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休日のランチ

 俺は今、窓から海の見えるオシャレなホテルで食事している。

 そして、目の前には愁がいる。


 ピアノ伴奏のお礼という事で誘われたのだが、まわりはカップルや女性同士のお客さんで埋まっている。

 愁は大人っぽいので、兄と弟のように見られているだろうか?


 今日、愁は俺の家まで迎えにきて、ここまで一緒に電車に乗ってやってきた。


「冬弥、たくさん食べてね。バイキングだから好きな物をたくさん選んで」

「色々ありすぎて迷うな。でも、ここは高そうだけどいいのかな?」

「大丈夫。お父さんから軍資金は貰ってるから」

 と愁は笑顔で言った。


「愁は、こういったホテルによく来るの?」

「このホテルは初めてだけど、僕が舞台とか頑張った時に、お婆ちゃんがご褒美にってホテルのランチに連れてってくれたかな」

「へぇ、すごいな。俺なんてファミレスくらいしか行ったことないわ」

「今度、冬弥のよく行くお店に行きたい」

「普通の店だけど」

「いいんだ」

「分かった。今度、案内するわ」

「約束だよ」


 それにしても、愁はどこにいても様になる。

 黒のタートルに緩めの黒いパンツにカジュアルな紐付きの革靴。

 上着はカーキ色のMA1を羽織っていた。

 イケメンだし背が高いし声もいい。俺なんて普通の高校生だ。


 お皿がカラになったので、食事を取りに行こうと立ち上がると、

「あの~、山之内愁さんですよね?」

 と20代半ばくらいの女性2人組が声をかけてきた。

「そうですよ」と愁が答えた。


「すごいファンで、握手してもらってもいいですか?」

「もちろんです」

 とキラキラした笑顔で彼女達に応えていた。


「応援してます。舞台、頑張ってください」

「ありがとうございます」


 彼女達は俺の方も見て、

「頑張ってください」と言ったので、

「どうも」と軽く会釈した。

 そして小声でキャーキャー騒ぎながら離れていった。


「愁は、やっぱり人気あるよな」

「冬弥のこと、劇団の俳優さんと思ってたね」

「頑張ってくださいって言われたから、何かなと思ったんだよな」

「冬弥はカッコいいからさ」

「俺が?」

「うん」

「よく言うわ」


 愁は甘い物が好きなようだ。

 お皿にケーキやプリンなど、たくさん乗せて幸せそうに食べている。

 とても可愛らしい。


「あ~、美味しかった。お腹いっぱいだ」

「冬弥、僕よりは食べてないよ。もういいの?」

「十分、十分。愁はよく食べるな」

「そうだね。なんか楽しくて。よく食べた」

「しっかり食べて、舞台、頑張れよ」

「うん。ありがとう」


 食事が終わり、食べ過ぎたので少し歩くことにした。

 今日は天気も良く、海沿いの歩道を歩いていると気分がいい。


「冬弥、こないだの演奏会で僕が言った気持ち本気だから」

 と急に愁が真顔で言ってきた。

「えっと……」

「好きって言ったこと」

 ほんのりと赤い顔で愁が下を向いた。

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