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転生帰録スピンオフ──皓矢と名探偵ルリカ  作者: 城山 リツ
事件簿① 二本の矢盗難事件
3/8

サスペンスのセオリーなんだよ!

「えーっとぉ、まず被害にあったブツの情報を整理つるわよ」

 

「はあ……」

 

 ルリカはどこから持ち出したのか、小さなメモ帳とボールペンを器用に持っていた。

 

「行方がわからなくなったのは、翠破(すいは)紅破(こうは)っちゅー矢だったモンのやじりらね?」

 

「そうだねえ」


 息抜きの休憩のつもりで皓矢(こうや)はこの茶番に付き合うことにした。だから返事は自然と気の抜けた感じになる。

 

「こいつはあれでしょ?(ぬえ)の亡骸から出てきたんだったね」

 

「翠破はね。紅破の方は鵺化した蕾生(らいお)くんが吐き出したんだ」


 皓矢が説明すると、ルリカはまたペッと唾を吐く真似をしながら言った。

 

「あー、あのクソガキね。いっちょ前に金色の鵺なんかになりおっていまいまちい」

 

「あれは凄かったよねえ」

 

「その事でこーやにおはなちがあります」

 

「うん?」


 ルリカは急に真面目な顔になったと思ったら、次の瞬間には湯沸かし器のように興奮してまくしたてた。

 

「あのね!あのクソガキが金色でも、あたちは勝ったから!それを勝手に降参なんかちて!」

 

「いやあ、どうかなあ……?」


 皓矢が目を泳がせながら言うと、ルリカはずいと顔を近づけてヤンキーのように睨む。

 

「はあん!?金色だろうがうんこ色だろうが、よゆーだったから!」

 

「ルリカ、レディがそんな言葉を口にしてはいけないよ」

 

「あら、おほほ、いけない。あたちとしたことが──ってあたちに性別なんかないから!式神だから、鳥なんだから!」


 ノリツッコミができる式神は全国探してもルリカだけだろう。そのことは誇らしいと皓矢は思っている。

 

「鳥扱いすると怒るくせにぃ」

 

「式神扱いすればいいんだろーが!刺してねじるよ!?」

 

「それは痛そうだ」


 終始のんびりにこにこしている皓矢にルリカは毒気を抜かれた。

 

「……まあ、いいわ。あたちは過去は振り返らない女なの」

 

「自分から振り返ったよね?性別ないんじゃなかった?」

 

「慣用句でしょうが!揚げ足とってんじゃないよ!こーやのくせに!」

 

「はーい」


 皓矢はすっかりセルフエンタメとして楽しんでいる。

 

「ったく、これだから人間の相手は疲れるわ」

 

「それで?どこから調べるんです?名探偵さん」

 

「そうらね、まずはげんばけんしょーとしょーげんを集めるわ!」

 

「おお、本格的」


 皓矢が拍手でもって称賛すると、ルリカもまんざらでもなく胸を張った。

 

「昨日、再放送の刑事ドラマでやってた!おじさん二人のやつ」

 

「ああ、なるほど」

 

「そんで、こーや。翠破と紅破を最後に見たのはいつ?」

 

「えっ?……そうだなあ、えーっと」


 皓矢が迷っていると、ルリカはキラリと視線を光らせてカッコつけた。

 

「めーかくに答えないと重要参考人でしょっぴくからね」

 

「僕は被害者では?」

 

「最初の被害者とか、第一発見者とかが一番犯人の可能性があるんだよ!」

 

「よく見てるんだねえ、サスペンス」


 皓矢が感心していると、ルリカは更にのけぞらんばかりで得意になっていた。

 

「ふふん、あたちのヒマな一日を舐めてもらっちゃ困る。その気になればチャンネルを駆使して再放送が一日中見れるから!」

 

「マイブームなんだねえ」

 

「さあ、最後に見たのはいつ!?」


 ルリカがずい、と迫ると、皓矢は天井を見つめながら懸命に思い出そうとした。

 

「ええっと、昨夜かなあ?遅くまで調べものしててここで寝落ちしたろう?目が覚めてからは見た記憶がないかも……?」

 

「なるほどぉ、敵はゆうべ、こーやが寝静まったのを見計らって犯行に及んだのか……」

 

「いや、侵入者がいたらさすがの僕も気づくけどね?」


 皓矢のつっこみはルリカには聞こえていない。



 

「よーし!次は現場ひゃっぺんなんだよ!」

本編の「転生帰録──鵺が啼く空は虚ろ」も是非一度ご覧ください。

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