味の基本は!
「高野~、TODOROKI産業の大野専務が聞きたい事が
あるから来て欲しいと連絡きたぞ!」
「え?専務から?」
TODOROKI産業は高野が営業をしていた時の大口取引先だ。
今更何だろうか?と頭から???を連発していると
「時間はお前に任せると言ってる。行って来い」
部長から時間は気にしなくていいからゆっくり行って来い
と高野に配慮した言葉が掛けられる。
「……はい…」
急に胃の辺りから痛みを感じた高野は机に突っ伏した。
隣の同僚から肩たたきが…最近これ、流行ってる?
何の情報も無いのでノートパソコンをカバンに入れ会社を出た。
「なあ、頼むよ~有崎!」
学校前の公園で同じ研究室のあまり話した事のない同期3人
から声を掛けられている。
「ごめん、土曜は予定があるから行けないよ。」
「今回の合コンは女子がお前を誘ってくれってうるさい
からさ~」
「本当にごめん!」
有崎は背を向け歩き出す。
「おい!」
一人の学生に肩をつかまれると鈍い痛みを感じた。
「いっ…」
振り返えろうとした時
「おいおい、俺の親友に何してくれてるの?」
と手を振り払う浩章が立っていた。
3人は浩章の登場に面喰ってしまっていたが、関係ないだろう!
といきがるものの浩章のすごみに圧倒されていた。
「いいよ、分かった悪かったな」
不満そうに退散していく3人を見つめていた有崎が
「ヒロ、ありがとう」
と言い浩章の登場にホッとした。
「いえいえ~、俺、カッコイイ~」
自画自賛している浩章に”はいはい、カッコイイです!”
と相槌を打ちどうしてここに?と聞く。
「たまたま通り掛かっただけだよ。近くに取引先があってね~」
「スーツがカッコイイな~」
「え?スーツ姿が?」
「いや、スーツが!」
またまた~と照れているが
「このスーツは兄貴に紹介してもらってね、作った」
「冨田さんのお店?」
「そう!え?知ってるの?」
「俺も紹介してもらったよ」
「そうなんだ~いいよね、あのお店」
うん、返事をして時計を見ると11時45分になっていて有崎は
「やば、ねえヒロ、お昼ご飯奢るからバイト先に一緒に
行かない?」
「バイトしてるんだ!やった!行く!」
2人は有崎のバイト先である喫茶店に向かった。
お昼時という事もあって店内は混み始めている。
”おはようございます”と声を掛け浩章にカウンター席に
座るよう進めて奥に入っていく。
席に座ると”あ!今日は有崎君だラッキー”と女子の声が
聞こえて来た。やはりモテるなと浩章は思う。
浩章はスパゲッティのセットを頼んで食べ終わる頃には
お店も落ち着いていた。
「コーヒーどうぞ」
有崎はコーヒーを渡す。
ありがとうと受け取り冬真をまじまじと見た。
「な、何?」
「冬真はモテるのに何で兄貴なの?」
浩章は思っていた事を聞いてみた。
有崎は一瞬目を見開き驚いた顔をしたが、優しい顔になり
「理由はわからないんだ…あの笑顔に一目惚れしたと思う」
ふ~ん、と言ってコーヒーを飲む。
「告らないの?冬真なら兄貴を変えられそうな気がしてる」
その言葉に有崎はちょっと悲しい顔をした。
その顔を見た浩章はごめんごめん、気にしないでと慌てる。
「そうそう、このパスタ前に冬真か作ってくれたのに似てるね
美味しかった~」
「ここの店が俺の味の基本だよ」
「なるほどね~また兄貴の家でなにか作ってよ」
いいよ、と有崎は笑う。兄貴の話をしている時の笑顔の
方が何十倍も良い笑顔なんだよな~と浩章も笑顔になる。
「わかりやす!」
「何が?」
つい言葉にしてしまってマズ!と思った浩章は笑って
誤魔化した。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
次回は土曜日「仲良し」を予定しております。よろしくお願いいたします。
あらかると




