表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/26

10話「ラウ侯爵家」ざまぁ




――三か月後――




ある日の夕食時。父と食卓を囲んでいた。


「アリシア、知っているかい? ラウ侯爵家が()()金山を買ったそうだよ」


子羊のステーキを呑み込み、父が尋ねてきた。


「やり直し前の人生ではザイドル伯爵家が購入して、石しか出てこなくて破滅した()()金山でございますか? お父様」


私はワインを一口飲んでから答えた。


「そう、()()金山だよアリシア」


「それはラウ侯爵もお気の毒に」


私はナイフで子羊のステーキを切り分けながら、ふっと笑う。


「本当に、誰がそんなものをラウ侯爵家に売りつけたんだろうね?」 


お父様はワインを豪快に飲み干して、くすりと笑った。





――一年後――





「アリシア新聞を読んだかい? ラウ侯爵家が破産したそうだよ」


自室でエデル殿下の治療を受けていると、父が新聞を片手に部屋に入ってきました。


「ええ読みましたわ、お父様。借金を返済するために屋敷や土地を売り払い、爵位を返上したそうですね。それでも借金を返しきれず、ラウ侯爵の三親等先の親族まで、強制労働所に送られたそうですね」


子供のカスパーも強制労働所に送られ、肉体労働をさせられるのですね。


ペンより重いものを持ったことがないカスパーに、強制労働所での仕事が務まるかしら?


ラウ侯爵家は文系だから肉体労働には不向き。強制労働所で何年働けるかしら?


カスパーは美形だから、労働所の看守の慰みものになれるかもしれません。そのほうが長生きできるかもしれませんね。


尤も彼らの行為は乱暴だそうですので、何年体が保つか分かりませんが。


「また、悪巧み?」


エデル殿下がヒールを唱えながら小首をかしげる。


「嫌ですわエデル殿下、私はただ父と世間話をしていただけですよ」


私は「なんのことでしょう?」という顔で扇で口元を覆う。


「そうですよ、エデル殿下。人聞きが悪い。ところで娘の足の具合はどうですかな?」


エデル殿下には、定期的に私の足の火傷を診てもらっている。


エデルが公爵家に滞在して約一年。


その間にエデル殿下を狙った暗殺者が公爵家を襲撃した回数が、十二回。


公爵家は一カ月に一回、暗殺者の対応に当たっています。


エデル殿下には、私の婚約者という肩書きで、王家や貴族からの婚姻の話を断る口実になって頂いております。


ですが暗殺者がエデル殿下を襲う回数がこうも多いと、公爵家にとってエデル殿下の存在はマイナスになります。


なのでエデル殿下には、それなりの働きをしていただかないと。


「あと一年も治療を続ければ、アリシア嬢の足の火傷は完全に治ります。火傷の痕も完全に消せますよ」


「本当ですか殿下! ではこれから毎日アリシアに治療魔法をかけてください!」


父は私の足が治り、私の体から火傷の痕が完全に消えることが嬉しいようだ。


この一年、私は松葉杖と車椅子のお世話になっていた。


「エデル殿下、治療はゆっくりでいいですわよ。歩けないフリをしていれば、お茶会や誕生会の招待状が来ても、断る口実になりますから」


「アリシアそう言わないで、この機会にエデル殿下に治してもらおう」


父は私が治療を拒否するとは思っていなかったようだ。


「あら私の治療を長引かせることは、エデル殿下にとってもメリットがありますのよ。私の火傷の痕が消えるまでは、エデル殿下が公爵家から追い出されることはありませんからね」


エデル殿下だって暗殺者に狙われている身で、放り出されたくはないだろう。


「アリシア嬢のその言い方だと、用済みになった僕は、無一文で公爵家を放り出されそうだね」


暗殺者に狙われているエデル殿下を外に放り出す=死を意味します。


「嫌ですわエデル殿下ったら。私が血も涙もない非道な人間だとお思いですか? 私が消したいのは前世で私をはめた五人だけ。無関係のエデル殿下を寒空の下、下町に放置したりいたしませんわ」


前世からの因縁のある人間のうち四人は消えました。


残る標的はスタン殿下お一人。


「私こう見えて、エデル殿下のことを気に入っていますのよ。用済みになっても屋敷から追い出したりいたしませんわ」


「ならアリシアって呼んでもいい? アリシアも僕のこと呼び捨てにしてほしいな」


「わかりました。エデル」


「ありがとう、アリシア」


この一年でエデル殿下は背がすらっと伸びて、少年の顔から青年の顔になりつつあります。


顔のいい男にはこりごりなので、顔がいいだけの男に惚れる気になりません。


しかしエデル殿下に呼び捨てにされたとき、不覚にもときめいてしまいました。


イケメン好きは殺されても治らないようです。


エデル殿下を頬を染めて見ている私を、父は面白くなさそうな顔で眺めていた。


子離れしてくださいね、お父様。




少しでも面白いと思っていただけたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】を押して評価してもらえると嬉しいです! 執筆の励みになります!!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ