16:昏倒
前話の前書きと後書きに同じことを書いてましたね。
ウールヴヘジン
彼はそう名乗った。
自分の名前ではないらしい。
なんでも『神の尖兵たる私には敵に名乗る名前など無い』そうだ。
その気構えは兵士ではなく、さながら騎士に相応しい。
「あ……アンタは人間か?」
京が口を開く。
「……姿が同じだけで同族と判断するのは早計というものだ。…一つ問おう。貴様は何を以て私を同族と呼ぶ?」
「……分からねぇから聞いてるんだろうが」
京の言葉に目を細め、口元は緩んでいる。
何やら嬉しいようだ。
「ところで、お仲間を斬っちゃったけど、良かったの?」
彼に質問を投げかける。
「ふん、自らの手に負えないからと他人に尻拭いをさせる輩など、生かしても後に足を引っ張られるだけだ」
手厳しいね。
「でも……喚ばれたなら仲間なんだろうが」
京が言う。
「……ああ。だが、あのような誇りの無い者など最早仲間ではない」
確固たる意志。
「ふん、そうかよ」
京は釈然としない様子だったが、否定も出来ないようで、苦々しく吐き捨てる。
対して彼は京との会話を楽しんでいるようだ。
すると、彼は僕に顔を向けて睨んでくる。
漸く始める気になったかな?
「さて、始めるかい?」
「……いや、今回はそのつもりは無い」
意外だね。てっきり『いざ尋常に勝負』と言ってきそうだったのに。
僕がキョトンとしていると、彼が言葉を続ける。
「これは其れの戦い。今、私に戦う道理は無い」
事切れた狼男を見ながら言う。
「……僕たちを狙ってるんだよね?」
「後ろの二人を守りながらでは満足に動けまい。そこを一方的に…というのは私の矜持に反する」
あら、お見通しなのね。
彼の気遣いに苦笑する。
「……良い仲間がいるようだな。震えているが、臆しても逃げ出そうとしない。立派な男だ」
本当に彼は……京は凄い奴だよ。自信を持って言える。
彼は吸い終えた煙草を狼男の屍に向かって放る。
煙草の火が血を吸って音を立てて消える。
「相対していなければ貴様らとは良き友となれたであろうに……」
「どうだか」
京の台詞を拝借する。
確かに、争っていなければ友達になれたかもしれない。
だけど、そんなifを持ち出す気は更々無い。
ifの時点でどう足掻いても到達できない可能性なのだから。
ifは希望を齎すが、同時に絶望も齎す。
過ぎてしまった選択の分岐点程、心を乱し、羨望し、失望を齎す物はない。
もしifが実現可能なら、自らの体を差し出さずに済む方法を模索、実現させただろう。
しかし、それは過去を省みる事を引き換えにしてしまうのだろうけど。
……詮無い話だね。
「……また遭おう、優しき者よ。次は無いと思え、我らの怨敵よ」
そう言うと突如、消えたはずの煙草の火が再び点り、狼男の屍をも巻き込みながら燃え上がった。
黒い炎。
彼は炎に向かって歩きだす。
黒い炎の中まで歩く。
本来なら炎に焼かれるはずの彼は悠然と立っている。
その体が全て黒い炎に飲み込まれた瞬間、炎は彼と狼男の屍ごとかき消えてしまった。
そこには何も残っておらず、道路一面には散った血液と狼男が作った小さなクレーターのみが残った。
緊張が解けたのか京は道路に仰向けに倒れ、同じく神楽は腰が抜けたのか座り込んでしまった。
「し、死ぬかと思った」
神楽も同意しながらも、京の様子を見て苦笑している。
「さて、二人とも。くつろいでいるところ非常に申し訳無いけど……」
「あ?どうした?」
「早くここから離れようか」
そう言いながら一歩踏み出すとと同時に、僕は意識を失い倒れてしまった。
15話と16話はお酒が入っている状態で書いたのでなんだか内容が把握しきれてません。
お酒飲みながら更新するもんじゃないですね。