19:独白
内には優しい京さん。
「さて、邪魔者もいなくなった」
テレビの電源をいれる。
テレビは芸人が出演する雑学番組だ。
……騒がしい。
樒の部屋に帰った後、今日は自炊ということで、俺と神楽ちゃんはお留守番で樒に夕飯の買い出しに行かせた。
神楽ちゃんは少し不満そうだ。
「まぁ樒は神楽ちゃんがまた勝手にどこか行くんじゃないかって心配なんだよ」
神楽ちゃんを宥める。
子どもに気を使う俺、マジでヘタレ。
こんな事なら、樒と神楽ちゃんが留守番で俺に行かせれば良かったのになぁ…。
『京が行くと余計な物まで買ってくるのは目に見えてる』
あれぇ、不思議な声が聞こえたよぉ。
「……まぁ。そんな顔するなよ。益々樒に心配かけるぞ?」
神楽ちゃんに笑いかける。
薄い反応。
そして沈黙。
軽く溜息をつく。
そして神楽ちゃんにテーブルを挟んで向き直る。
「……これから言うことは俺の独り言だ。気にしないでくれ」
神楽ちゃんは俺の発言の意図を掴めないでいるようだ。
でも、それはどうでもいい。
これは俺の自己満足だ。
思った事を言うだけだ。
ただそれだけだ。
「神楽ちゃんが来てから狼男騒ぎ」
「あの時、神楽ちゃんは狼男からの攻撃を変な壁で弾いたように見えた」
「甘々な判断で、それだけなら偶然かもしれない」
「けど、狼男と面識がある」
「会話も変な部分があった。狼男が言っていた『向こう』って何だ?そもそも狼男って何だったんだ?」
「神楽ちゃん、君は狼男に襲われた」
「奴の最初の発言から、狙われたのは樒や俺じゃなく、神楽ちゃんを狙ってたように感じた」
「樒の言う『夢で父親と言われた』からを二人を親子だと、そのまま受け取る程俺は馬鹿正直じゃない」
「第一、親子にしては年齢がおかしい」
「…………一体君は誰だ?」
神楽ちゃんは黙って俺の独り言に耳を傾けている。
狼狽えず、ただ俺の言葉を正面から受け止めている。
「………この際、神楽ちゃんが樒の娘でも恋人でも何でもいい。…………せめて、樒を巻き込まないでくれ」
本音を吐き出す。
アイツはホントにいい奴だ。
そんな樒を巻き込んでほしくない。
俺は神楽ちゃんを見つめた。
人の為に何かをするのは難しいものです。