「星座の愛し子」と言われている私との婚約を破棄されるなど正気ですの? わかりました。では鉄拳制裁で。
第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞応募作品です。テーマは「星座」。
ちょっぴり(動きが)激しめですが宜しくお願いします。
「エレナ! 俺との婚約を破棄してくれ!」
こう言ったのは公爵令息のジェイク。
彼が別の女性を連れて現れた事で既に夜会は騒然となっていたが、婚約者のエレナへ告げた言葉が逆に場を静寂に包んだ。
「正気ですの? この婚約は国王陛下と公爵様がお決めになった事。何より私は」
エレナは露ほども動揺せず自信に満ちた微笑みを見せる。
「数多の星の中でも一際輝く乙女座の星に愛され、加護を獲ていますのよ。私の婚姻が国を繁栄に導くと星占い師も予言したではありませんか」
彼女は『星座の愛し子』と言われている。強大な力を持つ類稀な存在だ。
「だが俺は真実の愛をみつけたんだ!」
「ジェイク様」
ジェイクは傍らの令嬢を腕に抱いて言う。彼女も彼にヒシとすがり、うっとりと見つめあった。
エレナはふうと息を吐く。
「……わかりました。では鉄拳制裁で」
「え」
「たとえ私や陛下が許そうとも、天の星は許さないでしょう。ほら、その証拠に」
エレナの両手が青白く輝き魔力が迸っている。その光は徐々に彼女の全身を包んだ。対するジェイクはガタガタと震えだす。
「ま、待て」
「星の怒りを味わいなさい!」
エレナが床を蹴り、バシュウ!と風を切る音が響く。瞬く間にジェイクの真正面にエレナが移動している。
バチッ!
エレナがジェイクの左頬を張ると衝撃で彼の体は宙に浮いた。
バシュウ!
再度床を蹴ったエレナは倒れる前のジェイクに追いつく。
ガッ!
彼女のつま先がジェイクの体にめり込む。そのまま跳ね上げ、再度彼は宙に投げ出された。
ドドド!
更に追撃の拳が三発入る。ジェイクの体は“く”の字どころか最早“そ”の字の形だ。
「覇ァッ!」
エレナは身を翻し、その勢いで渾身の回し蹴りを放つ。が、割り込んだ別の男によって攻撃を止められた。
「!」
「その辺にしておけ。戦乙女と名高いエレナ王女と言えど一方的な制裁は感心しないぞ」
「貴方は」
彼女を止めたのは隣国の第二皇子であるディール。国賓として夜会に参加していたのだ。
「これは我が国の問題です。内政干渉ですわ」
「では俺がお前の夫になろう。この男との婚約は破棄するのだろう?」
「正気ですの!?」
「お前の様な面白い女が未来の女王ならば、その王配も面白かろう」
「……貴方も中々面白いですわね」
二人はニヤリと笑みを交わした。それを見ていた乙女座の星が震える様に瞬く。
星が言葉を話せるなら、きっとこう言ったであろう。
「怖いよぉ。私この娘に加護なんて与えてないのに……」
お読み頂き、ありがとうございました!
【12/28追記】
続編を書きました!そちらも読んで頂けると嬉しいです。
『前略、乙女座の星です。「チェックメイトおおお!」とか言う姫が私の加護を受けているという話のせいで困っています。』
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