12:帰路
朝から更新です。
「京はさ、元から僕を大将に会わせるつもりだったの?」
『淵瀬』を出た後、夜道を歩きながら京に尋ねる。
「いや、そんなつもりは無かったなぁ…。タイミング良かったから成り行きで」
「そうなんだ…」
「でも、聞いて良かっただろ?」
「まぁね。良くも悪くも神楽ちゃんと僕に関係する情報は手に入ったよ」
でも、余計な情報ばかりで困るし、第一頭が付いて来ない。
頭がパンクしそうだ。
「ところで、何で大将と知り合ったの?」
他愛のない話を振って思考を誤魔化す。
「あぁ…、行き倒れてたら拾われた」
嘘だ。物凄くニヤニヤしてる。
「普通笑いながら言う?『嘘です』って言ってるようなものじゃないか」
「どうだか」
京はさらっと流す。
どうせデートで使ったことがあるだけなんだろうな。
交友関係広ければ情報もより多く入ってくる。
その中で大将とも知り合ったのだろう。
「まぁ、オッサンのアレはかなり怪しいし疑わしいけど、本物だ。信じる信じないはお前次第だけどな」
「今更疑う気はないよ」
溜息をつきながら京を見る。
京……。彼は一体どれだけ広い交友関係の持ち主なんだろう。
毎日どこかへ出掛けてるみたいだし、『淵瀬』の大将みたいな普段の生活では交流の無いような人とも親しい。
神楽ちゃんも笑いながら受け入れた。
適応能力が半端じゃない。
黙り込んでいると、話の蚊帳の外だった神楽ちゃんが突然僕と京の手を掴み立ち止まった。
「神楽ちゃん?」
神楽ちゃんは道路のある場所を見つめている。
ある場所……電気が切れかけ点滅している街灯と自販機がある場所。
「おい樒。今……変なの見えなかったか?」
京も神楽ちゃんと同じ方を見たまま、僕に声をかける。
「変なもの?何かあるの?」
未だ二人は一点を見つめたまま固まっている。
僕もそちらを見る。
「街灯と自販機だね」
何の変哲もない自販機と、点滅する街灯がそこにはある。
再び二人に目を向けてみる。
「影が……揺れ……人……形…に……」
京は言葉を絞り出すように喋る。
「人?見間違いじゃ……ない………の?」
もう一度振り返って見る。
僕も見てしまった。
影が……点滅する街灯の光に照らされた自販機の影が、水の波紋のように揺れる。
影が揺れる。
揺れて歪む。
歪んで捻れる。
揺れて歪んで捻れた影が隆起して人影を形作った。
その影が点滅する街灯に一瞬だけ照らされた。
夢で見た狼男だった。
大して書いてないのにストックが尽きそうです。