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4話「ホルン子爵家」ざまぁ




「きゃーーーー!!」


私が悲鳴を上げると、お父様と叔父様が走ってきた。


お父様もいい感じに叔父様を誘導し、薔薇園の近くをウロウロしていたらしい。


「どうした! アリシア! レニ、何があった!」


倒れた私の隣には、空の小瓶とハサミと切られた髪が転がっている。


正面にはルーウィーが立ち、背後にはメイドのレニが立っている。


「ルーウィーが『お前さえいなければ、僕はこの家の養子になり、ゆくゆくは当主になれるんだ! お前は邪魔だ! 死ね!』と言って私の髪を切り、瓶に入った薬品をかけたの!」


「わたしは薔薇園で作業をしていました。突然ルーウィー様がお嬢様に襲いかかったのです! 咄嗟のことにアリシア様をお守りできませんでしたが、ルーウィー様がお嬢様を襲うところを、この目ではっきり見ました!」


瓶の中身は硫酸。


私のスカートは溶け落ち、右足は大きく焼けただれている。


腰まで届くほど長かった私の髪は、肩ぐらいまで短くなっている。


「ルーウィー貴様! よくもわしの娘を!」


父が鬼のような形相でルーウィーを問い詰める。


「違う! 誤解です伯父様! 僕は何もしてない!」


ルーウィーは「違う!」と叫びながら首を横に振る。


卒業パーティのときと逆の立場になりましたわね。


「ルーウィー様、嘘はよくありません! わたしはルーウィー様がお嬢様を襲うところをはっきり見ました! ルーウィー様がお嬢様に暴言を吐くところもはっきり聞いています!」


ルーウィーの顔面は蒼白だ。


「兄上、これはなにかの間違いだ! ルーウィーがアリシアを襲うなんてそんな馬鹿なことが起こるわけがない。こんなことで融資を取りやめたりはしないよな?」


叔父はこんなときでも融資の話をする。


「そんなことは今はどうでもいい! 今すぐ医者だ! 医者を呼べ! アリシアを医者に診せるんだ!」


騒ぎを聞きつけた使用人が、薔薇園に駆けつけてきた。


お父様は私を抱き上げると「わしはアリシアを医者に診せる! お前たちはバナンとルーウィーを地下牢に入れておけ! アリシアを殺害しようとした者とその親だ! 二人は共犯かもしれん!」


父が使用人にそう命令すると、使用人は叔父とルーウィーを拘束した。


父はジュストコールを脱いで私の体を覆い、私をお姫様抱っこした。


ジュストコールで顔まで隠すのも計画のうち。顔を隠して運ばれる私を見た人たちは、勝手に私が顔に火傷を負ったと推測して、噂してくれるだろう。


「レニ、あとのことは頼んだぞ」


「はい、旦那様」


父の言葉にレニは深くうなずいた。


私の誕生日パーティは中止となった。


招待客にはレニが()()()事情を説明した。


怪我をして運ばれた私。使用人に連行される叔父とルーウィー。


私が叔父様とルーウィーを嫌っていたことは、招待客の殆どが目撃している。


招待客は、叔父様とルーウィーが公爵家の乗っ取りをはかり、私を殺そうとしたと、勝手に噂してくれた。


私が顔をジュストコールで覆っていたことから、私が顔に大火傷を負ったと尾ひれをつけて、噂はまたたく間に広がっていった。


私が怪我をしたことに父は激怒。使用人の証言もあり、ルーウィーは言い逃れができなくなった。


当然、子爵家への融資の話も、ルーウィーを公爵家の養子にする話も立ち消えとなった。


私の命に別状がなく、身内ということで叔父とルーウィーは衛兵に突き出されることはなかった。


というより詳しく調べられたくないので衛兵には連絡しなかった。


叔父は勝手に父の温情だと思ったらしい。


叔父とルーウィーは、二度と公爵家に関わらないことを条件に牢から出され、家に帰った。


借金だらけの子爵家に。


子爵家は財産をすべて手放し借金の返済にあて、叔父は爵位を返上し平民となった。


元貴族にとって、市井の暮らしは厳しい。


二人が少ない荷物を持って邸を出ると、ひったくりにあった。


全財産を奪われた叔父とルーウィーは、ひったくり犯を追った。


そして人気のない裏路地に入り込んだ二人は、黒ずくめの男たちに囲まれた。


叔父とルーウィーはまずいと思い引き返そうとしたが、すでに退路は塞がれていた。


叔父とルーウィーは黒ずくめの男に怪しい薬をかがされ意識を失った。


二人は馬車に乗せられ、何処かに連れて行かれた。


以来、叔父とルーウィーを見たものはいない。


二人をさらった黒ずくめの男と、怪しい馬車に心当たりはあるか、ですって?


さぁどうでしょう?


ただ一つ言えるのは、私は自分を傷つけた人間を簡単には許しません。


そして簡単には殺しません。


ゆっくりじっくり真綿で首を絞めるように、爪を一枚ずつはいでから、殺さなくてはね。


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― 新着の感想 ―
[一言] なかなか快調な滑り出しですね! 思い切りの良さが、素晴らしいです! 今後が楽しみです!
[一言] この時点では、子爵は完全に終わっているが、義弟は一緒に勉学頑張ってたと言っていたし、少しばかり可哀想かな。(番外編から先に見てしまいました)
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