ~、あの時の」
「はい、あの時の」
ん?このパターンの会話を何処かで…
「でも、観覧車が高くなったら私…怖くなっちゃって泣いたら
こっち兄ちゃんが抱っこして鳥さんと同じだね!って飛んでる
鳥を指差して言ってくれた時の笑顔優しくて…」
「ああ!その後どっちのお兄ちゃんが優しいかでヒロと
喧嘩になった!」
「そうです!…今も変わらず優しい笑顔で思い出しました」
その後しばらく結美は1番とーま兄ちゃん!2番こっち兄ちゃん!
と言っていたのを冬真は思い出した。
高野はそうか~、あの時の…お互い大きくなったねと笑った。
冬真はあの時、高志の笑顔を見て僕もこんなお兄ちゃんが
欲しいと思っていた。
だから、高野の笑顔に惹かれて…
その後は兄妹で仲良く話し、また会う約束をして別れた。
「良かったな」
高野はそう言って笑った。有崎も微笑む。
「高志さん!」
「ん?何?」
「冬真って呼んでくれましたね」
「うっ、ごめん…忘れてください…必死だったもので…」
高野は照れて頭を抱える。
「え?呼んでくれないのですか?」
「え?呼んで欲しいの?」
「はい!」
「うっ…有崎君でいいよね…」
「と・う・ま・です!はいどうぞ!」
呼ばないとダメ?と高野は言うが有崎は俺も“高志さんと
呼んでますから!と聞いてくれなかった。
「うううううううっ…と・うま君」
「君はいらないです」
「と…ぅ…ま」
「はい?聞こえませんけど?
ちゃんと言わないとご飯作ってあげませんよ」
「え!……冬真!」
「良くできました!」
高野は顔が真っ赤になっていた。有崎は満足そうだ。
高野の心は乱れまくりだ。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
次回は土曜日「恋心」です。ブックマークありがとうございます。次回も楽しんで頂けたら幸いです。
あらかると




