人格形成は環境のせいで87
こんばんは。
相変わらず、ほちほち日記のようにアップしています。
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どうしてこんなにも一人の人を好きになってしまったのか。
アセスとしての世で、人生最大に弱っていた時に出会ったから、自分はただ依存してしまっただけで、本当は彼女を好きなんて感情は後で作り上げた妄想でしかないのではないか?
彼女とラーディア一族の書庫で再開し、彼女の兄であるサナレスに彼女のことを頼まれたから、守り手としての使命感に駆られているだけなのではないだろうか?
何度も自分に問いかけた。
美しい女であれは、他に何いくらでもいるだろう。そしてそんな何万人の女人よりも母マリアは美しかったし、彼女に生写しの自分は美に対しての感覚を狂わせている。
未だ幼さを残した痩せっぽっちの、目ばかりが大きな棒切れのような少女は、およそ貴族の姫君らしくはない。
馬を操り、ラギアージャの木々の枝葉を猿のように飛び回り、無鉄砲に下手くそな呪術を使う。
そしてラーディア一族では忌み嫌われる銀色の髪をコンプレックスに思って、自身のなさは天下一品という幼い少女。
何が魅力的だというのだろうか?
探してみてもわからない。でもただ会いたくて、その気持ちを抑えきれなくなって、無責任だと言われようと、もう一度母を捨てることになったとしても、感情が溢れ出す。
2度と彼女に会えなくなるなんて絶対に嫌だ!
時を超えて、異世界を超えて、どれだけ遠く離れても、きっと彼女を探し出す。
「悠希!」
私の名前の一部を持つ悠美に声をかけられた。
「わかったから悠希……」
深山は悠美の手を掴んだまま立ち尽くしているが、悠美はあがらうことをやめたようだった。
「もう、わかった。初めておまえ、やりたいことを見つけたんだ? ううん、初めておまえ、本当にやりたいことを主張しているのよね? ーーそんなのわかったら、止められないし」
でも、と彼女は確かに眼差しに力を込めて確認してくる。
「それで絶対に幸せになる? こんな怖いところにおまえを残して、幸せになるの?」
なるのか、ならないのか、正直わかりませんよ。私は常に自分の体という表面化する部分を、どこか離れたところでコントロールする癖があって、しれっと冷たいことを言おうとしてしまう。
だって本当に未来なんて、誰にもわからないでしょう?
だから約束なんてできないし、私だって不安なことにどう答えろと彼女は言うんだろうか。
「おまえね、だからいつも心配なの。だからいつも距離を詰められないの」
心の中を見透かしたかのように悠美は言った。
「そんなんじゃさ、お父さんと同じだよ。感情ってさ、言葉に出したりする前に、相手に感情を感じ取ってもらわなきゃ、成立しないんだから。頭で考えたり、めんどくさいと思って言葉をはしょったり、こうした方が賢いと思うことばかり計算していたら、結局誰もおまえの味方にはなってくれない」
初めて私は、悠美の言葉が胸の中にスッと落ちてくるのを感じていた。
「言葉は大切だと思うけれどね、おまえは感情を出すのが本当に苦手ね。やりたいことがあるならやりたいと感情表現して、そして辛いなら辛いとそれを表して。欲しいものがあるなら、欲しいと感情で伝えるの」
悠美が私の頭に、掌をポンと乗せた。
私は自然と「母さん」と本心で彼女を母と認め、悠美はそれを聞いて心底嬉しそうに微笑んだ。肉がそげ、髪が抜けた亡者の姿になっているのに、私の瞳に彼女は生まれて初めて赤子として転生した自分を覗き込んでくる彼女として見えていた。
「子離れするわ。しっかりしなさい」
単に一人の女人にすぎないというのに、母親というのはどうしてこうも極限の時に強いのだろうかと苦笑する。不甲斐ないと、項垂れそうになる気持ちを隠して、私は彼女の真心に答えるよう姿勢を正す。
「母さん、ごめん。ーー違う……、ありがとう」
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




