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灯純が訪問してきた日以来、毎日灯純はやってきた。そして岸丸先輩も心配して家に毎日来てくれるようになり我が家の静けさはどこかへと行ってしまい毎日騒がしい日を送っている。


「菜〜子、ただいま。ケガの具合は?」

「あ、灯純くん。菜子ちゃんのお世話は俺だけで大丈夫だよ。特待生だから忙しいよね、無理しなくてもいいんだよ」

灯純が家に来ると既に来ていた岸丸先輩がそう言った。この2人は気が合わないのか、何かとギスギスしている。

「灯純、ありがとう。大丈夫だよ」

「でも心配だから。あ、菜子今日泊まってもいい?」

「いいけど…」

と私が了承すると岸丸先輩は驚いた顔で私を見た。

「だめだよ!灯純くん、俺が泊めてあげるよ。菜子ちゃんも甘やかしちゃ駄目だよ!」

「前から菜子の家にはよく泊まってたから平気ですよ、ご心配なく」

と灯純はニヤリと底意地の悪い顔で岸丸先輩に笑いかける。

「それでも駄目。もし灯純くんが泊まるなら俺だって泊まるよ」

と岸丸先輩が食い下がると

「岸丸先輩は駄目です」

と今度は灯純の表情が変わり真顔になる。

(2人とも仲が良いのか悪いのか…)

私は2人の忙しないやり取りをボケーッと見ていた。


私は暫く休んでいた学校へも行くようになった。

騒がしくなった日常にもだんだんと慣れた頃、学校の校門にとても可愛らしい女の子がいた。

(わー、可愛い子)

私は素通りしようとすると、

「あの、畑花さんですか?」

と呼び止められ驚いた。

「え、はい?」

「私、灯純くんとお付き合いしている八条薗紫吹と申します」

「あ、どうも…(あれ?別れるとか言ってたよね?)」

「お話しがあるのですがよろしいですか?」

「あ、はい」

と私は戸惑いながら彼女についていく。


彼女に連れられて黒い高級車に乗せられる。

「すごっ」

思わず車に驚く。お金持ちのお嬢様だなと感心していると、紫吹と名乗った子は私を真っ直ぐに見据えて

「灯純くんから離れて下さいませんか?」

と言われた。あまりの突然の言葉に

「え?」

と固まる、そもそも付き合っては居ない。

告白はされたが断っているし、灯純からは別れると聞いた。

話の展開に疑問ばかりが浮かんでくる。

「灯純くんは、私が幸せにします。彼の家庭が不幸だった事も知っています。そして彼をこれからも支え続けます、ですから灯純くんから手を引いて下さい」

「あの…私と灯純は付き合ってないんですが」

と私が言葉にすると

「知ってます、けど灯純くんはそれでも貴女が特別なんです」

紫吹は泣きそうな顔で私を睨んでくる。

「私から灯純くんを取らないで下さい」

彼女の覚悟を決めたような目が怖かった。

「あの、お約束できないです。灯純は自分の考えがあります…私が何か言ったところで…」

「なら、今度こそ灯純くんの前から消えて下さい」

「ん?」

「そうしたら私がずーっと…彼を支えるから」

「あの…今度こそ?」

「何でもありません、灯純くんは返してもらうので」

紫吹はそう言うと私の家の近くで私を車から降ろした。


「なんだったんだ」

私は家に帰ると灯純がいた。

「灯純、ただいま」

「菜子、お帰り」

私は居間で勉強していた灯純を見ながら先程の出来事を伝えた。

「さっき、紫吹って女の子に会ったよ」

「え?何かされた?」 

「うーん…灯純の事がまだ好きなんだろうね、返してって言われた」

「あー、気にしないで?別れ話はしてるから」

「そうなんだ…」

「うん」

「…ちゃんと話できたのかな?紫吹さんは納得してないよ?」

「納得してもらう必要ある?」

と灯純は本当にどうでもいいという顔をした。

「いや、お付き合いしてた人なんでしょ?相手が納得してないのに…いいの?」

「別に?まぁ、菜子が気になるなら話すよ。はい、この話は終わり!俺夕飯作ったんだよ?食べるでしょ?」

「…うん」

「一緒に食べよう」

と灯純はニコニコと嬉しそうにしている。

これ以上言っても話は進まなそうなのでその日は諦めることにした。

紫吹と灯純の関係に私から何かすることはできない。様子を見るしか無いかと無理矢理に納得することにした。


紫吹との一件以来二人の関係については触れないようにしていた。

灯純は相変わらずだし、岸丸先輩も来てくれて騒がしくて忙しくも日々を過ごせていた。

腕の怪我も良くなり、だんだんと以前と同じように動けるようになった頃だった。


「畑花さん」

学校帰りに私は紫吹にまた呼ばれた。

「お話があるので乗ってください」

「はぁ…」

また何事かと私は警戒しながら紫吹に言われ車に乗り込んだ。

車が走り出すと紫吹は暗い顔をしていた。

「えーっと…何かな?」

と紫吹に問いかけると紫吹は

「私、あなたが嫌いです」

「えっ」

何か面と言われるとグサッとくる。

「灯純くんに特別に思われてて本当は満更でもないんじゃないですか?彼を振り回して楽しんでるだけじゃないの?どうせ付き合わないなら何で私に譲ってくれないの?」

息をつく暇もないほど私に言葉を浴びせる紫吹。

「そんな、物じゃないんだから・・・」

と私は言葉を返そうと口を開いたが紫吹の耳には何も届かない様子だった。

「私は灯純くんがいなきゃダメなの。どんなに尽くしても振り向いてくれなくても私が傍にい続けたらいつか私を見てくれるかもしれない。なのにそれを貴女が邪魔するから・・・だから嫌い」

「・・・」

なんと返せばいいのか、紫吹の耳にどうしたら私の言葉が届くのか分からなくて私は口を閉ざしてしまった。紫吹はなおも話続ける。

「貴女、灯純くんに興味ないなら彼を振り回さないでよ。灯純くんが可哀そうよ。私なら彼に愛を注ぎ続けることができるのに、見返りなんかなくても私はそれでもいいのに、私は彼が傍にいてくれたらそれだけで幸せなのに・・・なのに何も叶わない」

紫吹は私を暗い瞳に映した。そのプレッシャーに私は固まるとふいに電話の音が鳴った。

(灯純)

着信の名前を見ると灯純だった。

「もしかして灯純くんなの?」

紫吹は二コリと笑って

「貸して」

と手を差し出した。

「一度私が電話に出てからね」

と紫吹に伝えて私は電話に出た。

「もしもし?」

『もしもし?帰りが遅いから心配になって。今どこ?』

「紫吹さんといるよ」

『なんで?』

「話があるって言われて・・・」

『はぁ、この際だからハッキリさせようか』

「はっきり?」

『そう。紫吹に電話代わって?』

「うん」

私は紫吹に電話を渡すと嬉しそうに受け取り灯純とやり取りを始めた。

「はい、わかりました」

電話を切ると運転手に何かを伝えて紫吹はどこかへ向かい始めた。

「どこに?」

「灯純くんと待ち合わせです」

と嬉しそうに私に伝えた。


その後、家の近くの公園についた。

灯純はベンチに腰掛けて待っていた。

「灯純くん」

と紫吹は嬉しそうに灯純に駆け寄り私はその後をゆっくりとついていく。

灯純は私達に気づいて直ぐに立ち上がった。

「菜子」

と灯純は心配そうに紫吹を素通りして私に駆け寄る。

「大丈夫だった?菜子は人の話を聞きすぎだよ、次からは何言われても車に乗ったらダメだよ」

「まぁ、そうだね。関係ないのに首突っ込むみたいになっちゃったしごめんね」

「菜子が無事ならそれでいいよ」

と灯純は私の頭を撫でた。その様子に紫吹はイライラした様子で声をかける。

「ねぇ、話があるんだよね?灯純くん」

「うん」

「なに?」

「いい加減しつこいからさ、分かってほしくて」

「え?」

「俺は別れるって言ったんだよ。菜子に近づかないでくれない?」

「そんな事言われても無理よ。私別れたくないの、2番目でもいい。菜子さんの次でもいいから、都合のいい女でいいから側にいたいの」

「俺には菜子しかいないから、アンタはいらない」

「でも菜子さんは灯純くんのこと好きじゃないでしょ?灯純くんとは付き合わないって言ってたよ、私なら灯純くんを支えられるし何でもしてあげるわ。何もしてくれない菜子さんなんか好きでも灯純くんがくるしいだけじゃない」

と紫吹は捲し立てる。

「俺は菜子しか無理。何回も言わせるな、いらないんだよアンタは」

「何で?どうしても?」

紫吹は怒りに満ちた目で灯純を見ていた。

「うん」

「ふふふ、でも灯純くんは私から逃げられないんだよ?菜子さんがどうなってもいいの?」

「は?」

灯純がイライラした様子で紫吹を睨んだ。

「あのね、裏雪リリって覚えてるでしょ?」

「何でお前が知ってるの?」

「パパの病院の患者なんだよ、たまたま彼女が騒ぎを起こして入院した病院がうちの病院だったの。それでね葉里くんに灯純くんの昔の話を聞いた時に聞いた事ある名前だったから調べたら灯純くんの小学校のときの彼女だったんだね」

と紫吹はニコニコと楽しそうに話し始めた。

「だからね、その子の部屋に手紙を書いて包丁を買えるようにお金も渡してあげたの。抜け出せるようにアドバイスも書いてあげたんだよ。その後あの事件が起きたでしょ?凄いよね、狂人ってあんな行動するんだね」

と面白そうに話していた。私はその話を聞いて寒気がした。

リリが抜け出した病院は紫吹の親の病院だったんだ。

あの事件で何でリリがバイト先まで来たのかようやく分かった。

最初に家を襲った後からは紫吹がリリを使って私を殺すよう仕向けたんだ。

「何でそこまで…」

と私が言うと紫吹は淡々と

「邪魔だったから」

と呟いた。その後私を睨みつけて

「灯純くんは菜子さんの話をするだけで愛おしそうに微笑むの。そんなの耐えられない、私には少しもそんな顔をしてくれないのに。だから邪魔だと思ったの」

それから紫吹は灯純に向き直って

「ふふふ、裏雪リリって壊れてるでしょ?だから直ぐに出てこられると思うの。それに未成年だしね…。また菜子さん狙われちゃうかな?医療措置で入院してくる患者さんが多いからスタッフも忙しいだろうし、何かの手違いでうっかり逃しちゃうかもしれないし、退院しても振り返して菜子さんを殺しに来るかもしれないし…大変ね。もし菜子さんの事をうっかり漏らす人がいたら今度こそ殺されちゃうかもね」

と灯純を見つめている。

「そう、裏雪を使って菜子を殺させるって脅してるわけ」

「そんなつもり無いわ。ただ、うっかりってこともあるでしょ?」

とニコリと醜悪に紫吹は微笑んだ。


私はここまで話を聞いて思わず紫吹に

「あのね、そうまでして灯純を手に入れたくても心は手に入らないよ。人の人生を簡単に操ろうとするのはやめて。私を狙うなら勝手にすればいい、私を使って灯純を脅すのは卑怯だよ」

と言うと灯純は止めに入った。

「菜子、大丈夫だよ。俺が今度は守るから」

「でも危ないよ。リリは本当に何するか分からないんだから。それに私をダシに使われたからって灯純が犠牲になるのもおかしいでしょ?」

「心配してくれるの?嬉しい」

とギュッと私を抱きしめた。そらから私の額にキスをして

「大丈夫だから先に帰ってて?俺が何とかするから」

「けど…」

「帰らないなら癪だけど岸丸さん呼んで無理にでも帰すよ?」

「でも、何かあるかもしれないし…」

「大丈夫。俺を信じてね、夕飯作って待ってて?」

「…」

私はこれ以上なにも言えなくなり紫吹に

「灯純に嫌な事はしないであげて」

「灯純くん次第かしら」

と言うと紫吹はニヤリと笑った。


それから灯純に再度早く帰るよう強く言われて帰ることにした。

気になるけど、灯純なりに決着をつけるかもしれない。









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