仲良し
有崎と浩章が談笑していると
入口のドアが開いたと同時に声がする
「あれ、ヒロ?と有崎君?」
2人が顔を向けるとそこには高志が立っていた。
「兄貴!どうして?」
「今取引先の専務とここの近くで食事してその帰りだよ」
あ~疲れた。と浩章の隣りに座る。コーヒーでもと思ってと
「冬真は、ここでバイトしてるんだって!」
「そうなんだ、エプロン姿似合うよ」
そう笑う高志を見て照れる有崎
ーーやっぱり、分かりやすいなーー
浩章がニヤニヤしていると高志が何かいい事あった?
と聞いてきた。
ーーさすが、兄貴の鈍感ーー
笑顔から苦笑いになってしまった。
「いや~参った、食事しながらお見合いの話になって
断るのに苦労したよ」
2人は”え!”と驚きの顔になる。
「28にもなるとそういう話も出るから困るよ」
「そうなんだ…」
そう答えた浩章が有崎を見るとちょっと悲しそうな
顔をしている。
高志がコーヒーを頼のむと有崎がはい!と用意してくれている
「2人は仲良しだね」
と嬉しそうに言う。
「俺の事気にしてくれてるみたいだけど気にしないで
2人で遊びに行ってね」
2人は顔を見合わせ”?”を頭に浮かべている。
ーーちょっと待て!兄貴!邪魔者は俺!俺だから!--
浩章は有崎を見るとなんとも複雑な表情をしている。
まあ、仲良はいいけど、違う!と浩章は頭を抱えた。
「兄貴!ちが…」
浩章が声をあげるのと同時に高志の携帯が鳴りだした。
ちょっとごめん!と席を立つ高志、浩章が有崎を見ると
悲しそうな表情をしていた。
「冬真…」
2人の間には何とも言えない空気が漂う。
高志が慌てて戻ってくると
「ごめん、会社に急いで戻らないといけなくなった
コーヒーはヒロが飲んで!」
1000円をテーブルに置き高志はカバンを持ち”ごめんね”
と言って足早に出て行ってしまった。
「馬鹿兄貴!冬真気にするな!あの言葉に深い意味
なんて無いからな」
「…うん」
有崎の顔は笑顔が硬い。悲しさを押し殺している様に見えた。
店を出た高志の顔には苦しい表情が浮き出ている。
有崎の少し悲しげな表情は高志も気付いていた。
俺は何かしてしまったのだろうか?
頭に残るその表情を振り払う様に会社へと駆けだして行く。
「高野戻りました」
会社に戻り企画部のフロアーは社員が右往左往している。
「どうなってる…?」
「高野!」
声を掛けてきたのは営業部の弓月だ。
「明日のイベント資料が消えた!」
「消えた?」
「ああ、消えた!置いてあった所から無くなった」
「は?」
「探しているが見当たらない」
高野の思考が停止しそうになるが何とかもちこたえて
「探す班と作成班と別れましょう!営業部は探して下さい
俺たちはもう一度作るぞ!」
高野の声で皆持ち場に着いた。
そこから修羅場と化した企画部!どうしても見つけ
出せなかった営業部も加わり何とか作業が終わったのは
午前1時を回っていた。
「お、おずかれ…さま…でした!」
資料を詰めたボックスを台車に乗せると皆屍と化した
「お疲れ様です」
帰れる社員は帰っていく。高野の電車はとっくに終わり
会社に居残り組だ。始発まで寝る者やコーヒーで眠気を
覚ます者もいる。
高野は昼間の有崎の顔を思い出しコーヒーを飲みながら
昔を思い出していた。
高野の家は両親が共働きで高志が小学5年まで学童で楽しく
浩章と過ごしていたが、母親が2人の為にとリモートの仕事
に切り替えた。
「高志あなた達のためだから」
が口癖の母は良いと思った事は2人にやらせた。
最初のうちは良かったが母親との意見がずれて
その生活は2人にとって窮屈な生活になってしまった。
「お母さん、サッカーがしたい」
と浩章が言えば
「いいえ、水泳にしましょう」
と母の良しと言うものに替わってしまう。
悲しげな浩章を見るのが嫌だった高志は母親の考えそうな事
を先に考えて自分が母の望み通りに動き浩章には好きな事が
出来る様に守ってきた。
長年その様な生活の中で自分の思いより他人の思う事を
優先してしまい高志自身の意思が薄れてしまった。
こと、恋愛なんて未知の物となってしまっている。
好きと言われても高志は自分の気持ちが分からず
どう対応して良いのか分からない。
何度か告白をされた事はあるが、当たり障りのない
言葉で断り続けてきた。その都度”好き”と言う感情に
悩む事が度々あった。
有崎が慕ってくれているのは分かっている。が、
年も同じの浩章と居た方が楽しいだろうと思い
昨日あんな言い方をしてしまったが…有崎の
悲しい顔を見て自分の心がざわついてる。
有崎にとって嫌な事だったのは分かる。
自分の気持ちも良くない気がする。昔、浩章から
”兄貴の気持ちはどこに置いてきちゃったんだよ!”
と言われた事を思い出す。
「ふぅ~…俺の気持ちか…」
有崎の事を考えると胸の奥に何かが詰まった感覚が
あるが、高志にはそれが何なのか分からずにいた。
今日は眠れそうにないな~と呟き濃いめのコーヒーを飲む。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
10月は土曜日の更新にさせて頂きたいと思います。これからも高野と有崎をよろしくお願いいたします。
次回は「有崎の仲間」です。
あらかると




