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人格形成は環境のせいで81

こんばんは。


秋ですね。

試験結果が、五分五分で、頑張った分追加されているかな。


諦めない!

すると先にまたなんかが開けるかな?

         ※


「悠美。ーー母さんの名前、こっちに来て初めて覚えた固有名詞なのですけれどね」

 悠希として生きてきた時間を振り返った時に、どんなに複雑な事情があったとしても、ローレンツが研究したというインプリティング学習、つまり刷り込みによって生まれた記憶に感情まで左右された。ひな鳥は初めて見たものを親だと認識して、後を追う。_


 貴方が私の母。

「だから母さん、私は止められれば貴方の手を振り切って決別する覚悟があるけれど、それほしたくはないんです」

 悠美の白骨化した手ですら、自分を現世に繋ぐ楔に見えて懐かしく、そして愛しくて、目を細めてしまう。


「悠希、どうしてそんなに苦しそうなの?」

 悠美は半分肉が削げたような顔で首を傾げた。見た目でどちらが苦しそうかと言えば彼女の方だというのに、彼女は自分の姿を全く顧みず首を傾げて、じっとこちらに視線を向けてくる。

「どうしてあげたら機嫌が良くなる?」

 まるで赤子をあやすように彼女は一途に心配してくる。


 そんなふうに心配されて初めて私は、自分が切羽詰まっていることを自覚した。

 強ばった顔に悠美が白骨の指を伸ばし頬を撫でるので、珍しく感情が自分の表情を支配して、眉根を寄せて目を瞑った。


 何も言葉を返せず、悠美を見ることもできずに彼女から視線を外していると、悠美は私に触れるのをやめた。

「ーーやっぱり、母さん嫌い?」

 意外な言葉に、私はびくりと体を振るわせた。言い当てられた気まずさに目を細めると、彼女は真っ直ぐに私を見ていた。

「嫌い?」


 ストレートな質問に答えられずに私は後じさる。

 嫌いだと単純に撥ね付けられれば、こんなにも心の中が泡立たずに済むというのに。


 心細げに、けれど次に発する言葉は威力が強かった。

「若い人ってね、あまり先の未来まで考えない。例えば悠希が高校卒業して、大学に行って、社会人になって結婚して。ーー母さんはね、貴方が大きくなって母さんの手を離れていくことを知ってる」

 彼女は私から数歩後退った。


 知っている。彼女は私が中学校を卒業するときに号泣していた。女生徒らにボタンや制服など追い剥ぎに遭いながら、私は彼女のことしか目に入っていなかった。


 ありがとう。無事に卒業してくれて。ここまで成長してくれて、ありがとう。


 泣きながら悠美が手を合わせて天を仰ぎながら、涙でハンカチをくしゃくしゃにしている姿が、脳裏から焼き付いて離れない。まるでこの世界で一番美しいものを見てしまい、魅入られたように見つめていた。


「私は母さんを嫌いじゃない」

 母マリアという存在が私の心を占めていて、ただ苦手だっただけだ。

「誤解させたなら、ごめん」

 そう言った瞬間に、悠美は私の首筋に飛びついて抱きついてきた。


「悠希、悠希、悠希ーー」

 頭を撫でるようにしがみつく彼女は、何度も私の名前を呼んで、くしゃくしゃの顔で私と何度も視線を合わせた。


「私ね、貴方が生まれた時、とても不安な状態だった。でもね、貴方が生まれてくれて、貴方を育てる権利と義務を得て、本当に幸せになった」

 懐かしい。

 異世界転生した時に、頭の上で回るおもちゃとは別に、しょっちゅう覗き込んでくる彼女の興味深々な、それていて彼女の眼差しから、紛れもない愛情を感じていた。


「でも母さん、こんなふうに悠希が自己主張したの、初めて見た」

 嫌われていなくてよかったけどお別れなんだね、と彼女は言った。

「子供は親の勝手で育たない。怒ってもだめ。大切にしたくて先回りしてもダメ。伴侶にした夫と仲悪くしても察するし、ほんと難しいけど、一生かけて味方なのが家族だと思う」


「味方?」

 分からなくて、私は問いかけた。


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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