11:黒霧
前話を更新した後、既に感想が書き込まれていたのに気付きました。
ありがとうございます。
こんな話でも読んでくださる方がいる事に感謝します。
「やっぱり、責任取ってた訳だな?」
オッサン!今、それ言う空気じゃねぇだろ!
てか最早俺の常識の範疇をブッ飛んでる。
「……身に覚えは無いけど、どうやらそうなるみたい」
真面目に応えた樒を見ていたオッサンは気まずそうに目を逸らした。
沈黙。
沈黙。
沈黙。
何分程沈黙が続いただろうか。オッサンが沈黙をやぶった。
「親子云々の件はもういい。……一つ気になる繋がりがある」
気になる繋がり?
「なんだ、それ?」
「……」
樒は黙ったままだが、オッサンをしっかと見据えている。
「クソガキには前に話したことあるよな?オレが見る繋がりは無数にあるって。」
オッサンは視線を俺に向けて尋ねる。
「ああ。『繋がりは人との結び付きの糸。生きていれば繋がりは無数に作られ、無数に切断されていく』…だったか?」
以前、話されたことをテキトーに思い出す。
「概ね正解だ。だがよ、お嬢ちゃんには繋がりの糸がほぼ皆無なんだよ」
「皆無……ですか?」
樒はオウム返しをする。
何だかんだで心の許容量を大きく超えてしまっているようだ。
「なぁオッサン。それってかなりおかしい事じゃないか?」
つまり、繋がりが無い=人との接点が皆無ってことだ。
友達との繋がりが無い。
親族との繋がりが無い。
ふらりと立ち寄ったコンビニの店員との繋がりすら無い。
さすがにコンビニの店員との繋がりは直ぐに切れるが。
それを差し引いても、とんでもなく異常だ。
「はっきり言おう。お嬢ちゃんは異常だ」
オッサンは冷徹に言い放った。
樒は顔を顰める。
「だが、それ以上に気になる繋がりがある」
「あ?オッサン、繋がりは皆無なんじゃねぇのか?」
「バカタレ、『ほぼ皆無』って言ったろぉに」
バカって言われた、バカって。
俺泣いちゃうよ?
「お嬢ちゃんには、兄ちゃんは勿論、クソガキ、オレとの繋がりだってある」
ま、当然だな。
「問題はそこもあるが本題は別だ」
「……なんですか?」
おや?久しぶりに樒が喋った。
まぁ!立った!ク○ラが立ったわ!
まぁ!喋った!樒が喋ったわ!
………じゃなくて。
「変な繋がりがある」
「ん?変って何が?」
「黒くて、変な霧みたいなものが零れてるんだよ」
「霧……ですか?」
霧って言われてもピンとこないな。
「それはなんですか?」
「……済まねぇ、兄ちゃん。オレが分かるのはこれまでだ」
「……そうですか。ありがとうございます」
樒がオッサンに頭を下げた。
「いいってことよ。あんま役に立てなくてスマンな」
「いえ、大変参考になりました」
オッサンは俺たちに『まぁ気ぃ付けな』とだけ言うとカウンターの奥に引っ込んで行った。
「いい話聞けたろ?俺のお陰だ」
「京は大したことしてないでしょ?」
まったく、俺が樒とオッサンを引き合わせてやったってのに。
この恩知らずめ。
「……でも、ありがとう。京」
そう言うと、俺に笑いかけてきた。
うん、撤回する。恩知らずって思ったこと。
ちなみに。
神楽ちゃんがトイレから全然戻ってこないから様子を見に行った。
従業員休憩室で従業員の皆に遊ばれていた。
次話、漸くです。