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彼の音色  作者: 千莉々
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雨の日のレッスン

 さっきは、本当にビックリした。

 愁に胸元を触れられた時、心臓が止まるかと思った。

 どういう思いなのか自分でも分からない。


「冬弥も愁君も制服が雨でびっしょりじゃない。帰るまでに乾くかしら?」


 母親が俺達の制服をハンガーにかけ、除湿機の衣類乾燥機能を使い服を乾かそうとしている。


「今日も練習していくのでしょ? 今、ピアノ教室が終わったから部屋空いてるわよ」


「分かった。愁を呼んでくるわ」


 2階の自分の部屋に戻った。

「愁、レッスン室が空いたよ」


「どう? 似合うかな?」

 俺のトレーナーとスウェットパンツを着用した愁がポーズをとって聞いてきた。


「ああ、似合ってる。可愛いよ」

「えー、可愛い? どうも」


 お互いクスっと笑い、気を取り直して1階に降りた。



 レッスン室にこもり、さっそく歌とピアノを合わせる練習を始めた。

 まるで部活のようだと思いながら2人で真剣に取り組んでいる。


「相変わらず、綺麗な歌声だな」

「冬弥のピアノがとても歌いやすいからだよ」

「そうなのかな?」

「初めて合わせた時より、ピアノの音が滑らかになってる」

「そうかなぁ? 自分では分からないけど楽しく弾ける」

「僕も楽しいよ。演奏会が待ち遠しいな」


 レッスン室のドアが開いた。

「冬弥も愁君も晩ご飯にしなさいよ」

 母親が呼びにきた。


 今日も愁と母親と俺の3人で食事だ。

 最近、この3人で話す事が増え家族のようだ。


「今度の演奏会、お母さんも見に行きたいな」

「いいですよ。是非、僕達の晴れ舞台を見に来てください」

「ほんと? 絶対行くわね。冬弥のピアノ、久しぶりに聞けるのも嬉しい」


「ほんとに来るのかよ」

 と少し不服そうな俺だが、愁も母親もニコニコ顔だ。


「愁君は何着るの? 冬弥も合わせないとね」

「普段着でいいですよ。気軽な演奏会だから」

「そう?」


 ほぼ母親が1人で喋り、愁が相手をしている。愁は偉いな。

 俺だったら人の母親の話をあんなに笑顔で聞けないだろう。

 愁は大人だ。


 食事が終わり、愁を駅まで送る事にした。

 制服はまだ完全に乾いていないので、俺の貸した服の上にコートを羽織ったいでたちだ。


「愁、今日も母さんの相手してもらって悪かったな」

「そんな。僕は冬弥のお母さんの事、すごく好きだよ」

「おぉ、母さん喜ぶわ」

「だって、冬弥のお母さんだし」


 愁は自然に何でもサラッと言うな。俺には真似できない。

 いろんな面で愁は尊敬すべきところがたくさんある。

 俺も頑張らないといけないなと思った。

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