人格形成は環境のせいで8
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私にはわからないーー。
人の心の機微なんて。
次代の一族の後継者として幼少期を過ごした私は、人に甘えるなどという所作は知らない。そのことが、異世界で母になった女ーーつまり悠美を傷つけてしまったのだろうか。
私にはわからないーー。
子供から拒絶される親の不安なんて。
『普通の暮らしをしたい』
『この子、なついていないみたい』
そんなことを言われても困る。
別世界の時期総帥として生きてきた私には、母子の関わり方などわからないのだ。
この度はたまたま、凡人の女を母に持った。
それなのに彼女の言葉は、自分の胸に刺さる。
父親は忙しく、常に母という存在は一人子供に向かい合う世界という点では、妙なことだが異世界には共通点があった。
ナリス・アルス・ラーディオヌ。
ラーディオヌ一族の総帥として一族を背負う父は、ひと回りどころか、4百歳も年下の若い貴族の娘、マリアという女性を正妃にした。
父は確かに母を大切にしていたと思う。絶世の貴族の美姫を正妃にした喜びは、つまらなく生涯仕事に捧げた彼の、唯一の功績と言っても過言ない。
けれど父は、若い母に対して十分な時間を使って、その愛情を示せたのか?
母の魅力に魅入られた父は、おそらくは母に対して、どんな望みでも叶えたであろう。
けれどそれはどこまで続いたのだろうか。
自分という王位継承権がある皇子をマリアが授かり、忙しく老いた父は、どこまで母に接する時間を使えたのだろう?
「ねぇあなた……。こんな時代に医者が大変だってこと、私はわかってる。理性ではわかってるんだけどね、このままじゃ離婚だからね」
自分の過去を思い出している異世界的現在、空気感は率直に不穏だった。
離婚ってなんだろう?
離縁のことだろうか。
夫婦として交わって別れることなど、あってはならないはずだ。
自分がいた世界では、貴族間の夫婦に別居はあっても、死別以外で離縁するなんてご法度だった。
まして子供もいるのにーー。
(私が可愛げのない子供だったことが原因か!?)
おかしな罪悪感が支配してきて、赤ん坊でしかない自分はちっと舌打ちした。
この夫婦、別れさせるわけにはいかない。
法を犯させるわけにはいかない。
縁あって、子供という強い関わりを持ってしまっているから。
ため息しか、付けなかった。
反省はしているのだ。
母と子供の正常な関係がわからない私には、ハードルが高すぎて、世界の理で親子になった関係性上、急に自然な演技はできなかった。
「おぎゃぁーー!」
理路整然と弁明したいところだが、ーーいきなり赤ん坊が言語巧みに話すことなどはあり得ないことで、私は唯一できること、つまり泣きの一手を投じてみた。
私の期限は七日から十日。
こんな赤子から、しかも破綻しそうな親子関係から修復することなんてできるのか。
泣き疲れると赤子の体力はすぐに無くなり眠くなってくる。私はまた、ため息をついた。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー