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BREAKER  作者:
序章
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第二話 Maybe


「マコト」


 夢は見なくても、ただ深く眠るような人生を送りたい。そう思うのはごく自然な話だ。そして、人生が都合良く望み通りにいかないというのも、同じく自然な話だ。


「マコト、起きて、山麺行くんでしょ」


 夕暮れの夢現は、いつも同じ。電車の揺れに眠らされ、夢を見て、レイに起こされる。

目が覚めた。そこにはなんでもない自分がいる。電車がガタガタゴトゴタと心地よく揺れる。向かいの車窓の向こうには、いつもと同じなんでもない町並みがある。隣には黒髪と、肩甲骨から立派に生える濡羽色の翼を持つ親友がその翼をちぢこませてお行儀よくちょこんと座っている。


 マコトはぼんやりとした頭が意味のない思考を巡らせていた。そうしなければすぐに眠ってしまうからだ。その思考とはこのレイに関してだ、普段考えてもみないがこうして近くでみるとレイは綺麗な顔をしていると考えていた。流行り廃りあるが、イケた顔にも系統というものがあり分類できる。そう、調味料の名前を付けるアレだ。もしも、分類するのなら砂糖顔という奴だた思った。目元は丸く優しげな印象を見るものに与える。体格の方は中肉の範疇ではあるがガタイは良い方だ。次にその注目を黒翼に移す。夕陽に照らされた黒翼は玉虫色の煌めきを帯びていた。

 翼に顔に、何かと絵になる男だなとマコトは思った。それがなぜかという所の仔細を考えたり、どういう顔をしているのか突き詰めるのが中々面倒な程度には、マコトは今、自室のベッドを欲していた。


「ああ……あー、うん……」


 当人曰く、自毛と信じられた試しのないほんのり微かに桃色がかった白髪をマコトは撫でた。眠気のままに瞳をパチクリとさせると派手な極彩色の虹彩が明滅するように見え、その様子はひらと舞い落ちる花弁にすら似る。カラーコンタクトレンズは装着していない、正真正銘生まれ持っての瞳。しかし、特別目が良いという訳でもないという。詠航(よみわたり)マコトという生き物は、不可思議な色合いをしていた。

 レイはウトウトと眠りそうなマコトの顔を覗く。パッチリなんて擬音の聞こえてきそうな目元、その奥底の万華鏡の咲く瞳の貌は、普段は強い意志を帯びていている。彫りの深い濃い顔立ちはその印象をよく手伝う。二重の瞼、上下の均衡の完璧な唇、少し小さな口、鼻筋の通った高い鼻にシャープな骨格の端正な顔つきで、特殊体質者の中でもかなり美しい部類の髪と瞳はその白い肌によく合う。制服姿にアンニュイな雰囲気を漂わせることにおいては右に出る者などいない。彼が変わり者でなければ、もっとモテたろうにとレイは内心苦笑した。


 マコトはいつもの通り、よだれを垂らしていないか密かに確認し、妙な寝言を言ったり、レイに凭れたりしていなかったかどうか、内心で心配してみた。もしも、いつもと違う事があるとすれば、眠り、起こされ、この光景があるということに、この頃とても堪らなくなる事だけだ。けれども、ただ感じただけの事を敢えて言葉にしなければ、人間はすぐに忘れ去ってしまう。忘れ去った事すら、明日には忘れ去っている。そして、目が覚めた時、その瞬間と同じようにこの頃どう感じていたのかを思い出す。

うつらうつらとしながら意識を保つことを続けていればすぐに最寄り駅に到着する、そうなれば意識は不思議と覚醒するから、これまで通りそのままに任せた。


 駅に着くとマコトはグレーとブラックのリュックサックを背負い、レイはブラウンのトートバッグを手に降車すれば、改札を抜けて駅から出た。

 自然などほとんど感じられないコンクリートロード、そこそこ統一感に欠けそこそこ便利なありがちな町並み、自動車たちの走る音の静と動、音響式信号機の知らせる横断の時間、自転車で道を通り抜ける学生たちの話し声、どこかの家の夕食の匂い、スーパーマーケットでの買い物帰りの母親、よく知る光景だった。

 都会も田舎も空は同じで秋の空は遠く、すると、世界が少し広いような気がするし、肺に吸い込む空気も涼しくて気が抜ける。何より、駅から出た瞬間、レイが一、二度大きく翼を広げて楽そうにするものだからそれを見ているとなんだかマコトも気が抜けてしまう。電車では特にそうだが、道を歩くときでも何でも邪魔にならないようにしなくてはならない為、こうした節目節目で体を一瞬楽にほぐす癖があることをマコトは知っていた。


 大して車が通らない事のわかっていて、しかし決して通らないわけでもない。信号無視するかどうか悩む程度の長さの横断歩道も、この羽黒(はぐろ)レイといる時は法令遵守することになる。


「山麺、来年の春に閉めるらしい」マコトは、信号待ち中にそういえばと思い出した二人にとって共通の悪いニュースを伝えた。


「えーー、そうなの?美味しいのに」レイはその店の味はそこそこ気に入っている程度だった、それでも通えば──マコトがやたらと好むから、自然と通っていることになっただけだが──愛着も湧く。


「大将言ってた、もう歳だって」

「そうだね、もう80くらいいってたっけ?」

 古めかしいラーメン屋の店主は、変わり者の爺さんだった。他に従業員もいないが、爺さんは見かけによらずキビキビ動くから気になった事はない。それでも相当な歳な事は見ればわかることだ。


「さあ、そんくらいいってるんじゃねえかな、でも、卒業まではやってるからいいだろ」

「そうだけど」

 車用信号機が青から赤に変わる。車道の音が途絶えて、声がはっきり通るようになり、いやに声を張らなくて済む。

 仮に今通ってもまず車に轢かれる心配はない。マコトは一歩、車道と歩道の境界ぎりぎりに踏み出してみる。けれど、レイは動かない。マコトは進んでしまうか迷ったが、レイの前でもあるしお行儀よくする事にした。


「すぐにじゃないから、まだマシってこと。まあ、寂しいよな」マコトは首だけ振り向いて、言葉に真意を付け足した。

「なら、今のうちに食べようよ、結構食べてる気もするけど」と、レイはいった。


 歩行者用信号機が青に変わる。二人は歩き出した。マコトは僅かに歩調を緩め、すぐに横並びになる。


「まあな、なんか知らねーけど気に入られてるからチャーシューサービスしてくれるし?」と、マコトは笑った。

 サービスのあった日の帰りにはラッキーだったぜと、子供っぽく喜ぶことをレイは知っている。その時と同じで本人の意図せず、子供全開だった。

「いっぱい行く理由そこ?」と、レイは突っ込む。

「いや、サービスない店としてくれる店どっちがいいよ」誘導的な質問だ。

「してくれる店だけど」

「そういうこと。しかも、チャーシューは特に美味い」詭弁な気もするが、得意げにマコトは笑った。

「でも、よく飽きないなあ」レイは呆れ半分に言った。

「他にも家系とかもいくだろ、割とローテだぜ」

「でも割合多いし、最近食べる頻度増えたじゃん」レイのこの指摘は確かに正しい。マコトは少し考えた為に、一瞬答えに詰まった。


「なら、今度どっか新しいとこでも行くか?どっか行きたいとことかあんの」

「最近ラーメン行き過ぎな気もするけど……美味しい塩ラーメンの店あるらしいから、そこ行きたい」

「いいじゃん。お前がその気なら行くぜ。俺は太らんから気にしねえし、お前もまあ平気だろ」

 味の好みが多少違うことはマコトもわかっていた。レイの提案に乗ると何とも楽しみそうにするので、そこに行きたいというのが正解なのだなと答え合わせが済んだ。

「マコトはもっと食べなよ、体は資本なんだから」「はいはい」レイの言葉はマコトに流される。

「体力もあんまりないし」

「うるさい、体の割には食べてる」

「じゃあ勝負する?」「体格差考えろよ」身長およそ165cmの細身な少年は、やはり男らしさには少し縁遠い。それに比べて10cm弱ほど背が高く体格もマコトに比べてしっかりとしているレイと並ぶと尚更華奢に見えた。

「ちっさいもんね」と、レイはマコトの頭のあたりに手をあげて笑う。

「ズルいぞ、こいつ!」マコトはむっとしてレイを見上げた。

「ズルかないよ」とレイは笑った。


 二人はそんな他愛無い会話をいつもの通りに続けながら町を進む。少し横の通りに入って、しばらくすると目的のカウンター席だけの小さなラーメン屋、山麺に着いた。扉を開けて入ろうとすると先客の男が一人帰ろうというタイミングだった為、翼が邪魔になるレイは一度下がって先客に譲った。先客の男は現場労働者というような格好で、すいませんとレイに言葉をかけ、ごちそうさまでしたと大将に言って帰っていき、大将はまた来なと声をかける。

 マコトほどというのは稀でも特殊体質者の髪色や瞳が奇妙な事はそこそこある。若者のファッション文化では寧ろ羨ましがられたりするし、染色等なのかも判別が付きにくい。しかし、レイのような人間のそれとはまるで違う身体的特徴を持つ事は意味が異なってくる。彼らは好奇の目線や差別の対象だ。しかし、決まってタフで力持ち故に肉体労働者が多い。だから、肉体労働者は異形の特殊体質者に失礼な振る舞いをする人間は少ない。


 正直、レイは少し安心した。自分は慣れているし、何にも期待してないから気になんてしないのだがマコトは必ず烈火の如く怒る。何より、暴力沙汰でマコトは勝ててしまう。仮に相手が特殊体質者であれ、それが複数人であれ、勝つだろう。勝てる喧嘩で矛を収めることは、難しい。


 店に入るとレイは可能な限りいつも右端に座り、マコトはその左に座る。それはレイが翼を極力他人に当てないようにしたいのと、マコトが左利きだからだ。

 マコトはリュックサックを座席の下の籠に押し込み、レイはトートバッグをストンと入れた。

「いらっしゃい、何にする?」と、無口な大将が二人に聞く。ぶっきらぼうな禿頭の老人だ。

「中そば、並。卵トッピングで」と、マコトがいった。

「中華そば、大盛りで」と、レイがいった。

 カウンターに置いてあるコップ、箸、レンゲをマコトが二組ずつ取って回し、レイがウォーターピッチャーで二人分の水を注ぐ。いつものルーティンだ。

「はい、チャーシューはサービスね」

 少しして、並盛りと大盛りが二人の前に出される。やや甘めの醤油スープ、王道のストレート中華麺、背脂がややスープに浮いている。生卵と青葱、メンマに薄めのチャーシューがトッピングされている。二人とも、チャーシューが三枚の所を五枚。そして、マコトの方は生卵が二つだ。


「いただきます」二人して手を合わせた。

 まずスープを飲み、それから生卵を解く。レイはチューブのニンニクを、マコトは少しのニンニクと多めの一味唐辛子を足す。大盛りと並盛りだが、決まって同じくらいかマコトが少し遅れるくらいで食べ終わりに差し掛かる。しかし、山麺では学生は替え玉が無料の為、ここで二人まとめて替え玉を頼み、二回戦に備え暫しの休憩が入る。


「あーー、美味い」僅かに残る麺を啜ると、マコトがいった。すると、「だね」と大盛りを平らげたレイが同意する。

「はあー……レイ、お前進路どうすんの?」マコトは水を飲み干せば、隣を見やる。三年の秋、青春真っ盛りな二人はもう進路を決める時期だ。

「ウォートルスに決まったよ」レイが答えた。

「おめでと。夢に一歩近づいたな」マコトが笑った。ウォートルスヒーロー事務所、ヒーロー志望なら皆が志す業界最大手事務所だ。

「ありがとう。でも、目標はまだまだ先だからできることは頑張らないと!現場はやっぱり怖いけどね」レイは頬をかく。

「お前ならウォートルスでもやってけるぜ。学校だって成績上位だし安定してる。あー……遂にお前がヒーローかあ」何様というような所だが、それでもマコトは断言した。感慨深いものがあるようだった。


「へい、替え玉おまち」大将が、替え玉を二人に渡す。二人は受け取った替え玉をスープに手早く入れ、二回戦を始めた。


 ヒーローとは、試験に合格し国からの認可を受け、免許さえ取れば書類上では誰でもなれる。資格保有者は有事の際における器物損壊など様々な法律違反を事実上認められ、能力による戦闘行為が可能な自動的に超法規的措置が取れる資格だ。巷では、殺人許可証と批判する者もいなくはない。だが、免許だけでは商売にはならない。フリーランスで活動する者もいるが、大抵は事務所に所属する。ヒーローの仕事は多岐に渡り、パトロールなど治安維持から怪異生物や災害発生時の避難や救助、特殊体質者による犯罪である異能犯罪の捜査協力、人気ヒーローならばテレビやCM出演まで、さまざまだ。

 レイの行くウォートルスはヒーロー事務所の中でも、特に人気の事務所だ。スポンサーには知らない者などいない有名企業が勢揃いで、福利厚生に出世の機会といい、ウォートルスは最も条件の良い事務所の一つと言って過言ではない。故に入れるのは、ごく一部のエリートのみ。だが、レイが入れるというのは別段驚く事ではなかった。


「マコトは、どうするの?」麺を啜り、飲み込むとレイはマコトを横目に聞く。

「……あー、あんまり、決めてないかな」マコトは目線をラーメンのスープに落とし、麺を啜る。

「ウォートルス志望じゃなかったっけ」と、レイは問うてみた。

「まあ、一応そうだったけど流石にスカウトは来てないよ。成績はそんなだし、そこまでヒーローになりたい訳でも……正直、俺には人気商売が向いてない事くらいしかわからねえ」と、マコトはため息を吐いた。テレビ映えする華やかで端正な容姿でも、その本質は飾り気のない抜き身の刀だ。真っ直ぐに突き進み、障害を薙ぎ倒すだけの暴力でしかない。

 ヒーローを目指すタイプは二種類。本気でヒーローになりたい夢と希望溢れるタイプ、選択肢がなく仕方なく目指すタイプ。レイが前者ならば、マコトは後者だ。

「俺でも、恵まれてる方だからワガママ言ってられないけどさ」マコトはそう言いながら、ウォーターキャッチャーを取り、自分のコップに水を注ぐ。そして、ついでにレイのコップにも水を注いだ。

「ありがと」


 ワガママ、奇しくも二人の中で同じ言葉が反駁していた。職業の選択はあくまで自由だ。しかし、なりたいものになれるとは限らない。


「何か、他にやりたいことがあったとか?」レイは聞いてみた。


 特殊体質者は、その体質にもよるがヒーロー、肉体労働者、ごく一部の能力で医療や研究機関、IT関係の企業や官公庁に就けるという例外を除いて正社員での就職先はほとんどない。特殊体質者であることを隠したり、無自覚である場合もあるから正確な統計はないが、それでも特殊体質者は圧倒的少数派、あくまで被差別者、世の中に恨みを持つ人間も多ければ社会生活を上手く送れない人間も多い。悪いイメージが変わってきたのも近年の話だ。特殊体質者を好んで採用する企業はほとんどない。


「やりたいことなんか、考えたことも……なりたいとか、そんなの無いなあ」マコトはいった。選択肢など、なかったのだ。


「まア人気商売は向いてないだろうけど、向いてるかなんてわからないのはみんなだよ。僕だって、そう」不器用な彼に、タレント性の求められる今のヒーロー業界は息苦しいだろう。けど、けれども、他に道がないのならば。


「君も受けてみなよ、ウォートルス」レイのまっすぐな黒い瞳が、マコトを覗き込んだ。


「なんでさ」マコトは目線をそらしもしない、吸い込まれそうな極彩色がまっすぐにレイを見つめる。

「条件良いし、マコトなら行けそうだから。それに一緒にやれたら、楽しいかなあって」レイは視線を逸らして、麺を啜る。

「やだね、学生が抜けねーよ。……ただ、それも悪くないかもな、考えといてやるさ」ノータイムで一蹴するが、すぐに満更でもなさそうにマコトは笑う。


 ヒーローという仕組みは、始めは寄せ集めの自警団に過ぎなかったものを企業や政府が担ぎ出し、孤独な特殊体質者を煽て、そのまま制度に組み込んだ暴力装置、名誉ある職務でありながら特殊体質者の管理機構としても存在している。実際の所、命懸けの仕事に違いないし、どうなるかなんてわからない。それでもレイとなら悪くないとマコトは思った。そう、悪くないが。


「しかし、世の中、薄情だよな」マコトはふと溢した。

「どうしたの、突然」当然レイはどうしたものかと聞く。

「いや、さ。ヒーローってのは命懸けなのにお行儀良くしなきゃあけないし、なにかあったらとりあえずお前が不甲斐ないせいだ!……だぜ」そういうとマコトは麺をレンゲに集めてから口に押し込んだ。ガツガツと余裕ない様子で食べるのは、ほとんどお腹いっぱいだからだろう。そして飲み込むと続きを話しだした。


「敵なんかトバしときゃいい。なのに、ズブの素人が愛と正義を説いてくる平和ボケ時代。……平和ボケだけは気をつけた方がいいぜ、レイ」

トバすとは、業界用語で命を奪うという意味だ。特に同じ特殊体質者相手の時の事を指す。命を奪ってしまうのは一番確実だが、ヒーローの人気には繋がらない。寧ろ、命を奪う行為は忌避される。


「君も一応素人でしょ。……ふふ、現場にいたらボケようもないから大丈夫」語っちゃってなんて笑いながら、レイは言葉を返した。

しかし、マコトの言葉には少なくとも一理はある。ヒーローも、どこまでいっても社会の歯車の一つに過ぎない。それでも、特殊体質者の就職先として、何より一般の人々がヒーローを通し特殊体質者を理解する事で共存を促進する社会的役割がある。だが、人々は己の気に食わないものを否定する為に、それを否定してくれる正義のヒーロー像をヒーロー達に押し付ける。安全地帯から正義を語り、安全地帯から批判する。煽てて矢面に立たせながら最適の暴力装置にはせず、一市民の人命をあくまで娯楽として消耗している。それもまた事実だ。


「でも、みんながみんなそういう訳じゃないのも、忘れたらだめだよ」レイは穏やかに諭すようにいった。


「それは……そうだな、なんかごめん」マコトの反論するような口調で始まった言葉の勢いは、一気に冷静な思考が追いついて尻すぼみになる。救われる人間の存在を、蔑ろにしてはいけないのだ。


 ちょうど、レイの方は食べ終わる。マコトがチビチビと残りをつまむのをいつも通り眺めながら、食べ終わるのを待っていた。

それも終わると、二人は代金を支払って、荷物を持てば元気にごちそうさまを大将にいう。

大将はそんな二人にまた来なといい、マコトがまた来ますといって、その小さな店から出た。


 外はちょうど夕陽が沈んでいた。ふと立ち止まって、先に歩くレイの背中をマコトは眺めていた。いつ見てもその黒翼は、ヒーローにはお誂え向きだった。


「マコト?」


 数え切れないほどこの二人で飯を食った、そして思うのはこの先そうでも悪く無いということ。だが、マコトは直感していた。ウォートルスには、きっと行けない。否、行かない。レイと毎日を過ごすのは、もう高校卒業までの話だ。


「ああ、考え事してた。帰ろう」


 人生何があるかなんてわからない、それにいつ死ぬかもわからない仕事をやるのだから、いつかこうして過ごす事がなくなる日は遅かれ早かれ来る。そう思えば、前に進む勇気が出る。ただ、そう思うとやっぱり堪らない気持ちになる。

詠航マコト

165cm/50kg

羽黒レイ

172cm/知らん

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