8話「ヨッフム子爵家」ざまぁ
騎士団長を務める、ヨッフム子爵家は今窮地に瀕している。
騎士団長は十歳になる息子のジェイを、第一王子の側近として送り込んだ。
「スタン殿下の言うことをよく聞き、殿下の信頼を勝ち取れ」と言って王宮に送り出した息子は、父親の言葉をそのまま受け取り、やりすぎてしまったのだ。
第一王子のスタンは城内で腹違いの弟ファルケを見かけるたびに、いじめて泣かせていた。
スタンもバカではないので、ファルケが王妃や王と一緒にいるときには、何もしない。
ファルケが女官と一緒のときだけいじめるのだ。
第一王子スタンの側近は二人。
一人は騎士団長の息子で子爵令息のジェイ。もう一人は宰相の息子で侯爵令息のカスパー。
側近に任命された二人は、スタンが問題ある行動を起こしても一切止めず、親や国王に報告することもなく、スタンと一緒になって第二王子のファルケをいじめていた。
ジェイとカスパーは、第一王子のスタンが王太子になると信じていた。
いずれ王太子になる第一王子は何をしても許される。
第二王子をいじめるスタンに加担しても、問題ないと思っていた。
第二王子のファルケは王妃の子。
よく考えれば第一王子の側近ごときが、王妃が生んだ王子をいじめて、咎めを受けないはずがないのだ。
だが第一王子の母である側妃が、幽閉される前はなんとかなっていた。
第一王子の実家のハッセ子爵家が売春の斡旋をした罪で捕まり、子爵家が没落し、側妃が幽閉されると、第一王子を取り巻く環境が一変した。
第一王子の友達や婚約者になろうと、すり寄っていた者たちは、潮が引くようにいなくなった。
側妃が幽閉され第一王子の権力が無くなると、第一王子が第二王子ファルケをいじめていた問題が浮上し、第一王子は咎められることになった。
第一王子は、三カ月の謹慎。第二王子への接近禁止命令が出された。
咎めはスタンの側近にも及んだ。
ラウ侯爵家は権力をフルに使い、全ての責任をヨッフム子爵家のジェイに押し付けて逃げた。
カスパーは、第一王子が第二王子をいじめているとき、第一王子の話に頷いたり、第二王子を見てクスクスと笑うだけで、直接的に手を下していなかったので、逃げることが出来た。
責任を押し付けられたヨッフム子爵家は、非常に危うい立場に立たされた。
騎士団長の息子で体格がよく脳筋のジェイは、第一王子の命令を聞き、第二王子に手を上げていた。
ジェイに腕を掴まれた第二王子が、腕を怪我したことが判明。
即日ジェイは拘束された。
ジェイは取り調べで「第一王子に命令されたからやっただけだ! オレは悪くない!」と言い訳したが、そんな話が通るはずもなく、ジェイは不敬罪に問われた。
成人前の子供の不始末は親の責任。ジェイの父親は騎士団長の職を解雇された。
ジェイの犯した罪はたちまち広まり、ヨッフム子爵家は貴族社会から孤立した。
隣の領地から通行税を引き上げられ、スタンピードが起きても王家から兵は派遣されず、ついには畑に撒く種すら売ってもらえなくなった。
このまま自分が領主をしていたのでは、領民に悪いと、ヨッフム子爵家は爵位を返上した。
ジェイは一年間牢屋に入れられ、拷問を受けたあと、処刑された。
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