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宅浪、そして大学へ...

作者: 能無し

桜よりも早く受験に散り、自宅という路頭に迷いこんだ18歳の私は、大学生ではなくただの無職になっていた。


 3月10日、私は大学受験に落ちた。本番の手応えはあまり良くなかったこともあり、ある程度落ちる覚悟はしていた。そのため、直後にそれほど落ち込むことはなく、涙で悔しさを披露するような場面も訪れなかった。実際のところ、この時はまだ受験に落ちたという実感がなかった。また、京大理学部前期一本の受験であったため、浪人が即座に確定した。自分の受験番号がないことを数十回ほど確認した後、高校3年生の時の担任に不合格であったことを報告した。その後、これからの生活について家族と話し合った。予備校での勉強が合わないと感じていた私は、自他ともに多少の不安を抱えながらも、宅浪をすることになった。


 3月半ば以降、大学がまだ始まっていないこともあり、周りの大学生になった友人達に対して疎外感を感じることはこれといってなかった。一緒にエヴァの映画を観に行ったり、カラオケに行ったりしていた。自分だけ大学生になれないことには勿論気づいていたが、精神的にくるので頭の片隅に放っておいた。勉強もスタートダッシュを切ろうと、並の浪人生以上にはよくやっていたと思う。


 点数開示がやってくるのは5月の初めなので、それまでは本番や直前の模試の手応えのみを頼りに勉強計画を練っていかなければならない。確実に成績を上げなければならないと感じていた数学・英語には、特に力を入れいこうと大まかに方針を立てた。


 あれこれ思索しているうちに、4月に入った。11時ごろに起きては昼食まで英単語を中心に詰め込み、その後は24:00辺りまで演習してはダラダラとTwitterをいじる。そして風呂に入ったのちに4:00付近までTwitterをいじりながらアニメや配信を観るのが至福の時間であったのは言うまでもない。このサイクルは模試、入試直前期以外ずっと続いてしまった。しかし、生活リズム自体は一定であり、自分に合っていたので特に危機感を感じたりすることはなかった。この時期も引き続き数学を中心に勉強していた。新数学スタンダード演習の数Ⅲ版をひたすら解き、計算力の育成と共に抜けている部分を埋めていこうとしていたと思う。


 この頃からスタプラやTwitter等で、他の浪人生と触れ合う機会が増えた。Twitterでは特に、全国の受験の猛者たちが集っていることもあり、地元の高校だけでは得られなかったであろう新たな刺激を得られた。また、同じ志望校の受験生たちの成績や勉強の進捗に触れることもできた。これにより、自分の立ち位置を再確認することとなった。


5月、入試の成績開示が届く。予想通りなのか、数学がとても酷く、次に英語が酷かった。Twitterを見ていると、私よりも大差で落ちている人はとても少なく、このまま一年勉強しても受からないんじゃないかという不安が募り始めた。そして、この引きこもり生活が2月終盤まで付き合わないといけないのかと思うと、未だかつてないほどの閉塞感を覚え、非常に憂鬱となった。Twitterをしながらアニメや配信を観たり、ゲーム音楽を聴き続けることでなんとかメンタルを保っていた。この時に、夏の冠模試の時点で安定して合格できるほどの実力をつけて、逃げ切ってやろうと決心した。


 冠模試に備えてお待ちかねの5月の参考書選抜が始まる。

数学・・・新スタ演の数1A2B版をひたすらやった。

英語・・・鉄壁をいつもの如く詰め直し、難構文(銀本)で良質な演習を図る。

物理・・・現役時代、唯一利用した東進のテキストを詰め直す。

化学・・・暗記を詰めながらも新演習を適当に解く。


 この頃は全教科の勉強量を調整し、全体的に毎日触れるようにしていた。英語と数学の計算力は毎日触れることに対して一定の効果があったと思われるが、他はなんとも言えない。Twitterでも、多くの人は予備校のテキストや現役時代の問題集で基礎固めをするスタンスに入っていた。そこでは、落ちてるんだから過去問はまだしなくても良いみたいな空気感が漂っていたが、合格への近道を握っていたのは過去問をひたすら研究し尽くすことにあったのではないかと反省する。


6月、精神が荒れる。本当に何もない毎日の繰り返しで頭がおかしくなりそうだった。当時から2年以上経った今でも、実家に帰ると6月の頃の心象が蘇り息苦しくなるほどである。これを切り抜けるためには、ひたすら勉強する他なかった。幸い、勉強している間だけは名前のない呪縛から解放される。


 6月の参考書ドラフトは以下のようになった。

数学・・・同じ

英語・・・同じ

物理・・・難系の例題を適当にやる。

化学・・・同じ


 依然5月とは行うことはそれほど変わらない。冠模試がまだ近づいてないためであろう。行うタスクをあらかじめ設定し、それに従い無心で演習する、これこそがメンタルのブレを無効化させる最強の方法であったと後に知ることになる。梅雨に入ったり出たりもしていたはずだが、一度も外に出なかったため俗世のことなぞ知る由もない。


 受験の天王山、7月。冠模試に対する備えは万全でなければならない。Twitterの浪人生達も本腰を入れてログアウトする人が増え、雰囲気が少しずつ変わっていった。参考書は以下のようになった


数学・・・これまでやった2冊の復習+過去問10年程の復習。

英語・・・鉄壁・銀本に加え、和文英訳の技術(金本)で全体的なスキルアップを図る。

物理・・・形式を思い出すため、過去問を適当に触れる。

化学・・・過去問は面倒くさいから、新演習とDoシリーズ等で適当に詰める。


 明らかに入試形式を意識するようにした。東大の冠も申し込んでいたため、戦争が始まるのは8月の序盤から。これまでに納得できる所まで仕上げてしまおう。





 ダメだった。いや少なくとも現役時代よりも実力は確かに伸びている。だが数学がまだまだ足りない。他の科目も足を引っ張りはしないが、合格には心もとない感じだった。

結果は京大オープン・実戦共の偏差値60付近、東大オープンは偏差値55付近。確かにA判定は出るようになってきており、現役生であれば喜べる結果であったと思われるが、当初の予定であった「現役生とぶっちぎりの差をつけて逃げ切る」までは程遠かった。何か数学をぶち上げるためのとっかかりを探さなくてはならない。。。


時は遡り、9月に戻る。冠の結果でソワソワしつつも、秋の冠が控えているためゆっくりしていられない。夏の反省を活かしてどうにかしようと方向修正に着手した。

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