24:境田京のアルバイト1
サブタイトルの形式と文章の書き方を変えてみました。
目の前にはお世辞にも綺麗とは言い難い5階建てのオフィスビルがあった。
ここの4階に京のバイト先だ。
ビルの中に入ると、入口のエントランスには各階の案内板、申し訳程度に絵画が飾られ、花瓶には鮮やかな花が活けられている。
「嗚呼、超気が重いでございますよ・・・っと」
京は独り言を言いながらエレベーターに乗り込み、〔4〕のボタンを押す。
静かに動き出すエレベーター。
エレベーターの低い駆動音が小さく響く。
4階に到着と同時に、低い駆動音が止む。
エレベーターの扉が開く。
目の前にはロビー。
ロビーの受付テーブルには内線電話と『ご用の方は内線04にお掛けください。』と記入された立札がある。
そして、何故か大量に散乱するビールの空き缶とロビーのど真ん中に折り畳み式のパイプベッド。
パイプベッドには長い黒髪を湛えた女性が寝ている。
毛布越しにも分かる均整のとれた体つき。
呼吸で僅かに上下する豊かな胸。
世の女性たちが憧れるであろう細くくびれた腰。
細いながらも綺麗な線を描く腰から臀部にかけてのライン。
「・・・酒臭ぇ」
そして、酒臭さがそれらの女性的魅力を全て台無しにしている。
丹羽優希
それが彼女の名前だ。
「優希さん、起きてください。朝ですよ」
肩に手をかけて、軽く体を揺すって起こす。
「んん・・・」
艶のある唇から甘い声が漏れる。
ただし酒臭い。
「起きてください。もう始業の時間は過ぎてますよ?」
もう一度、今度は少し強く体を揺する。
「んぁ・・・ん・・・。やぁ・・・ミャーコ・・・おはよう」
瞼を擦りながら、ようやく起こされた事に気付く。
優希はゆっくりと体を起こす。
「おはようございます」
溜息をつきながら挨拶に応える亰。
「すごい空き缶の量ッスね。昨日はどの位呑んでたんスか?」
「・・・いやぁ、あんま覚えてないや」
と、笑いながら答える優希。
こんなのが大人で、社会に出て働いているのだから世も末だ。
それに問題なく(?)働けているのだから恐ろしい。
・・・こんな大人には成るまい。
京は小さく決意する。
「どうしたのさ?急に黙りこんで」
「・・・いえ、これからの事について考えてたんスよ」
「ははぁーん。さては私とベッドでニャンニャンしたいんだな?」
ニヤニヤしながら優希は話す。
「うんうん、まだ若いからねぇ。でも・・・、ミャーコならいいよ」
肩にかかった黒髪を弄り、妖艶に微笑みながら言ってくる。
京はからかわれてるようだ。
京は、ならばと・・・。
「それじゃ遠慮なく」
京は取り敢えず乗ってみることにした。
ベッドに腰を掛け優希の腰に右手を回す。
左手は彼女の顎に添えて、顔をこちらに向けさせる。
この時点で、優希の顔は真っ赤だ。
その反応は京の逆襲を想定していなかったように見受けられた。
「え・・・?い、・・・いや、ちょっ!え?・・・えぇ!?」
混乱しているようだ。
京は優しく微笑み、じっと目を見つめる。
そのままの状態を維持。
そして、優希がオロオロし、目線をキョロキョロとしだした所で一言。
「・・・冗談ですよ?」
意地悪そうにニヤッと笑って見せる。
キョトンとする優希。
「遊ぶなら体張って最低これ位しなきゃダメっスよ?」
「う・・・」
「さぁ!とっとと顔を洗ってきてください!」
ベッドから立ち上がり優希さんの肩を軽く叩く。
「・・・ばか」
優希は俯いて、京にソッポを向いた。
京は笑いながら、各々に与えられた机があるオフィスルームへ歩みを進めていった。
『境田京のアルバイト』はこの形式で書いてみたいと思います。