人の想いはそれぞれ
日曜日当日、舘石とカフェで待ち合わせをしていた。
「ごめんね、遅くなっちゃった」
舘石は白と黒の組み合わせでシックな服装がとても似合って
いる。長い髪も綺麗にまとめてあり会社とはまた違う雰囲気で
周りからも視線を集めていた。
高野も黒のパンツにダークグレーのジャケットで舘石に
釣り合いそうな服装で少し安心した。
「大丈夫、待ってないよ」
と微笑むと舘石も微笑み返した。
「では、行こうか」
2人は舘石の行きたい店を回った。
「ん?あれは冬真の思い人君ではないか?」
「あれ…高野さん…え?…」
有崎はこの日、中嶋と学校で使う備品を買いに出ていた。
「あ…彼女?…ではなさそうだな…何をしているんだ?」
高野の表情からラブラブカップルと言うよりも引きずられて
いる彼氏的な感じが漂っている。
だが、有崎は彼女に時より見せる高野の笑顔が気になり、
女性と一緒に歩く姿に嫌な感情が湧いてしまう…
目をそらしてしまったが、よく見ると後ろから1人の男が
2人をつけているのが分かった。
「ああ、そういう事か~ 冬真、面白そうだから後つけよう」
中嶋はニコッと笑って歩き出す。
「高野さんまた何かに巻き込まれてるのか…」
有崎は少しホッとして中嶋と後を追う。
良く見ると知らない男のその後ろから弓月が後を追っていた。
「あれ?弓月さん?何やってるんだか…」
2人の後を合計4人がつけていた。
ひとけの少ない道で高野が動く。
「舘石さん、ちょっと失礼します」
高野は舘石の肩を抱き引き寄せた。
「何をする!」
男は飛出し2人に声を掛けた。高野は舘石を背に回し男の
前に出る。
「お前こそ、こそこそと後をつけてどういうつもりだ!」
男は拳を握りしめて睨む。
「俺は彼女を守っている!」
「綾香は迷惑しているんだ、それが分からないのか?」
「あ、あやか…彼女を気安く呼ぶな!いきなり出て
来やがって生意気な事を言うな!!」
男は高野に殴りかかってくる。弓月が後ろから走り出す。
が、高野は男の拳を受け止めて逆に男の腕を締め上げた。
「痛っ」
「守るだ?お前が恐怖の根源なんだよ!」
高野の顔は表情もなくそれが余計に怖く見える。
「彼女の気持ちを考えろ」
「くっ……」
男は力なく座り込む。高野の肩を舘石が触り”いいわ”と言うと
高野は男を解放した。
「私は言ったわ。好きな人がいると」
男は高野を見る。
「この人じゃ無いの…私…女性が好きなの」
「はっ?」
男と高野の声が重なる。
「あなたの前で彼女と手をつないだり、イチャイチャしたけど
気づいてもらえなかった」
男はそういう事だったのか…と腑に落ちたようだ。
「そうか、だから男の気配が無かったのか…ならチャンスが
あるかと思ったが……悪かった…もうしない…」
そう言うとふらふらと歩いて行ってしまった。
「一件落着!」
舘石は手を”パン”と叩きにこやかに言うと
惚けている高野を引きずってご飯奢るね~と歩く。
「高野君カッコ良かった~、男なら高野君を彼氏にするわね~」
引きずられながら苦笑している高野。
「そりゃあ、どうも…」
高野も解決して安心したのか笑っている。
「これは面白いものみたな~冬真!」
中嶋はにこやかに有崎を見て言う。
「高野さんカッコ良かったな」
有崎は高野の姿を見続けている。
「うん」
少し高揚した顔をしながら
「カッコ良かった」
とても嬉そうな顔で笑った。
その後、昼時間に舘石の恋の悩み相談を聞く羽目になった
高野は連日”恋”について悩む日を送っている。
舘石の恋愛相談と言う愚痴とのろけ話しを聞いているうちに
高野は自分の気持ちを考えるようになった。
ある日、舘石の何気ない言葉が心に引っかかる。
「好きな人とは一緒に居たいでしょ~!高野君は一緒にいて
楽しい人とか気持ちが落ち着く人は居ないの?」
「ははは、居ないですね~」
「あら、寂しいわね」
ふと有崎の笑顔が頭をよぎる。最近時間を共にする事が
多かったからなのか…年越しの夜から何かおかしい…
仕事を終えて自宅で疲れた体をソファーにあずけ有崎の事を
思う。良く考えたら有崎には助けてもらってばかりだ。
「疲れた時に有崎君の笑顔に癒されていたんだな…」
高野は無意識に携帯を眺めていた。そして電話をかける。
「はい、有崎です」
「高野です。ごめん遅くに…今大丈夫?」
「大丈夫ですよ。どうかしましたか?」
「いや、特にはないのだけど…卒論は大丈夫?」
「はい、もう最終確認の段階です。もう落ち着きますよ」
「そっか、良かった。忙しいのに旅行なんか誘ったから
心配になってね」
「はは、卒論は進んでいたから大丈夫でしたよ。それに
グランピングは楽しかったです」
「うん、良かった。次はキャンプかな?」
「はい、お願いします。楽しみです」
高野は少し迷っていたが、有崎の笑顔を見たい…
「高野さん」
「有崎君」
2人は同時に名前を呼びあった。
「あ、高野さんどうぞ」
「う、うん…もし時間があったら土曜日にご飯でも
行かないか?」
「え、行きます!行きたいです」
「良かった、行きたい所決めておいてくれる?」
「はい、連絡しますね。楽しみです」
「俺も楽しみにしてるよ」
「有崎君は?何か用事があった?」
「いえ、大丈夫です。」
「そう?じゃあ、連絡待ってるよ。お休み」
「はい…お休みなさい」
高野は電話を切った後の心が暖かい感覚が気持ち
良かった。今は何故かとは考えずに暖かい感覚を味わって
いたかった。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
次回は土曜日「妹」です。 今後の高野と有崎の進展をお楽しみ下さい。
あらかると




