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彼の音色  作者: 千莉々
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久々のピアノ

「母さん、レッスン室借りるよ」

「冬弥、どうしたの?」

「学校の知り合いにピアノ伴奏を頼まれてさ」

「へぇ、そうなんだ。ピアノ、久々じゃない。頑張って」

 心なしか母親が嬉しそうだ。


 家に帰ってから防音設備のあるレッスン室でピアノに向かった。

 10帖程の部屋にはグランドピアノ1台と電子ピアノ1台が置いてある。

 母親のピアノ教室は夕方には終わるので、夜は弾き放題だ。


 高校に入ってからはピアノを弾いていなかったので1年半ぶりだ。

 楽譜をにらみ、とりあえず1曲目から弾いてみた。

 わりと簡単な楽譜だったのですぐに弾けたが、やはり以前のように指が軽く動かない気がする。


 ちょっと指練習でもしてみるか。

 左手を中心に音階など数分練習をしたら、少し勘が戻ってきたようだ。

 ピアノは日々の積み重ねだとつくづく感じた。


 練習を始めてから2時間がたった。

「まぁ、こんなものかな?」

 とりあえず、明日はそこそこ弾けたらいいだろうと思い、グランドピアノの蓋を閉じた。


 それよりも、今の自分には学業の方が重要だ。

 数学など理数系の教科は得意だが、特に国語は苦手だ。

 大学も理系に進むつもりだ。


 幼い頃、母親はピアノの練習をするように毎日厳しかった。勉強をするよう言われた記憶がない。

 ピアノが嫌いだった自分にとって、勉強の方がはるかに好きだった。

 高校に入ってピアノをやめてしまった時、母親はかなり残念そうにしていた。

 今となっては音楽ができる事に感謝している。


 明日の放課後、音楽室に集合か。急に話しかけてきた山之内愁。

 変わった奴だと思いながらも何故だか憎めない。

 男の自分でも一瞬見入ってしまった。

 女子だったら、完全に好きになるのではなかろうか。

 子供の頃から表舞台に立っている人種は、一般人の俺とは全く違うのだろう。


 今日は勉強に集中できないので、もう寝る事にした。

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