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15:別人

話に感情の起伏が無いです。


樒が空を見上げた。



風が吹き……いや、風が樒を中心に渦巻き、何かが集まっていくのが分かる。



近くのゴミ箱が倒れ、電線が激しく唸る。



街灯は紫電を放出しながら激しく明滅を繰り返す。



空気が震えて地面が揺れる。



俺はこんな事は体験したことがない。



地面が震える瞬間を体験した事がない。





そして、樒が震える。





「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」




こいつは誰だ?




樒じゃない。




樒の姿をした誰かだ。




体が震えた。




理性では樒と分かっていても、本能は『コイツは樒ではない』と叫んでいる。






そして全てが収まる。







「ははは…………ふぅ……。久しぶりだね、表に出られるのは」






誰だ?






見掛けと気の抜けた声は樒だが、雰囲気がまるでちがう。






「ありがとう京。君のおかげで時間が稼げたよ」




何というか尊大な物言い。




「……テメェは誰だ?」



言葉を絞り出す。




「ん?僕は樒だよ?」




嘘だ。



もしホントだったら後で謝ればいい。




「……その口でもう一度樒の名前を語ったらぶん殴るぞ、コラ」




即座に否定してやる。



強気で言っても、俺は片膝を地面につけた体勢。



格好悪い。



でも、膝が大爆笑で立てないんだな、これが。




「……いやはや手厳しいね。流石は僕の友達だ」




肩を竦めながら『やれやれ』といった表情をする樒。



樒は、身構えた狼男を一瞥すると、神楽ちゃんと向かいあって悠然と立つ。



「神楽、久しぶりだね」




頭を撫でる。



神楽ちゃんは目に涙を浮かべながらも笑う。




「苦労かけたね。もう大丈夫だ。……ミーちゃんの傍に居てやってくれないか?」




……樒に『ミーちゃん』て言われた。





神楽ちゃんが俺のすぐ傍に来るのを見届けつつ、狼男を遮るように俺と神楽ちゃんの前に立った。




そして、狼男に向き直る。






「……さて、狼男クン。嘗ての続きをしようじゃないか」











そこからは、次元が違った。




樒が狼男を圧倒していたのだ。



先程まで青い顔をしていたのが嘘なほど躍動的に踊り、狼男を翻弄する。



狼男は樒について行くので精一杯のようだ。



「くっ!手前ぇは自らを生贄として差し出したはずだぁ!何故ここまで動けるぅ!?」



狼男が叫ぶ。



樒は飄々と答える。




「拘束は体のみ。魂まで喰われるほど落ちぶれてはおらんよっ」




樒の左手と狼男の右手が交差する瞬間、狼男の右腕に手を翳す。



狼男の右腕が落ちる。

断面は刃物で両断されたように滑らかなものだ。



切断面がグロい。吐きそう。



右腕は路上を転がり、意思があるように暫く跳ね回る。



狼男の血液が辺り一面に飛び散る。



「ぐぅっ!手前ぇっ!なんでそんな力を隠してやがったぁ!?」




荒れ狂い叫ぶ狼男。




「隠す?はて?何のことやら?」




対して樒は冷静そのもの。

余裕綽々……といった様子だ。



狼男は後ろに跳び、樒から距離をとる。



右腕からは狼男の心臓の鼓動に合わせて血が流れる。



「ちぃっ!予想外だぜぇ。ここまで出来るとはなぁ!」




右腕を押さえながら悪態をつく。




「侮ると足下を掬われるよ?……あ、もう京に掬われてるかな?」




樒は狼男を笑う。



……ヤらしい性格だな。

こんな奴の子どもで、よく神楽ちゃんは素直に育ったものだ。




「ほざけぇ、死に損ないがぁ!」




「それはお互い様さ」




『口八丁』




今の樒のためにある言葉だな。




狼男は樒の余裕そうな態度にたじろぐ。そして呟く。




「仕方ねぇ……、喚ぶか……」




僅かの間、目を閉じて……開く。




そして、意を決したように、



「……我が右腕を贄として眷属を此岸に喚び寄せるっ!」



叫ぶ。




すると、その声に応えるように、切り落とされた狼男の右腕が地面から跳ね上がる。




そして、空中で静止。



霧散。



その場で黒い霧が竜巻のように渦巻く。


丈約二メートル。



黒い霧が人の形に構成される。



うぅ……目が回る。また吐きそう。



竜巻が収まると、そこに毛皮のコートを羽織った男が現れた。




……趣味ワリィな。このご時世に毛皮のコートかよ。




「……ここはどこだ?」




男が俺たちと狼男、周りの景色を見てから疑問を呈す。



神楽ちゃんは男の視線にたじろぎ、俺の腕を掴んだ。



震えている。



俺も言わずもがな。




「そっ、そこのガキと野郎が我らの怨敵だぁ!」




狼男がこちらを左手で指差しながら叫ぶ。



……一気に小物臭くなったな。



そう言われた毛皮コートの男はこちらを見て、興味が無さそうに溜息をつく。



男はコートのポケットから煙草を取り出し、馴れた手つきで火を点けて一服。



狼男の元へ歩き出す。




「おい、貴様が私を喚んだのか?」



「そっ、そうだ!あの野郎ぉ、力を隠してやがったぁ!!手前ぇの力を借りてぇ!」



「…………そうか」




そう言うと毛皮コートの男は右手で持っていた煙草を銜え、右手を空にゆらりと上げて、






振り下ろした。






「あぁ?」




狼男の声。



狼男の右肩から左腰に線が走る。



切断。



上半身が地に落ち、遅れて下半身が倒れた。



狼男の血がどろどろ流れ、広がっていく。





「ふん……、気に入らんな」







……普通、腕を振っただけで体を切断する事って可能なのかよ、オイ。





あ、さっきから吐きそう吐きそうって思ってたけど、とうとう吐いた。

話の内容の割に感情の起伏が無いですね。



読んで下さってる方はいるのでしょうか?

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