表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/29

新学期

 3学期が始まり、数日が過ぎていった。


「置田君! 昨日、山之内君が出てるミュージカルに行ってきたよ」

 クラスメイトの坂田美咲が話しかけてきた。


「へぇ。どうだった?」

「山之内君、すごくカッコ良かった。置田君はいつ行くの?」

「俺は次の日曜」

「いいな、千秋楽の日じゃない」

「千秋楽?」

「公演最後の日よ。チケットは人気なんだから」


 知らなかった。俺の行く日が最終日なんだ。

 そんな特別な日のチケットを渡してくるなんて。

 愁は男前なことをするな。


「東京公演が終わったら、大阪公演みたいよ」

「愁も大阪に行くのかな?」

「ううん。山之内君は東京公演だけみたい。うちのお姉ちゃんは、主演俳優さん目当てに大阪公演も行くって言ってた」

「大阪まで見に行くんだ。すごいんだな」

「完全な追っかけね」


 熱心なアイドルのファンは全国各地に行くって聞いたけど、舞台俳優もそうやって観に来てくれるんだ。

 愁にも熱烈なファンがいるんだろうな。


「なぁ、坂田。大阪公演では違う人が愁の役をするの?」

「主演俳優と主演女優と山之内君の役はWキャストなの」

「Wキャスト?」

「同じ役が2名いてね。公演回によって出演者が変わるの」

「そうなんだ」

「大阪公演で山之内君は出ないし、もう1人がずっと出演するようよ」

「へぇ」

「山之内君は学生だしね。学業も大事よ」

「そっか」

「置田君、知らなさすぎる」

「坂田は詳しいな」

「ちゃんと山之内君に教えてもらいなさいよね」

 と呆れていたが、すぐにフフッと笑っていた。


 1週間ほど、愁と会っていない。

 知らず知らずのうちに溜息をついている。


 今頃、舞台を頑張っているんだろうな。

 体調を崩していないだろうかと愁の事で頭がいっぱいだ。

 あの時ソファに押し倒されてから、愁への思いが大きくなっている。

 何もなかったものの、気になって仕方がない。

 授業が全く頭に入らない。

 こんな自分にイライラしてしまう。


 休み時間になった。

「最近、山之内を見ないよな。どうしたのかな?」

 と畑野が聞いてきた。


「今、ミュージカルに出演してるからさ」

「そっか。あいつ、よくうちのクラスに来てたからさ。置田の事、めっちゃ好きだよな」

「はぁ? 何言ってるんだよ」

 声が裏返り真っ赤になった俺を見て、畑野はぽかんと口を開けた。

「何だよ、その声」

 と吹き出している。


 畑野は深い意味はなかったのだろう。

 俺としたことが……かなり焦ってしまった。


 はぁー、本当に愁の舞台が待ち遠しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ